清春 「エレジー」

エレジー

エレジー

過去の全キャリアから選ばれた楽曲のリズムレス・アレンジ盤。


自分は一昨年の VISUAL JAPAN SUMMIT で初めてアコースティック編成での清春を見たのですが、最小限のギター演奏と静まり返った客席、その中で彼のカリスマ性は特別に際立っていました。トレードマークの妖艶かつ伸びやかなハイトーンヴォイス、そこに紆余曲折を経てきたが故のハスキーな渋味も入り混じり、歌いながら静かに煙草を燻らせるその佇まいは、確かに他には無い存在感を放っていました。この作品は彼が近年継続しているライブシリーズ「エレジー」の世界観を再現するというコンセプトで、いずれの楽曲もアコギやチェロなどを主体とした簡素なアレンジ。フォーキー、ブルージーでありつつ厳かなゴシック感も漂う雰囲気を纏い、彼の歌声はもしかするとこれまでのキャリアの中でも最良の形で、その魅力を存分に発揮しています。特に「LAW'S」の真に迫った絶唱や、「この孤独な景色を与えたまえ」の暖かさと冷たさが密接に溶け合った感覚などは、今回の作風ならではのディープな味。そして2枚目に収録された同曲のポエトリーリーディングでは、その濃密な空気感がさらに陶酔度の高いものに。ソロシンガーならではのひとつの境地。

Rating: 7.8/10



清春 / LAW'S【Music Video】

ねごと 「SOAK」

SOAK

SOAK

10ヶ月ぶりとなるフルレンス4作目。


僅か1年足らずのインターバルによる畳み掛けのリリースということで、前作「ETERNALBEAT」で大々的に導入したエレクトロニカ・アプローチに彼女ら自身よほどの手応えがあったのでしょう。プロデューサーはその前作に引き続き中野雅之 (BOOM BOOM SATELLITES) と益子樹 (ROVO) 。鮮烈なインパクトを見せる先行シングル「DANCER IN THE HANABIRA」に始まり、軽快なギターにファンクの感触も宿した「WORLDEND」、空間的なシンセサウンドの重層が深遠な世界観を演出する「サタデーナイト」、表題通り水の中に浮かぶような心地良い浮遊感に包まれる「水中都市」など、前作での試みをバンドの血肉へとしっかり咀嚼した上で、着実な深化/拡張を遂げています。アルバム表題は「浸潤」という意味ですが、確かにここでは生のアンサンブルと電子音の境目はスムーズに融和しており、結果生まれたサウンドもダンサブルな刺激がありつつ自然と耳に馴染む柔らかさ。ただ最後のスピッツ空も飛べるはず」の素朴過ぎるカヴァーは、ボートラ扱いとは言えやはり蛇足に感じますね…。もっとアルバム本編の流れに則したカヴァーがあれば良かった。

Rating: 7.4/10



ねごと - ALL RIGHT [Official Music Video] -Short Ver.-