SUGIZO 「ONENESS M」

ONENESS M(通常盤)

ONENESS M(通常盤)

1年ぶりとなるソロ6作目。


全編がインストゥルメンタルで占められていた前作「音」とは対照的に、多彩なゲストヴォーカリストを招いた今作。それも全員が SUGIZO の近しい友人ということで、中には K DUB SHINETOSHI-LOW (BRAHMAN) といった意外なメンツもあり、ただ SUGIZO のこれまでのアクティヴィストとしての活動を踏まえれば納得の人選かと思います。楽曲の方は硬質なブレイクビーツや4つ打ちトランスを軸としつつ、SUGIZO ならではのギタープレイを存分に盛り込むというもので、今現在の彼が作り得る「歌モノ」を手堅くアウトプットしてきたという印象。RYUICHI 参加の「永遠」はほぼそのまま LUNA SEA の新曲と言っても差し支えない仕上がりだったり、他にも京 (DIR EN GREY) の情念深い歌が映える「絶彩」や、清春の持つゴス風味の色気が充満した「VOICE」などは従来のヴォーカルの個性が改めて浮き彫りになっています。ただ SUGIZO の新作として聴くとほぼ手癖そのままのようなフレーズも多く、安定はしているけれど想像以上の驚きには欠けるというのが正直なところ。少なくともリズム面ではもっと冒険できたのではないかなという気はします。

Rating: 6.8/10



SUGIZO / VOICE feat. 清春 (Short Ver.)

Björk 「Utopia」

UTOPIA [CD]

UTOPIA [CD]

2年10ヶ月ぶりとなる10作目。


荘厳なヘヴィネスを打ち出していた前作「Vulnicura」と綺麗に対を成す作品。Arca との共同制作という点では共通していますが、今回上モノに用いられているのはストリングスではなくフルート、ハープ、本人またはクワイアコーラスによる声の重層、そして時には鳥のさえずりまで遠くから微かに響き、それらが前衛的なエレクトロビートと有機的に絡み合う、その様子はアルバム表題よろしく華やかで美しい桃源郷のイメージを見事に体現しています。腹の底から感情を沸き立たせるような力強さに満ちたオープナー「Arisen My Senses」に始まり、麗しいハープの音色とともに深い慈愛が溢れる「Blissing Me」、前作収録の「Black Lake」と表裏の姿をとった10分近くの大曲「Body Memory」、またアップテンポなリズムが少しばかり緊張の糸を張る「Courtship」やダークな色味を帯び始める「Sue Me」などにしても、その根底にあるのは柔らかな愛情、畏怖を感じるほどの聖性。ただ単に明快なポップネスに向かったわけではない、それこそ彼女のインスピレーションの源である大自然を想起させる、極めてスピリチュアルなエナジーがこの一枚に凝集しています。

Rating: 8.5/10



björk: blissing me