PUNPEE 「MODERN TIMES」

MODERN TIMES

MODERN TIMES

東京は板橋区出身のラッパーによる初フルレンス。


散々リリースを焦らしまくっただけに過剰とも言える期待を受けていたであろう今作ですが、序盤の「Lovely Man」から早々に「別に俺なんかいなくてもね KOHH 君、tofubeats 、弟とかがいる」とスカす気満々のダメ兄貴。加山雄三宇多田ヒカルとのコラボでどれだけ注目を浴びようが、世間がどれだけトラップや即興バトルブームに沸こうが、あくまで俺は俺の道を行くと言わんばかりに PUNPEE ならではのユーモラスな個性が凝縮されています。2057年の未来から今の PUNPEE を回想するという物語を軸とし、食べ物や映画、音楽などのフェイバリットを随所に散りばめ、その軽妙な手つきのままで世相をチクリと突いてみたり、あるいは内なる本音が零れ落ちたり。クレジットが Lyric(詞)ではなく Script(脚本)とされているのはそういった歌詞上のコンセプトに依るものでもありますが、「Happy Meal」や「Scenario (Film)」ではメロウなポップさで魅了し、「Stray Bullets」などでは渋いファンクネスでヒップホップとしてのスジを通す、この硬軟自在の起伏に富んだ流れは本当に一本の映画を見ているかのよう。ユルくてもキメる時はキメる、それが P という男。

Rating: 9.0/10

The World Is a Beautiful Place & I Am No Longer Afraid to Die 「Always Foreign」

Always Foreign

Always Foreign

米国コネチカット州出身のバンドによる、約2年ぶり3作目。


現在は7人ほどのメンバーが在籍しているようですが、その時々の作品やライブによってメンバーが激しく流動するスタイルを採っており、バンドというよりはひとつのコミュニティのような集団とのこと。それでまずはインパクトの強いグループ名が目を惹きますが、この世がひとつも美しくないということは他ならぬ彼ら自身が十分に理解しているようです。音的にはエモ/ポップパンクを基調とし、その中にポストロック的な空間的サウンドのアプローチ、また華やかなホーン隊やフォーク/カントリーの牧歌的な雰囲気も交えたもので、快活さと哀愁、理知的な深みも感じさせるサウンド。その中で彼らが紡ぐ言葉というのは、例えば「Hilltopper」や「Faker」では彼らの穏やかではない内情から来る怒りや苛立ちが表にまで噴出したようだし、トランプ以降の政治色、人種問題への意識が強く見られる「Marine Tigers」「Fuzz Minor」では「お前が死ぬのを待ちきれない」など実に辛辣なタームも飛び出す。ここまでくるとバンド名は完全に反語。夢ではなく現実を捉え、死ではなく生を見つめる。その意味ではこの上なくパンキッシュなアルバムと言えるかと思います。

Rating: 7.5/10



The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - "Marine Tigers"