チャットモンチー 「誕生」

誕生(通常盤)

誕生(通常盤)

約3年ぶりとなる7作目。


今作について思うところは色々あります。まず改めて二人編成に戻ってエレクトロニクスを全面に取り入れるというアイディア自体は良いのですが、歌モノという楽曲の構成自体は変わらないからか、思ったより驚きは薄い。「たったさっきから3000年までの話」での壮大に駆け抜けていく広がりは面白いと思いましたが、どうせなら生音を全て排して完全なエレクトロ作品にした方が面白かったのではという気がするし、打ち込みに関してまだ不慣れな感は否めないので(二人でやることにこそ意義があるのでしょうが)いっそのこと外部プロデューサーを招いても良かったのではとも思う。ただそうした疑問や不満などは、この作品にまで辿り着いたバンドの物語によってほとんど帳消しとなっています。チャットモンチーとしてやれることはやりきった、そんな紆余曲折を経ての実感から敢えてのチャレンジを試み、あくまでも未来へと目線を向けた上での活動終了。高橋久美子の歌詞提供や橋本絵莉子の息子のコーラス参加など、彼女らの過去・現在・未来が短いボリュームの中に集約された、物理的な曲数以上の重みを感じさせる一枚。ありがとうチャットモンチー

Rating: 7.1/10



チャットモンチー 『たったさっきから3000年までの話』

Gang Gang Dance 「Kazuashita」

Kazuashita [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (4AD0079CDJP)

Kazuashita [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (4AD0079CDJP)

ニューヨーク出身の4人組による、約7年ぶり6作目。


ゼロ年代においては例えば Animal Collective や Battles 、そしてこのバンドのようなインテレクチュアルなアートロック志向のインディバンドが時代の流れの最前線に位置していたかと思いますが、現在ではその流れも落ち着き、各々がまた新たな方向性を模索しているように見えます。ただ長い空白の期間を経ての今作を聴いて気付かされたのは、彼らは時代の趨勢に依らない、彼ら独自のサウンドスケープを常に構築し続けていたのだということ。パーカッシブな音色を多用した土着的なグルーヴ、Lizzi Bougatsos のシャーマニックかつ蠱惑的なヴォーカル、そしてアンビエントの浮遊感を強めてより深遠な奥行きを増したエレクトロニクス、それらが交わって生まれる GGD ならではの急進派ワールドミュージックは、かつての作品と同等、もしくはそれ以上のトリップ効果を聴き手にもたらしてくれます。ミステリアスな中にそこはかとなく郷愁を醸し出す今作中随一のポップチューン「Lotus」、ダンストラックとして機能しつつ宇宙的と言えるほどの壮大さを見せる表題曲「Kazuashita」など、聴きようによっては Cocteau Twins 後継の突然変異体とも受け取れる神秘性。

Rating: 8.0/10



Gang Gang Dance - Lotus (Official Audio)