中田ヤスタカ 「Digital Native」

ソロ名義では初となるオリジナルアルバム。


最近の中田ヤスタカの仕事をきちんと追っていなかったもので、てっきり今回もガチガチの4つ打ちハウス/トランスで固められてるのかと思っていたのですが、どうやら今現在の彼のモードはそこに留まっていないようで、予想以上に多彩な曲調が揃っていて驚きました。自分が気付くところではダブステップ、トラップ、フューチャーベース、もちろん十八番の EDM までといった種々の要素を流れるようなスムーズさで横断。ここ10年ほどの間にメインストリームを席巻したダンスミュージックの総括であると同時に、彼自身の趣味嗜好の移り変わりの総括でもあるような内容。ただ精密なコピー品の展示には終わっておらず、Charli XCX ときゃりーぱみゅぱみゅ参加の「Crazy Crazy」などは彼ならではの Kawaii ポップセンスが引き出された秀曲だし、米津玄師とコラボレートした「NANIMONO」も双方の味が上手く絡み合った面白い一曲。また随所に散りばめられたチップチューンキッチュな装飾もあり、どの曲にもきちんとヤスタカ印の判が押されているのが分かります。日本のポップカルチャーの中心を担う、という意味では丁寧な仕事だなと思う。

Rating: 7.9/10



中田ヤスタカ (Yasutaka Nakata) - 「White Cube」MV Teaser (Official)

The Soft Moon 「Criminal」

Criminal

Criminal

カリフォルニア出身、Luis Vasquez によるソロユニットの約3年ぶり4作目。


完全に臨戦態勢。以前よりインダストリアル、ポストパンク、ダークウェイブといった音楽性を掛け合わせてこの世ならざる陰鬱な世界観を描いてきた彼ですが、今作においてはその中でもインダストリアルの比重がグッと割増。冒頭を飾る「Burn」から大胆にザクザクと打ち鳴らされるエレクトリック・ボディビートの連打、そして呻くような囁きから内なる感情を大きく発散させていくヴォーカル。「自分を制御できない」と繰り返し吐露する彼の姿にはどう見ても Trent Reznor が憑依してる。ディストーションサウンドの効果的な多用、またギター/シンセリフを前面に押し出したロック色の強い楽曲が多く、それこそ後半の「Born Into This」などは Killing Joke までをも彷彿とさせる、ほとんどメタルと言っても良いくらいの圧の強さ。それだけ肉体的なアッパー感を増しつつ、この世の一切を呪うかのような従来の禍々しくナイーブな空気感も健在で、中でも「Give Something」や表題曲「Criminal」では身の毛がよだつほどの緊張感に満ちた彼の表現の深遠を堪能できる。前作の表題は「Deeper」でしたが、彼はそこからさらに奥深くを突き進んでいます。

Rating: 8.2/10



The Soft Moon - Burn (Official Lyric Video)