TAMTAM「NEWPOESY」

ニューポエジー

ニューポエジー

2008年結成の4人組による、2年ぶり3作目。


元々はレゲエ/ダブバンドとしてスタートしていた彼らですが、前作「Strange Tomorrow」では縦ノリのアッパーな勢いを多く導入し、メジャーシーンに打って出ようというある種の力みがありありと感じられた作品でした。今作ではそこから一転してリラクシンな空気感を重視。しかし彼らのルーツにそのまま立ち返ったわけではなく、レゲエ/ダブ要素をすっかり消化したポップバンドとして、より自由度の高い表現が展開されています。丁寧に音を紡いだ風通しの良い音響空間、そこには少し Stereolab 風のアートポップ感もあり。そして中心のメロディはサビで無理矢理引っ張るのではなく、終わりに向かって緩やかに広がりを増していき、実に聴き心地が良い。小気味良く洒脱なファンクネスを携えた「アンブレラ」や「CANADA」、ダブの実験性がメロディやグルーヴと自然に結びついた「カルテ」、そして穏やかながらスケール感の大きいセンチメンタルな情景描写に強く胸を打たれる「星雲ヒッチハイク」。例えば最近の Suchmoscero といった急先鋒から、クラムボンSpangle call Lilli line 辺りのポストロック・ポップファンまで。広い窓と深い懐を兼ね備えた傑作。

Rating: 8.5/10



TAMTAM - 『NEWPOESY』 全曲試聴 Album Trailer

lynch.「AVANTGARDE」

AVANTGARDE (初回限定盤)

AVANTGARDE (初回限定盤)

11ヶ月ぶりとなる8作目。


もちろん世間一般から見れば lynch. は十分に過激ではあるのですが、結成以来ずっと同じ方向性を突き詰め続けてきた彼らに、もはやアヴァンギャルド(前衛的、革新的)という印象は正直言ってないのですね。むしろモダンなへヴィロックと正統派 V-ROCK を融合させることに成功した第一人者という、ひとつの王道、「スタンダード」だと自分は思っています。異端児と言うよりは良くも悪くも優等生的であると。そして今回も同様に、何処を切っても lynch. 印の疾走ヘヴィチューンの連打。何かと横道に逸れて音楽性の幅を広げたがる傾向のあるヴィジュアル系界隈において、この潔さはやはり稀なものだと思うし、ここ最近においてはマンネリに陥らずに従来の個性をますます深化させることに成功していたのですが、うーん今回はちょっと手垢のついた部分が多い。勢いは十分にあるけれども、あくまでも他のアルバムで聴けた楽曲の亜流に留まってしまってるなという印象。やはり1年未満というインターバルは短すぎたか。次作では例えば外部プロデューサーを招くなどして、少しばかり変革を意識してもいいのではと。

Rating: 6.0/10



F.A.K.E. / lynch.