HEALTH 「Vol.4 :: Slaves of Fear」

SLAVES OF FEAR 4

SLAVES OF FEAR 4

ロサンゼルス出身の3人組による、3年半ぶり4作目。


そもそもは初期 Boredoms のようなスカムなノイズ/ジャンクロックを志向していたのが、作品を重ねるごとにどんどんエレクトロニクスの比重が大きくなり、前作「Death Magic」では艶やかなシンセポップ要素まで取り入れて随分と洗練された姿を見せていました。そしてこのドギツい表題を冠した今作。一打一打が硬質に研ぎ澄まされたダンスビートはこれまでの変遷の延長線上と言えるものですが、ホワイトノイズ的だったギターの質感もここではヘヴィに引き締まったディストーションとなり、インダストリアルメタルへの大胆な接近を図っています。輪郭の滲んだシンセ類やヴォーカルでは浮遊感を醸し出しながら、スクエアで重苦しいグルーヴとザクザク刻みまくるギターの攻撃性が一丸となって聴き手に激しくヘッドバンキングを促す。過去には Nine Inch Nails のツアー帯同も経験している彼らですが、ここで見せている音楽性は NIN を通り越して Skinny Puppy や Front Line Assembly など、よりアングラかつ正統派なインダストリアルの独自解釈といった趣。今の時代なかなかこの方向に進むバンドはいないのでは、という意味でもかなり強気な攻めの一手でしょう。

Rating: 8.2/10



HEALTH - STRANGE DAYS (1999) :: MUSIC VIDEO

KOHH 「UNTITLED」

UNTITLED

UNTITLED

東京出身のラッパーによる、約2年半ぶり5作目。


これまでの作品を聴いて個人的に感じていたのは、KOHH のラップというのは例えばセルフボーストやメイクマネー的な内容であったり、「他人に縛られずに自分らしく生きる」というヒップホップのみならずロック/ポップス全般において叫ばれがちな内容を取ってみても、それらは他者に対する攻撃的なものと言うより、全て自分自身に向けた内省的なメッセージであるように見えるのですね。常にオリジナルで在れ、成功者で在れと自らに何度も何度も言い聞かせているような、彼自身が嘯くテキトーとは真逆の激しさが言葉の端々から感じられました。そしてこの新作では、音数を絞りながらますますダーク、シリアスに向かったトラックが全編を占め、その内に向かう激しさがさらに強調されているように思います。荘厳なオーケストラをバックに歌う感動的なオープナー「ひとり」、Taka (ONE OK ROCK) をゲストヴォーカルに迎えて完全にアリーナロック化した「I Want a Billion」といった新機軸を備えつつ、静けさの中に強い緊張の糸を張ったトラック群は、まるで心の中に潜む混沌とした闇の部分がそのまま音と化したよう。いよいよここまで来たかという境地。

Rating: 9.0/10



KOHH - "I Want a Billion feat. Taka(ONE OK ROCK)" Teaser