iri 「Sparkle」

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Sparkle

Sparkle

  • アーティスト:iri
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: CD
神奈川出身のシンガーソングライターによる、1年ぶり4作目。


iri の活動を追っていて思うのは、彼女の個性というのはデビューの時点でほとんど完成の域に達していて、そこから作品を重ねる毎にアッパーとメロウの配分を微調整し、少しずつ慎重に深みと幅を拡張しているのだなと。それで今作はと言うと、前作「Shade」が憂いのムードを重視していたのに対し、ここではダンサブルな曲の比率がだいぶ多め。正しく "影" に対する "光" 。なんて分かりやすいアルバム表題。アーバンに洗練されたフォルムを保ちつつ、4つ打ちを軸としたバウンシーなグルーヴが即座に身体を突き動かす。iri のヴォーカルもそれに合わせて流暢なライミングをスパスパと繰り出し、ちょうど水を得た魚のようにラップと歌の境目を自由に横断。しかしそういったテンション高めのトラックにおいても、彼女のスモーキーな声質はやはり何処かアンニュイな翳りを含んでいて、リズムが熱を帯びていくのを冷ややかな目線で眺めているような、良い意味で突き抜けきらない絶妙なバランス感覚が楽曲の中に生まれているように思います。スピード感あるラップパートでも肩の力はするりと抜けていて、これ見よがしな圧の強さとは無縁。何ともスキルフルな。

Rating: 7.9/10



iri -「Sparkle」(Music Video)

Dizzy Mizz Lizzy 「Alter Echo」

オルター・エコー (特典なし) 

オルター・エコー (特典なし) 

デンマーク出身の3人組による、約4年ぶり4作目。


前作「Forward in Reverse」は各パートの存在感が際立つスリーピースならではのソリッドさを活かし、骨格の太くダイナミックな演奏がストレートに身体に突き刺さってくる、ロックバンド本来のシンプルな魅力が熟成された内容でした。今作はそこからかなり踏み出し、プログレあるいはポストロックの領域に迫る音響性、実験性が詰め込まれています。主幹を成す演奏は相変わらず力強いものではありますが、空間全体を埋め尽くさんとするギターの広がり、そこへ荘厳なムードを助長するシンセやストリングスも追加し、BPM をグッと落としたグルーヴの深さも相まって重厚感は弥増すばかり。そして今作の目玉はやはり、後半23分をまるごと使った全5楽章構成の組曲「Amelia」でしょう。幽玄の美しさからグランジーな野性味までの大きな振り幅を行き来し、憂いたっぷりのメロディが様々な質感で彩られていく。場面によってはエレクトロ化する前の Muse にも近しい外連味を感じるのですが、どれだけ音像がパノラミックになっても全く密度を落とすことなく、最後まで筆圧の強さを保ったまま深遠な世界観を描き切る、その手腕に圧倒されます。

Rating: 7.8/10



Dizzy Mizz Lizzy - California Rain