RAU DEF 「UNISEX」

UNISEX (生産数限定盤)

UNISEX (生産数限定盤)

千葉出身のラッパーによる、約2年ぶり4作目。


ユニセックスというアルバム表題が示す通り、最も印象的なのはバランスの良さ。ムーディなイントロを切り裂くようにして始まる「SILENT SHEEP」や、かつてビーフを交わした Zeebra からバトンを受け継いだ「HYPATECH」などでは不敵な表情でボースティングをカマしまくるアグレッシブモード。憂鬱でスウィートな雰囲気を醸し出す「Meditation」や、盟友 PUNPEE 参加でジワリと滲み出るセンチメンタリズムにグッとくる「STARZ」などはメロウモード。流暢で柔らかなフロウはそれら対照的なスタイルのどちらにも対応できる器用さで、ヒップホップが本来持つハードからポップへの多面的な魅力を余すことなくきっちりと体現しています。ただ器用ではあるのだけど、それ以上に RAU DEF ならではという特徴、決め手になる良い意味でのアクの強さというのが正直見えづらいのですね。リリックの内容にしろカッチリしたトラックにしろ、ヒップホップマナーに忠実に則った内容は愛着を感じさせると言えば確かにそうだけど、彼の後にも様々な若手が台頭してきている中で、ソツなく纏まっているようでは少し厳しいものがあるのではと。

Rating: 6.0/10



RAU DEF - STARZ feat. PUNPEE [Official Music Video]

大森靖子 「MUTEKI」

MUTEKI(DVD付)

MUTEKI(DVD付)

新曲と既発曲のリアレンジ版を合わせたコンピレーションアルバム。


序盤のスタンダードなバンド演奏による新曲以外はアコギ/ピアノの弾き語りアレンジ。中には元々弾き語りだったものもありますが、より情念的な起伏の激しくなったヴォーカルが曲の濃度をさらに高めており、原曲とはまた違った様相を見せています。ただ表題の「MUTEKI」とは何だろう。先日の Yogee New Waves との一件では、そもそもの発端が見えなくなるレベルで彼女はネット上に激情の数々を喚き散らしていました。その言動から受けた自分の印象としては、彼女は自分の表現を汚される、傷つけられることに人一倍敏感なのだなと。もちろん表現者には誰しも自分の誇る世界が存在するかと思いますが、彼女の場合は自分に否定的な事象を徹底的に排除する、理解できなければ結構と言わんばかりに特別太い一線を引いているように見える。彼女の歌詞の中には感情や思想や風景など、おそらく彼女が美しい、愛おしいと感じたものばかりが並んでいます。それは以前に彼女が「キチガイア」と名付けた不可侵たるべき世界であり、その閉じられた世界を無敵と言うのならそれはそうかもしれません。自分はその世界の脆弱さや閉塞感を今作から感じました。

Rating: 4.8/10



大森靖子「みっくしゅじゅーちゅ」Music Video