Animal Collective 「Tangerine Reef」

Tangerine Reef

Tangerine Reef

US はボルチモア出身の4人組による、約2年半ぶり11作目。


情報によると今作は海洋生物学者を擁するアートデュオ Coral Morphologic とのコラボレーション作で、サンゴ礁保全を目的とする国際サンゴ礁年に指定された2018年を記念してのオーディオヴィジュアル・アルバムとのこと。なので下に貼り付けた映像とセットで体感するのがこのアルバムの本来の聴き方というわけですね。その異様にクリアな接写で撮影されたサンゴ礁の映像は、生々しい迫力と神秘的な色彩に思わず圧倒されるし、これまでよりもさらに抽象的となったサイケ・エレクトロニクスはそんなサンゴ礁の魅力を聴覚から引き立てる、完全にサウンドトラックとしての役割。それは確実に聴き手を非現実的な世界へと誘うトリップ効果に満ちたものですが、コンセプトありきの制作なのと初の Panda Bear 不参加という編成が災いしたのか、これまでの奇矯なポップネスはだいぶ後退し、実験的な色合いが強すぎて聴き通すのにかなり忍耐を要するというのが正直なところ。単純に音楽的な面においてはアニコレとして目新しい要素があるかと問われると微妙な気もするし、あまりオリジナルアルバムとして捉えない方が良いのかもしれませんね。

Rating: 5.5/10



Tangerine Reef - The Audiovisual Album by Animal Collective & Coral Morphologic (Official Film)

Mitski 「Be the Cowboy」

Be the Cowboy

Be the Cowboy

ニューヨーク出身のシンガーソングライターによる、2年2カ月ぶり5作目。


表題通り地の底から噴出するような激情を見せる「Geyser」に始まり、オルタナティブロックの荒さに足を付けながらシンセやホーンセクションを取り入れてバロックポップ風に展開する「Why Didn't You Stop Me?」、牧歌的な中に情感が深く滲んだフォーク/カントリー「Lonesome Lover」、ファンク/ディスコ経由後のフレンチポップといった趣の「Nobody」など、前作から一気に飛躍したアレンジの幅広さに翻弄される。ほとんど1~2分という短尺の中に様々な趣向を凝らした楽曲群が目まぐるしく流れ、それらは上品な美しさを纏ったメロディ、そしておそらく自身の内にある孤独や葛藤、愛情の希求といったある種普遍的なテーマによって統合され、彼女の身を切り売りするような生々しい切迫感と洒脱なエンターテインメント性が大胆にぶつかった、それこそ彼女が影響を受けたと公言している椎名林檎を彷彿とさせる説得力にすっかり魅了されてしまいました。トータルで僅か33分とは思えないほどカラフルで情報量が多く、なおかつ涼やか、なのに畏怖を感じるほど重い。この自由奔放さでこの先いったい何処まで変容するのか、まるで底が知れません。

Rating: 9.0/10



Mitski - Geyser (Official Video)