内田真礼 「Magic Hour」

東京出身の声優シンガーによる、2年4ヶ月ぶり2作目。


内田真礼さんを見ていてよく思うのは、凄く肝が据わってるなということ。声優アイドル、と言うか声優に限らずアイドルをやるなら当然のことなのかもしれませんが、ファンが何を望んでいるか、あるいはファンにどのように見られたいかというのをすっかり熟知していて、その要望/希望をスキルフルに解決する仕事っぷりに感服するということが多くあります。今回のアルバムでも揚々とした歌いっぷりから囁き声のセリフなど本業の技までを駆使し、溌剌として表情豊かな(時にそこはかとなくエロい)お姉さんというアイコンをきっちり体現しており、その自己プロデュース力の高さが光って見えます。ただ前作では田淵智也 (UNISON SQUARE GARDEN) による楽曲の存在感が強かったのもあり、闇雲とも言えるくらいのエネルギッシュな勢いを感じたのですが、今作は比較すると同系統のアッパーな楽曲は多くあるにせよ、良い意味でのアクの強さが抜け落ちてしまい、全体的に少しこじんまりしたような印象を受ける。田淵曲が目立つ場所にあるかどうかで全体の印象がこうも変わるかという感じで、個人的には食い足りなさが残りました。

Rating: 6.4/10



内田真礼「セツナ Ring a Bell」MV short ver.(2nd album『Magic Hour』収録)

A9 「PLANET NINE」

PLANET NINE (初回盤)

PLANET NINE (初回盤)

1年ぶりとなる8作目。


前作「IDEAL」は現代における一般的な V-ROCK というものを綺麗に再定義したような、良くも悪くもオーソドックスという印象がありました。対する今作はと言うとエレクトロニクスの比重が大幅に増し、EDM やブロステップの要素を積極的に取り入れた内容になっています。「F+IX=YOU」「UNREAL」などではシンセ類とバンドサウンドの融合によって縦ノリのアッパーなグルーヴを強調し、「CASTLE OF THE NINE」に至ってはほぼ完全にエレクトロポップ化。そういった新しい側面を見せる一方で、ロックバンドらしい疾走感を強調した「PENDULUM」やヘヴィなハードロックナンバー「GIGA」、またしっとりしたミドル曲「ソナタ」といった従来の路線を引き継いだ楽曲も兼備し、バランスの取れたアルバム構成。なのですが、正直言って2018年になって新要素としてアピールしてくるのが EDM というのは相当な出遅れ感が強いし、逆にメンバーのエレクトロ方面に対する爪の甘さを露呈してしまっているような気がする。まあ最近は Avicii の急逝に伴って EDM 見直しの流れが起こっていなくもないかとは思いますが…。チャレンジとしては弱いかと。

Rating: 5.1/10



A9「UNREAL」Music Video