Beck 「Hyperspace」

ハイパースペース

ハイパースペース

  • アーティスト:ベック
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: CD
約2年ぶりとなる14作目。


やたらとヴェイパーウェーブ臭の強いジャケットに思わず身構えてしまいますが、楽曲自体はもっと真っ当なエレクトロポップ。それも前作「Colors」のダンサブルな作風からまた一転し、アンビエント的な浮遊感、アンニュイな翳りを多く含んだ夢見心地のムードが充満しています。大半の楽曲で共作者/プロデューサーとして名を連ねているのが Pharrell Williams 。彼の助力がどれほど大きいかはすぐに掴み取れる。「Uneventful Days」や「Chemical」あたりは最も分かりやすくトラップ以降の R&B ポップに沿ったものだし、その他でも深い霞が棚引くようなサウンドデザインはヒップホップや R&B 勢の最新鋭の潮流を意識したが故のものかと。その中で Beck 本人のブルージーな渋味のある声は良い意味でやや異質な感触があり、カメレオンのごとくスタイルを変容させながらも記名性はきっちり確保されていると思います。聴きようによってはかつての「Sea Change」の頃に顕著だった憂いの要素が別のフィルターを通して再構築されたという風にも見えるし、最新型のフォルムを持ちつつも、彼のキャリアの中で決して突飛なものではないはず。

Rating: 7.3/10



Beck - Uneventful Days

The Chemical Brothers 「Surrender (20th Anniversary Edition)」

サレンダー(20周年記念盤)(4CD+DVD付)

サレンダー(20周年記念盤)(4CD+DVD付)

1999年に発表された3作目の20周年記念リイシュー盤。


やっぱりどう考えても満点なんですよね。今聴いても余裕で良い。もちろん彼らがその名を世界中に知らしめた所以は、1st や 2nd で大々的にフィーチャーされている、空襲のようなドデカいビッグビートではあります。しかしその功績に囚われることなく音楽性をさらに押し広げ、軽やかな手付きでもってロックかつポップ、カラフルで何処かファニーな現行のケミカルらしさを確立したのは、この作品が最初だと思います。Kraftwerk 風味の愛らしいチープさとファンクネスを携えた「Music: Response」に始まり、アドレナリン大噴出の高速ハウストラック「Out of Control」、もう散々言われてるけどビッグビート通り越して The Beatles のダンスミュージック解釈な「Let Forever Be」、途方もない多幸感に包まれるアッパーサイケ感の極致「The Sunshine Underground」、そして永遠のアンセム「Hey Boy Hey Girl」。ダンスアクトとしての立ち位置から全くブレることのないままロック/ポップスのフォーマットへと可能な限り接近し、ジャンルの垣根を完全に融解することに成功した名作です。そしてボートラ The Secret Psychedelic Mixes は冷めやらぬ熱の再出火。

Rating: 10.0/10



The Chemical Brothers - Out Of Control (The Avalanches Surrender To Love Mix) - Visualiser