Swervedriver 「Future Ruins」

FUTURE RUINS

FUTURE RUINS

英国オックスフォード出身の4人組による、約4年ぶり6作目。


前作「I Wasn't Born to Lose You」もそうでしたが、90年代シューゲイザー代表格のひとつである彼らであっても、最盛期からの解散、再結成を経て、30年近くものキャリアが重なれば多少なりとも変化はするだろう、ということで往年の代表作「Raise」や「Mezcal Head」での青臭く溌剌とした疾走感から、丹念に熟成されたミドル/スロウ曲へと主軸が変化し、曲を聴いているだけでもその年月の厚みが感じられて何だか遠い目になってしまいますね。そういった変化に対して寂しさを感じないわけではないですが、しかしながらこれはこれでまた、英国産ならではのロックサウンドとして十分聴き応えのある内容だと思います。歪みやクリーンなど音色を巧みに変化させるギターサウンド、その演奏のひとつひとつはラフな感触なのですが、それらが重なって少しずつ層を形成し、やがて濃密な音の塊へと膨れ上がっていくアレンジの緻密さ、繊細さはさすが熟達者の手腕といったところ。はっきり言って目新しいことは何一つとしてやっていません。けれどもこれだけ自らのスタイルに対して潔い信念があれば目新しさなど不要だという、説得力のある渋味に満ちた内容です。

Rating: 7.1/10



Swervedriver - Spiked Flower

TOY 「Happy in the Hollow」

HAPPY IN THE HOLLOW

HAPPY IN THE HOLLOW

英国ブライトン出身の5人組による、2年3ヶ月ぶり4作目。


デビュー時からサイケデリア、クラウトロック、さらにはシューゲイザーの領域までカヴァーする空間的サウンドを信条としている彼ら。この新作においてもそのレトロスペクティブな方向性は変わっておらず、むしろその音響空間をさらにディープに煮詰め、ますます閉塞的でダークな質感のものへと仕上げています。濃密なリヴァーブを施したギターやヴォーカル、シンセまでもが渾然一体となり、この手のサイケロックならではの生暖かくドラッギーな浮遊感を強調。そこにフォーク要素も加わった「The Willo」などは「Microcastle」期の Deerhunter をダイレクトに想起させたり、荒々しい疾走感とミニマリズムの恍惚が同居した「Energy」は Suicide の生バンド解釈という風にも聴こえる。それらは一見優しく包容力のあるサウンドに感じられますが、実際その眼は異様なまでに醒めているというか、音の端々からはある種ゴス的とも言えるほど殺伐とした毒気が滲み出していて、ひどくニヒリスティックな印象を受けます。安寧と狂気が紙一重のラインでせめぎ合い、聴き終えた後には荒涼とした空虚感だけが残されるという、この音に対する美意識はなかなか強烈なもの。

Rating: 7.6/10



TOY - 'Sequence One' (Official video)