Age Factory 「GOLD」

GOLD

GOLD

奈良出身の3人組による、2年ぶり2作目。


今作を最初聴いた時に、まずその音の開け方に驚かされました。冒頭に据えられた表題曲「GOLD」での、まるで Fall Out BoyJimmy Eat World かというスケールの大きなシンガロングコーラス。清水エイスケの泥臭い野性味に満ちたヴォーカルはそのままに、垢抜けたメロディの爽快感、スポーティな躍動すらも感じさせる演奏からは、インディ・オルタナティブの範疇から抜け出し、よりマス規模のオーディエンスと向き合おうというオープンな印象を強く受けます。ただそれは単純なセルアウトに走ったわけではなく、あくまで彼らの出自であるエモ/パンク/ハードコアの骨太さを保っており、その上で自分達がどれだけポップに寄せられるかという、ある種のチャレンジングな野心も確かに表れてる。ここ最近は積極的に大型フェスへの出演を果たしていたり、対バン相手が GEZAN や LOSTAGE のような DIY バンドから、SiM や Crossfaith といったラウド勢まで多岐に渡っていたり、そういった現状を見ても、おそらく彼らの中でバンドや音楽に対する向き合い方に変化が起きているのかなと思います。このまま行くと予想以上に大きく化けるかも。

Rating: 8.0/10



Age Factory "GOLD" (Official Music Video)

St.Vincent 「MassEducation」

MASSEDUCATION

MASSEDUCATION

US 出身のシンガーソングライターによる企画盤。


内容は昨年リリースした「MASSEDUCTION」のアコースティック・ピアノ弾き語りヴァージョン。そもそも「MASSEDUCTION」という作品が「精神病棟の SM 嬢」というキャラクター・コンセプト、奇矯なシンセサウンドを多用したトリッキーなアレンジ、原色のラバー素材に包まれたフェティシズムの集合体のようなヴィジュアル・イメージなど、様々な方向から尾ひれを付け加えた総合的アートポップといった趣の作品だったので、それらの装飾を取っ払って歌詞とメロディのみを残した今作を発表したのは、おそらく Annie Clark の中で必然的というか、この作品まで含めて「MASSEDUCTION」というコンセプトの一環なのだと思います。それで丸裸の状態となった楽曲に残ったものはと言うと、原曲よりも切実かつ生々しい痛みを伴って表れたエモーションの数々。「New York」や「Slow Disco」のようなバラードは分かりやすいですが、エレクトロニクスの役割が大きかった「Pills」や「Sugarboy」にしても、ピアノの弦を弾くなど変則的な奏法を交えながら、原曲とは全く別の厳かさを見せています。「MASSEDUCTION」の世界をより深く味わうための裏の顔。

Rating: 7.0/10



St. Vincent - Savior (piano version) Official Video