the GazettE 「NINTH」

NINTH(完全生産限定盤)(2DVD付)

NINTH(完全生産限定盤)(2DVD付)

2年10ヶ月ぶりとなる9作目。


自分はかつて SUMMER SONIC や KNOTFEST といったフェスの中でガゼットのライブを体験したことがあるのですが、多かれ少なかれアウェイ感のある現場の中、彼ら自身はそんな空気など何処吹く風という感じで、他の何物にも揺るがされない自分達のスタイルを完全に確立し、自分達なりのスジをしっかり通したパフォーマンスを見せており、その意志の強固さにすっかり感心していたのをよく覚えています。この新作においても彼らはやはり変わらないまま。ネオヴィジュアル系の始祖的存在からモダンなヘヴィロックへと傾倒し、アグレッシブでありながら洗練された感触、そして V-ROCK ならではの妖艶なメロディを決して忘れない、もはや現代におけるV系のお手本とも言えるようなサウンド。その中でも凝った曲構成で引っ張る「NINTH ODD SMELLS」は今作の白眉と言えるキラーチューンだし、「虚 蜩」「UNFINISHED」といった端正な疾走感のある楽曲では90年代を通過した人間のツボをこれでもかと押しまくる。目新しさはほとんど無いにせよ、ヴィジュアル系かく在るべしという彼らの拘り、ポリシーをひしひしと感じさせられる内容です。

Rating: 6.8/10



the GazettE 『Falling』Music Video

おとぎ話 「眺め」

眺め

眺め

2000年結成の4人組による、約1年半ぶり9作目。


醒めた印象を受ける。元々おとぎ話と言えば「SMILE」などに代表されるような、淡くノスタルジックな青春の情景を描くバンドというイメージが未だにあるのですが、さすがに10年以上もバンドが続いていれば表現も変わる。例えば「魔法は君の中に」「素顔のままで」といったトラックリストだけを眺めていればやはりセンチメンタルな路線なのかなと思いそうになりますが、実際の歌詞を見ると「アーティスト気取ってる君には興味がない」と毒づいていたり、また「HOME WORK」や「純真」では現実からの逃避願望が滲み出ているように見えたりと、言葉の端々から疑念、諦観のような翳りを帯びた雰囲気が仄かに匂う。その一方で青く繊細な感情表現も同列に並び、文学的な丁寧さを心掛けながら、表と裏のどちらも取りこぼしなく書こうとする有馬和樹の筆致はますます冴えを見せているように見えます。楽曲的にはサイケやフォークを消化したオーソドックスなロックへと回帰し、過去作でいう「JEALOUS LOVE」のような目新しさ、また「COSMOS」などに匹敵するようなパワーなどは正直乏しいですが、現在の彼らを切り取ったリアリティというのは感じます。

Rating: 6.7/10



おとぎ話 "ONLY LOVERS" (Official Music Video)