有村竜太朗 「個人作品集1992-2017「デも / demo #2」」

個人作品集1992-2017「デも/demo #2」(通常盤)

個人作品集1992-2017「デも/demo #2」(通常盤)

Plastic Tree のヴォーカリストによる、約2年ぶりソロ2作目。


前作の「#1」と同じく、Plastic Tree 本隊と音楽的な差異はそう大きくはありません。ラフにザラついたオルタナティブロック、またはシューゲイザー由来の美しいノイズの重層を主とした、実に彼らしいと言える楽曲群。ただそこに他のバンドメンバーの意思が入るか、自らが主導権を取って完結させるか、その制作のプロセスにおける差異が当人の中では最も重要なのでしょう。ギターのエフェクティブな加工こそ多くあるものの、基本的にはシンプルなバンド感を大切にしており、おそらくデビュー当時からほとんど変わらない竜太朗個人の嗜好が高い純度でアウトプットされています。個人的に特に耳を惹いたのはラストの「19罪 / jukyusai」。表題通り1992年、彼が19歳の頃に作ったものが原型とのことですが、昔の作風を取り戻すというよりも今の視点から19歳の頃を思い返すというスタンスで、茫洋とした空を眺めるような若さ故の空虚感が轟音とともに膨れ上がり、そしてその空虚はきっと今に至るまで彼の中に根を張り続けている。前作と同じゲストを揃えたためか、より呼吸が揃って丁寧に練り込まれた感のある8曲。

Rating: 7.3/10



有村竜太朗「くるおし花/kuruoshibana」

くるり 「ソングライン」

4年ぶりとなる12作目。


アルバム毎に作風がコロコロと変わるため、くるりというバンドに何を求めるかは人によって大きく異なるかと思いますが、肩肘張って大胆な変革を見せていた初期の頃に比べると、ここ最近の作品からは程良い余裕と成熟が見られ、彼らの魅力の二本柱である実験性と普遍性がより自然な形で馴染み合っているように感じます。それで今回の新譜。前作「THE PIER」ではエレクトロニクスから民族楽器までの雑多な音楽要素を取り込んで多国籍感を打ち出していたのが、ここでは純粋にメロディ/ハーモニーを聴かせるという原点に回帰してのグッドソングがずらり。フォークあるいはブルーズの感触が心地良いバンドアンサンブル、そこに自然に馴染むストリングスの豊かな音色。中には60年代風のサイケな意匠を施した表題曲「ソングライン」や、何故かのプログ・ハードロックインスト「Tokyo OP」のような濃いめの楽曲もあり、またそれ以外の一見あっさりとした牧歌的な歌モノにしても、実は細部まで練られたアレンジの厚みで聴き応えはしっかり。そして岸田繁のヴォーカルは情感を滲ませて歌い上げている様子が気持ち多めに見られたり、さり気なくも確実な深化。

Rating: 8.4/10



くるり - ソングライン