焚巻「Life is Wonder」

LIFE IS WONDER

LIFE IS WONDER

玉出身のラッパーによるデビュー作。


彼の音楽的なバックボーンを認識していなかったのと、フリースタイルバトルでの怒涛の早口ラップばかりが印象に残っていただけに、このオリジナル作で見せる方向性は意外なものでした。トラックは全編クラブジャズで統一。ピアノやサックスの音色が大きくフィーチャーされ、スタイリッシュな色気、何かが起こりそうな熱狂の予感、そういった都会の夜ならではのムードをムンムンに醸し出す。そこに程良くアップリフティングなビートと、焚巻ならではの流暢かつアグレッシブなラップが乗っかり、楽曲全体が一丸となって流れるような躍動感を生み出しています。この音が見せる情景こそが東京という街に対する彼からの視座であり、例えば Robert Glasper を筆頭とする、昨今のヒップホップシーンにおけるジャズの潮流、そこに対する彼なりのアンサーでもあるのかなと。ただバトルの現場から割と地続きの、ストリートスタイルを変わらずに打ち出している焚巻本人と、完全フォーマルスタイルのトラックとの相性が良いかと言うと、若干複雑な気持ちもあるのですけどね。それでもオリジナルの楽曲を作ることへの気概はありありと感じられます。

Rating: 7.1/10



【MV】焚巻「トウキョウジャズ」feat.輪入道 (Prod. FReECOol)

DÉ DÉ MOUSE「dream you up」

dream you up

dream you up

1年4ヶ月ぶりとなる6作目。


今回のテーマは SF ?と思ったらここに来て原点回帰。近作は彼にとってチャレンジングな実験的内容が続いていましたが、今作は久しぶりのデデマウスの王道路線です。ドラムンベースあるいはブレイクコア由来のフリーキーなビートに、ドリーミーな電子音と不定形ヴォーカルサンプルが乗っかり、仄かに異国情緒漂うエレクトロニカ・スペクタクル。従来のデデらしいアッパーチューンが揃っていて以前からのファンは安心…と言いたいところですが、うーむこれはちょっと雑ではないだろうかというのが正直な気持ち。オープナー「get you back」は「dancing horse on my notes」のフォーマットから全く外に出ない焼き直し曲でいきなりガクッときたし、それ以降もデビュー作「tide of stars」ですでに確立していた手法を改めて提示した、既視感のある曲ばかりでさすがに首を捻らざるを得ない。敢えて言えばブレイクコア由来のアグレッシブなビート反復が多用され、彼の中の遊び心的な側面が強めにフィーチャーされてるとも言えるか。それでもアルバム全体の個性としてはどうにも弱いし、イマイチ狙いの見えてこない内容でした。

Rating: 4.8/10



DÉ DÉ MOUSE / get you back MV -α version-