DIR EN GREY 「The Insulated World」

The Insulated World(通常盤)

The Insulated World(通常盤)

3年9ヶ月ぶりとなる10作目。


ここに来てまた贅肉を削いだと言うか、ストレートに回帰したような印象を受けます。「UROBOROS」以降の彼らは特に、激しい曲でもメロディアスな曲でも複雑に入り組んだ曲構成を特徴としており、そのプログレッシブ指向は今作でも変わってはいません。しかしややこしい言い方ですが、奇妙に捻れながらも全体を見れば一本の真っ直ぐな線を成している縄のように、いずれの楽曲も第一には極めて直接的、明快なインパクトを持って迫ってきます。それに呼応してか歌詞の面においても、「価値が欲しい 生きる価値が欲しい」「誰が正しいとかどうでもいい」など、京の信念思想を反映した言葉がより一層飾り気のない形で、真っ向から聴き手へとブチ撒けられている。これら痛みや怒りの表現を見ていると、京というアイデンティティは昔から変わらないどころか、むしろ頑なに変えようともせず、負の感情と向き合う姿勢を今なお強固なものにしているように見えます。攻撃性に特化した序盤の勢いから「Ranunculus」の壮大な憂いまで、ヘヴィネスを保ちながらしなやかな色味のグラデーションを見せる13曲。結成20周年を経ても、彼らは良い意味で落ち着かない。

Rating: 8.1/10



DIR EN GREY - 「Ranunculus」(Promotion Edit Ver.) (CLIP)

Cornelius 「Ripple Waves」

Ripple Waves

Ripple Waves

「Mellow Waves」リリース以降の音源を中心とする編集盤。


内容は「Mellow Waves」収録曲のスタジオライブテイクやリミックス、シングルのカップリング曲、アナログプレイヤーのテスト用音源として作ったその名も「Audio Check Music」や、Drake「Passionfruit」のカヴァーという意外なものもあり、つまりは「Mellow Waves」と共通するモードで制作された番外編のような位置づけ。洗練された空間的サウンドデザインにひとつヒネた遊び心を加えた、相変わらずのコーネリアス節が満載な中、個人的に最も興味深かったのはいくつかのライブ音源でした。基本的に同期なし、バンドアンサンブルによる生演奏だと思うのですが、スタジオ版と比較してもほとんど遜色のない演奏の精緻さ、にも拘らず第一に感じるのは緊張感ではなく、何処かリラックスした穏やかな空気感という。「If You're Here」など細かく聴けば複雑なシンコペーションの嵐で、メンバー間の間合いを計るだけでも肩肘張ってきそうなものが、これほどに柔らかく美しいムードを生み出すというのが不思議と言うか圧巻と言うか。あとリミックスの中ではズブズブの魔術的、宇宙的なオルタナティブ R&B を展開していた Hiatus Kaiyote が最も聴き応えありました。

Rating: 7.4/10


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