The Chemical Brothers 「Surrender (20th Anniversary Edition)」

サレンダー(20周年記念盤)(4CD+DVD付)

サレンダー(20周年記念盤)(4CD+DVD付)

1999年に発表された3作目の20周年記念リイシュー盤。


やっぱりどう考えても満点なんですよね。今聴いても余裕で良い。もちろん彼らがその名を世界中に知らしめた所以は、1st や 2nd で大々的にフィーチャーされている、空襲のようなドデカいビッグビートではあります。しかしその功績に囚われることなく音楽性をさらに押し広げ、軽やかな手付きでもってロックかつポップ、カラフルで何処かファニーな現行のケミカルらしさを確立したのは、この作品が最初だと思います。Kraftwerk 風味の愛らしいチープさとファンクネスを携えた「Music: Response」に始まり、アドレナリン大噴出の高速ハウストラック「Out of Control」、もう散々言われてるけどビッグビート通り越して The Beatles のダンスミュージック解釈な「Let Forever Be」、途方もない多幸感に包まれるアッパーサイケ感の極致「The Sunshine Underground」、そして永遠のアンセム「Hey Boy Hey Girl」。ダンスアクトとしての立ち位置から全くブレることのないままロック/ポップスのフォーマットへと可能な限り接近し、ジャンルの垣根を完全に融解することに成功した名作です。そしてボートラ The Secret Psychedelic Mixes は冷めやらぬ熱の再出火。

Rating: 10.0/10



The Chemical Brothers - Out Of Control (The Avalanches Surrender To Love Mix) - Visualiser

Liturgy 「H.A.Q.Q.」

H.A.Q.Q.

H.A.Q.Q.

  • Liturgy
  • メタル
  • ¥1528
ブルックリン出身の4人組による、4年8ヶ月ぶり4作目。


彼らはデビュー時から自身の音楽性を Transcendental Black Metal と称しており、ブラックメタルが持つ混沌、狂騒、快楽を新たな側面から解釈することを活動の大きな指針としていました。そんな彼らの思想はこの作品でいよいよ爆発を見せています。前作「The Ark Work」で顕著だった種々の管弦楽器やシンセサウンドの導入、また執拗なまでの反復を主とするアヴァンギャルドな曲構成も引き続き健在。その一方で、前作では意図的にオミットされていたバンドサウンド面の攻撃性が復活し、デスヴォイスも盛大に解禁。クワイアやハープなどの音色が発する宗教的な清らかさと、トレモロリフやブラストビートの暴虐性がドロドロに溶け合い、他所のブラックメタルバンドとは確実に質の異なる、得体の知れないシュールな狂気が充満しています。さらにはアンサンブル全体を歪曲させる極端なグリッチ処理も至る所で加えられ、演奏が何処へ向かうのかまるっきり見当もつかない、完全にレールを外れた暴走列車状態に。バンマス Hunter Hunt-Hendrix の信念体系を図示したというアートワークも含め、表現の直向きさに更なる加速度がついているのがよく分かる怪盤です。

Rating: 8.2/10



Liturgy - God of Love