浅葱 「斑」

斑

D のヴォーカリストによる初ソロ作。


何だかんだで彼もバンドマンとしてのキャリアは20年以上。その間の着実な活動により方々から支持を集めてきたのでしょう、今回のデビュー作に集結したメンツのまあ豪華なこと。縦やら横やらの幅広い人脈を総動員して作られたのは「和」のコンセプトアルバム。和メロに琴や三味線、また真矢による和太鼓などといった純邦楽要素を取り入れつつ、基本は V-ROCK の王道を行く疾走メタルポップで固められ、曲によってはそこにピアノやヴァイオリンも入ってくるからなかなか豪快な和洋折衷と言うか何と言うか。しかしこの手の和風コンセプトって陰陽座が散々やりつくしてきてるし、それ以外の所でもたびたび用いられてきた手法なだけに目新しさはハッキリ言って無い。ただそれでも一級のプレイヤーが集結しているだけにクオリティはそのまま一級なのですね。特に SUGIZO によるヴァイオリンの幻想的な響き、岡野ハジメの面妖なベースプレイが光る「畏き海へ帰りゃんせ」は白眉。その他にもキレのある攻撃曲や情感に満ちたバラード、いずれにしても浅葱の歌唱力をフルに活かした濃密な楽曲ばかりで聴き応えは十分。盤石の仕事ですね。

Rating: 7.2/10



浅葱 Music Video 「月界の御子」フル試聴

Rhye 「Blood」

Blood

Blood

カナダはトロント出身、Mike Milosh によるソロユニットの5年ぶり2作目。


前作「Woman」もそうでしたが、徹底した美意識を感じる。それはモノクロの裸体を写したアートワークもそうだし、肝心の音楽にしてもそう。管弦楽器を駆使しつつエレクトロニックな質感を残し、中性的なヴォーカルは刹那的な感傷を美しく伸びやかに伝える。この上なく上品に洗練されながらアンニュイな翳りを帯びたオルタナティブ R&B 。そこには何処か浮世離れしたミステリアスな感覚が強く打ち出されており、例えばスウィートで官能的という意味では近しい場所に属するであろう The xx や The Internet などと比べても、その聖性とも言える透明感を持った音はやはり明らかに異質。ただ今作ではファンクの躍動感、あるいはボサノヴァの軽やかさといったグルーヴが強化された感触があり、ストリングスは以前より抑揚の大きさが増した面も。また「Phoenix」では静寂を切り裂くようにして歪んだギターが挿入されたりと、以前よりも幾らか感情の揺れが大きくなってきている気がする。それはほぼ誤差の範囲ではあるのですが、やはりデュオ編成を解消して大所帯バンドによる生演奏を前提としたスタイルに移行したのが、意識的にも影響を及ぼしているのかなと。

Rating: 7.5/10



Rhye - Taste