大槻ケンヂミステリ文庫 「アウトサイダー・アート」

アウトサイダー・アート

アウトサイダー・アート

大槻ケンヂを中心とする新プロジェクトのデビュー作。


メインコンポーザーはタカハシヒョウリ(オワリカラ)と特撮からの盟友である高橋竜。帯にもあるようにジャジー、ファンキー、ブルージーな音楽性を軸としつつ、オーケン自身はポエトリーリーディングをいつもより多めに交え、名前にもある通りミステリをテーマとした世界観を展開、というもの。まず最初に思い出したのはかつてのオーケンのソロ作品や電車の頃の楽曲でした。筋肉少女帯だと HR/HM 、特撮だとモダンなヘヴィロックのフィルターを通過することが多いため、今作のような肩の力の抜けた演奏だと歌詞世界の見え方もまた一味違ってきます。「探偵はBARにいてGHOSTはブレインにいる」「スポンティニアス・コンパッション」などは今回のコンセプトだからこそ生まれ出たものだし、何処かノスタルジックな雰囲気の「去り際」「美老人」にしても、こういったのほほんテイストのオーケンは最近少なかったと思うので、やや新鮮な感もあったり。何ならもっとガッチリ設定の定まったコンセプトアルバムにしても良かった気もするけど、周期的に訪れるオーケンの息抜き活動は、こちらもたまに手に取りたくなるものですよね。

Rating: 6.5/10



「ぽえむ」 MV / 大槻ケンヂミステリ文庫 12/5発売 1stアルバム「アウトサイダー・アート」より

サイプレス上野とロベルト吉野 「ドリーム銀座」

ドリーム銀座

ドリーム銀座

横浜出身の2人組による、約3年半ぶり6作目。


「ヒップホップを薄めないエンターテインメント」というのは彼らがデビュー当時から掲げているスローガンですが、確かにその名に違わず、様々な手を尽くしての彼ら流のヒップホップ・エンターテインメントが展開されています。「Yokohama La La」や「PRINCE OF YOKOHAMA 2222」のように最近の時流に則したトラップ曲も揃えてはいますが、彼らの本領が発揮されるのはそれよりも昔ながらのブーンバップだったり、ファンク要素を加味した4つ打ちビートなど、ストレートにフィジカルを突き上げるパーティーチューン。明らかにライブの盛り上がりを意識した「ヒップホップ体操第三」のようなコミカルな要素を交えた楽曲から、「青春の決着」のようにエモーションが素直に滲み出た楽曲まで、オーディエンスを盛り上げることに徹しながらヒップホップとしての流儀はキッチリと通す、これが彼らのスタイルということですね。随分前に「ドリーム」を聴いた時から印象は変わっておらず、本当に良くも悪くも、日本だからこそ生まれ得たヒップホップという感じ。特別な目新しさはないけれど、ヒップホップの窓口を担うという意味では重要な存在なのかも。

Rating: 6.4/10



【サ上とロ吉】サイプレス上野とロベルト吉野「Yokohama La La La (Pro.DJ PMX) 」MUSIC VIDEO