GEZAN 「狂 (KLUE)」
大阪出身の4人組による、1年3ヶ月ぶり5作目。
革命、抵抗、レベル、新しい時代。アルバム全曲の中に散りばめられた、これら極めて扇情的な言葉の数々。インディペンデントであることに拘って活動を続けてきた彼らの中で、この "何かを変える" という意識は時間を経る毎にますますリアリティを伴って肥大してきたのでしょう。さらには安部やトランプといった具体名まで飛び出すしで、今現在の社会情勢を極めてシビアな目で見据えているのは明らか。しかし彼らはリード曲「東京」の中で、"今から歌うのはそう 政治のうたじゃない" ときっぱり断言しています。彼らは自身の政治的イデオロギーを晒すことはせず、むしろ "GEZAN を殺せ" というラインもあるように、自らに同調しようとする人間を振り払おうとすらしている。決して徒党を組みたいわけではない。ただ聴き手に "変化" を促す。つまりは今この世界を取り囲む様々なシステムや常識に疑問の目を向け、自分で考える、個を突き詰めることこそが重要だと問うているのだと思います。誰しもが自分という個からは逃れられない、だからこそ皆が個を失わないまま幸せを得るべきだと。そんな言葉の強さが爆発し続けるトライバル・ダブ・パンク・ディスコ組曲。
Rating: 8.4/10
BAROQUE 「SIN DIVISION」
- アーティスト:BAROQUE
- 出版社/メーカー: FWD Inc.
- 発売日: 2020/01/28
- メディア: CD
前作「PUER ET PUELLA」が天使／光のモチーフを前面に打ち出していたのに対し、今回は悪魔／闇。極めて分かりやすい対比ではありますが、サウンド面の方向性は決してパックリ両極端に分離されているわけではなく、むしろ共通する部分も多く残されています。通常のバンド編成に加えて直線的な4つ打ちトランス、またダブステップやトラップなど種々のエレクトロニクスの導入が目立ち、場面によっては異国情緒豊かなラーガ音楽のテイストも加えるなどで淫靡なゴシックムードをアピール。しかしその一方で、これまでの楽曲でも印象的だった L'Arc～en～Ciel 直系の清冽なメロディ、持ち得るテクニックを駆使して思う存分に泣きまくるギターソロも健在。ダークなコンセプトを立てながらも決して一面的には陥らず、グラデーションを描くようにしてヘヴィな禍々しさからしなやかな透明感までを行き来し、彼らの目指す世界観がいかにパノラミックで奥行きの深いものであるかを証明しています。独立した世界観を持ちつつ「PLANETARY SECRET」以降の諸作と密接にリンクし、光と闇が決して切り分けられない表裏一体のものであるとした構成。何とも周到な。
Rating: 7.8/10
