iri 「Juice」
- アーティスト: iri
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: CD
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以前の作品を聴いた時にも思ったけれど、やはりその声に惹かれる。深い溜め息のような翳りの中にそこはかとない色気が混じり、スタイリッシュで上品、それでいてエモーショナルな力強さも端々から感じ取れる歌声。今回のアルバムではそういった複雑なニュアンスを持った彼女のヴォーカルが最良の形で活きるような、これまでの作品で見せていた路線を自然に拡張させた R&B ポップで統一されています。先行曲「For life」「Watashi」の路線を引き継ぐ流線形ハウスチューン「Keepin'」に始まり、ヒップホップのファンキーなグルーヴを何とも軽やかに乗りこなす「Slowly Drive」、WONK によるジャズアンサンブルが美しさを一層引き立てる「Dramatic Love」と、彼女のシンガーとしてのパブリックイメージを改めて強化するような、静かに冷めた都会の夜のムードを湛えた楽曲群。それは刹那的な感傷だけに終わるものではなく、未来へ向いて歩を進めるポジティブなパワーを感じられるもの。全体を通してテンションがほぼ一定なのは平坦に感じるところもありますが、澄んだ水のように浸透する心地良さを大切にした、味わうほどに深みの増してきそうな内容です。
Rating: 7.7/10
Mint Field 「Pasar de las Luces」
- アーティスト: Mint Field
- 出版社/メーカー: Innovative Leisure
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: CD
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メンバーの Estrella Sanchez と Amor Amezcua はともにまだ21歳の若さだそう。ヴィジュアルだけを見ればファッションモデルのようなスタイリッシュな佇まいなのに、この作品に込められた情念はいったい何処から湧いて出たものなのか。暗闇の奥底からゆらりと煙のようにギターサウンドが立ち昇り、何重にも織り重ねられてスピリチュアルな世界観を形成する新世代シューゲイザーサウンドです。クリーントーンとディストーションはいずれも繊細かつ慎重な音作りで、感情の起伏をそのままダイレクトに反映するようにスムーズに連結され、ヴォーカルは全編スペイン語とのことですが空間的エフェクト処理でほとんど音の一部と化し、美しさと畏怖を同時に感じさせる深遠なダークネスを展開しています。ほとんど全曲がダウンテンポのゴスな色調で統一されているのですが、少し Neu! を想起させる「Quiero Otoño de Nuevo」、リミッターを取り払ったかのごとく突き抜けた疾走感を見せる「Club de Chicas」は目の覚めるようなハイライト。例えるならば Slowdive と Grouper と Chelsea Wolfe の中間地点に在るのがこの音、でしょうか。すでに貫禄の雰囲気も。
Rating: 8.0/10