Ty Segall 「First Taste」

First Taste

First Taste

カリフォルニア出身のシンガーソングライターによる、約1年半ぶり11作目。


US ガレージロック番長として名を馳せているところの彼ですが、昨年はコラボ作や別名義も含めると6枚もの作品をリリースしただけに、もういい加減通常のバンドスタイルに飽きてきたのか、この新作では強烈な反動が来ています。大胆にもエレキギターを完全に放棄し、その代わりにサックスやブズーキ、マンドリン、リコーダー、果ては琴といった多種多様な楽器を導入。楽曲によってはツインドラムの編成も取ったりで、ガレージロックの枠を無視した自由度の高いアンサンブルへと移行しています。しかもそれら種々の音色は左右のパンに極端に割り振られており、ただでさえ雑多な音の群れを纏めようという様子がまるで見られない。そこに従来の朗々とした中にサイケ由来の毒っぽさの滲み出たメロディが加わると、いつにも増してB級感が弥増すと言うか、これまでの直接的な荒々しさとは別の意味での、ネチっこい攻撃性が強調されているように思います。実験的な内容ではありますが、彼にとっての真っさらな新境地と言うよりも、これまでに打ち立ててきた魅力に別の側面からスポットライトを当てたような、彼の本質が別の形で浮かび上がった怪作です。

Rating: 7.7/10



Ty Segall "Taste" (Official Music Video)

BAROQUE 「PUER ET PUELLA」

PUER ET PUELLA

PUER ET PUELLA

約4年ぶりとなるフルレンス4作目。


先日のギタリスト圭のソロ作「4 deus.」はこのアルバムの予告編的な位置付けだったのだなと、今作を聴いた後に実感しました。アレンジ面ではシューゲイザー、ポストロック、エレクトロニカアンビエントといった音響重視の要素を踏まえつつ、メロディはさらに突き抜けた壮大な広がりを見せ、ギターは長い尺を取って感情の赴くままにソロを展開。表題曲「PUER ET PUELLA」での厳かに圧し掛かる聖性、そこから「STARRY BOY」では L'Arc-en-Ciel 直系の鮮烈なポップネスを纏って走り抜け、「SKY FITS HEAVEN」では重心を低く構えたハードロックグルーヴで攻める。前作「PLANETARY SECRET」で見せていた小宇宙的サウンドスケープが縦にも横にも拡張され、更なる重厚さ、説得力を持った形で提示されています。ここ数年のシングル曲全てが全く違和感のない流れに組み込まれているのを見ても、紆余曲折を経てきた音楽性を前作で固定し、そこから焦ることなく丹念に、慎重に進化を目指してアルバムを作ってきたということがひしひしと伝わってくる。これだけ確固たる世界観の構築に成功したのだから、ジャンル問わず広まってくれることを願います。

Rating: 8.2/10



BAROQUE-NEW ALBUM『PUER ET PUELLA』(2019/7/30 Release) より 「PUER ET PUELLA」