Low 「Double Negative」
- アーティスト: LOW
- 出版社/メーカー: SUB POP
- 発売日: 2018/09/14
- メディア: CD
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かねてよりスロウコア/サッドコアの旗手として(本人達はそのカテゴライズを望んでおらず、またほとんど死語と化した名称ですが)認知されている彼らの新譜は、これまでの作品がまだ人肌の温もりを感じさせるものであったと考えを改めさせられるほどに、輪をかけて冷徹な、辛辣な音と化しています。前作でも見られたエレクトロニカの手法が推し進められ、密閉空間で押し潰されたようなノイズ・パルス音や、浮遊感と同時に強烈な虚無感を与えるシンセサウンドのレイヤーが、極端にブーストされた低音波長を伴い、立体的な音響空間の中で静かにせめぎ合う。バンドアンサンブルと電子音の境目はすっかり融和し、それこそ Radiohead「Kid A」と直結するダークかつ神経症的な世界観が展開され、その中で Low ならではの翳りを帯びつつも豊かに広がるヴォーカルの歌心は、まるで雲間の一筋の光のように煌めいて見えます。特に終盤、それまでの抑圧を一気に開放した「Rome (Always in the Dark)」の迫力には完全に圧倒された。評価の確立したベテランバンドであるにも拘らず、今なお挑戦的な変革へと向かうそのストイックな姿勢にひどく感服させられました。
Rating: 8.5/10
Pale Waves 「My Mind Makes Noises」
- アーティスト: PALE WAVES
- 出版社/メーカー: DIRTY HIT RECORDS
- 発売日: 2018/09/28
- メディア: CD
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今年の SUMMER SONIC でライブを見た時にも感じたことなのですが、とにかく歌のポップさが際立っています。ルックスこそ漆黒のゴシック/ホラーメイクに身を包んではいるものの、実際に鳴らされている音と言えばその禍々しいイメージの真逆を行く、至ってクリーンな甘酸っぱさ、ともすれば爽やかさすら感じる80年代ニューウェーブ・シンセポップ。さらにメロディだけを抜き出してみればニューウェーブ通り越してメインストリームど真ん中を射貫く、下手すれば Avril Lavigne か Taylor Swift か?というレベルの突き抜けっぷり。ゴスとポップの掛け合わせはそれこそ The Cure や Strawberry Switchblade などの時代から、ある種イギリスの伝統として連綿と受け継がれているスタイルだと思いますが、彼女らの場合は特にその楽曲とヴィジュアルの落差が大きく、伝統を踏襲しながらも広く世に打って出ようという野心が感じられます。同じタイプの楽曲ばかりが並んで14曲50分というのは冗長さも否めませんが、逆に言えばどの曲も彼女らにとって余所行きの顔として機能し得る、デビュー作にしてすでにベスト盤の様相。これが新世代の UK のスタンダードとなるのか。
Rating: 7.2/10