メトロノリ「幼さの四肢」
- アーティスト: メトロノリ
- 出版社/メーカー: Virgin Babylon Records
- 発売日: 2016/05/07
- メディア: CD
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詳細はなく、ただ女性だということだけは判明しています。おそらく彼女本人の声だと思うのですが、舌足らずのあどけなさと蠱惑的な魅力が入り混じったウィスパーヴォイス。それが穏やかなシンセ音や環境音的ノイズと同等にカットアップされ、空間的に散りばめられて抽象画のような美しさを構成しています。 Aphex Twin や Boards of Canada などの IDM アンビエントサイド、または Four Tet や Prefuse 73 の名前も脳裏によぎる。手法は前衛的でありながら、断続的な上モノからゆらりと浮かび上がるメロディ、また全体から醸し出されるノスタルジックで幻想的なムードは至ってポップな感触。ボトムには意外と輪郭のはっきりしたビートを潜ませているのがミソなのかもしれません。4つ打ちに近いスクエアなグルーヴの「L'Enfant secret」、バウンシーな感覚が心地良い「舳」「Good Morning, Night」なんかは顕著。何処を歩いているかは分からないけれど、きちんと地に足が着いているという安心感がある。このリズムによって楽曲がまるっきり投げっ放しの実験ではなく、紙一重でポップの領域に留められているように思います。Virgin Babylon の幼さ担当。
Rating: 7.6/10
Whtie Lung「Paradise」
- アーティスト: White Lung
- 出版社/メーカー: Domin
- 発売日: 2016/05/06
- メディア: CD
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何だか欲が出てきてる気がする。もちろん従来のスピーディでショートカットなパンクチューンも多くありますが、「Narcoleptic」や「I Beg You」などはブリッジからコーラスへと至る時の真っ当な高揚感、小汚いライブハウスを飛び出してもっと大きなステージで映えそうなアンセミックなパワーを感じるし、少し BPM を落とした「Below」「Hungry」はアグレッションに頼らない明らかな新境地。パンクというより3分間の良質ポップソングという感じで、脳裏には Blondie の姿がよぎる。その一方で「Kiss Me When I Bleed」「Demented」では以前よりもタイトに引き締まったアンサンブルがゼロ年代以降のエモ/ポップパンクへと寄っているようにも聴こえるし、ともかくほとんど荒々しさ一辺倒だった以前に比べると、様々な形で横への広がりが生まれてヴァラエティ豊かな内容になっています。ただその彩り豊かな中にも彼女たちならではの生き急ぐような焦燥感、青い衝動は決して絶えてはいません。意気揚々としたヴォーカルによって憂いを帯びたメロディは求心力を増し、それこそ Bad Religion ばりにシンガロングだって可能。パンクとしての筋はきっちり通してる。
Rating: 8.1/10