Awesome City Club 「Catch The One」

2013年結成の5人組による初フルレンス。


現在は既に削除されていますが、メンバー atagi は自身の Twitter にて、今作に至るまでの間にバンドがどれほどの苦難にブチ当たっていたかを赤裸々に吐露していました。商業的なブレイクスルーのために様々な試行錯誤を重ね続け、その果てにメンバー全員が心身ともにボロボロとなっていたと。しかし結果的に出来上がった今作は、そうした血や汗の滲みを毛ほども感じさせない、余所行きのカラフルさを纏った軽快なファンク・ダンスポップの応酬。涼やかなメロディが心地良い「SUNNY GIRL」、現行の R&B ポップからの影響も感じられる「愛とからさわぎ」など、あくまでもオプティミスティックで享楽的な楽曲の機能性を重視し、そこに作り手のエゴを必要以上に打ち出さない、という意味では非常に高いプロ意識が感じられます。ただ満を持しての初フル作という割に、これまでの EP 作の延長線上と言える(フルの意義があまりない)ソングコレクション的な内容だったり、曲調に寄り添いすぎてスルスルと流れてしまう歌詞の内容だったりと、この「軽さ」というのが取っ掛かりの弱さに転じてしまっている気がして、彼らの一番の弱点はそこなのではないかと。

Rating: 6.0/10



Awesome City Club - 「Catch The One」(Studio Live ver.)Short Music Video

七尾旅人 「Stray Dogs」

Stray Dogs

Stray Dogs

高知出身のシンガーソングライターによる、約6年ぶり6作目。


彼はアルバムを発表するたびにこちらの予想を大きく裏切り、常に規格外な存在であり続けてきました。それはデビュー時の自意識が暴発したカオティックな作品から、近年のシンプルな弾き語りスタイルに重きを置いた作品にしてもそう。そして今回の久方振りの新譜などは、ある意味では過去最高に賛否がスパッと分かれる内容かもしれません。実験的な要素はほとんど削ぎ落とされ、至って素朴に温和に、真っ当な歌を届けることに注力した今作。シンセポップの「DAVID BOWIE ON THE MOON」や「きみはうつくしい」などは、アンビエントの浮遊感と同時にジワリと滲み出すソウル感が、よくよく聴くと昨今の流行を意識しているようにも思えたり、表題そのままにアフロ要素を取り入れた「Across Africa」のような異色曲もあったりしますが、いずれにせよ中心のメロディと言葉を丁寧に伝えようとする姿勢が第一にあり、それがこれまでの作品を一通り聴いてきた身には逆に異質なものに映る。ただ彼もいつの間にかデビューから20年が経ち、20年という時間の中で変わらない人間などいないのだし、自らの内面を克明に刻もうとする、ある種の誠実さはいつも通り。

Rating: 6.4/10



七尾旅人 "DAVID BOWIE ON THE MOON" (Music Video Edit)