PALM 「TO LIVE IS TO DIE, TO DIE IS TO LIVE」
TO LIVE IS TO DIE,TO DIE IS TO LIVE (初回限定盤)(DVD付)
- アーティスト: PALM
- 出版社/メーカー: DELIVER B Records
- 発売日: 2018/08/29
- メディア: CD
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その豪速球ストレートの強さに圧倒される。要所要所でブラックメタル由来の禍々しいエッセンスを感じさせつつ、ブラストビートの爆速あるいはスラッジ的な重苦しいグルーヴで迫るハードコアパンク。強烈なアグレッションを放ちながらもリズムの切り返しやギターリフはキャッチーな印象が強く、ちょうど彼らが多大なシンパシーを寄せている Converge を彷彿とさせる場面も多々あります。ただ彼らはその音楽性の苛烈さに加えて、日本人としての言葉の圧が凄まじい。具体的な名前こそ挙げていないものの、明らかに周囲の特定人物に向けたであろう反発反抗のメッセージ、または現代の日本の音楽シーンが孕む捻れに対して飾ることなく NO を表明した、あまりにも生々しく辛辣な言葉の数々。それは歌詞の内容が即座に刺さってくる日本語ゆえの即効性がありながら、高速ビートを巧みに乗りこなしたデスヴォイスの響きでフィジカルな快楽性も伴うという、正しく日本人がハードコアを演る上でのお手本のような内容と言えるでしょう。特に先行曲「音我苦 -ONGAKU-」で見せる決意表明、その腹の括り方には唸る他なかった。頑ななまでの信念に貫かれた一枚。
Rating: 8.3/10
Nothing 「Dance on the Blacktop」
- アーティスト: NOTHING
- 出版社/メーカー: ICE GRILL$
- 発売日: 2018/08/24
- メディア: CD
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前作「Tired of Tomorrow」も大概だったけど今回はさらに上を行くかもしれないくらい、完全に思い出迷子族。リズム面ではパンク/ハードコア出身ならではの骨格の強さがありつつ、ノイズとクリーンがしなやかに融合したシューゲイザーサウンドにグランジ/オルタナティブのラフな荒々しさも加味し、90年代初期~中期のロックシーンを独自に総括してしまったような、アルバム丸ごとが古き良き時代へのオマージュと化したと言っても過言ではない出来。本当にここぞという所でノイズギターが狙い澄まして切り込んでくるし、意地でも力を入れてやるかと言わんばかりの陶酔度の高いヴォーカルもシューゲイザーマナーを綺麗に踏襲したもので、その曲構成やらプロダクションやら、隅から隅まで計算し尽くされた楽曲の精緻さ、90年代以外の要素を極力排除した極端な潔さには流石に降参するしかないという気持ち。中盤「Us/We/are」に至っては微妙に Radiohead「Creep」まで入ってるようで笑ってしまった。オリジナリティをかなぐり捨ててでもアピールするジャンルへの愛情が結果的にオリジナリティになるという、ある種貴重な例ですよね。
Rating: 7.0/10