COALTAR OF THE DEEPERS 「THE VISITORS FROM DEEPSPACE」 「SUBMERGE」 「THE BREASTROKE」


あまりのマイペースぶりに少し心配になったりもしましたが、先日めでたく新作が出たということで、せっかくなので昔の作品についてもつらつら書きたいと思います。前半3枚。



THE VISITORS FROM DEEPSPACE

THE VISITORS FROM DEEPSPACE

メジャーデビュー作にして初のアルバム。


今でこそ洗練された音になりましたけど、この頃は凄まじい程に荒々しく、カオティックですらあります。メタル、ハードコア、シューゲイザー、ギターロックと様々な要素を貪欲に取り込み、初期衝動でもってフル加速させた彼ら独自のヘヴィロック。完全にデスメタルと化した The Cure 「killing an arab」 カヴァーに始まり、「amethyst」 「your melody」 では NARASAKI の中性的な少年ヴォーカルが少しの清涼感を残しつつ、ささくれ立った音でザクザク斬りつけるギターやバタバタ転げ回るドラムにひたすら圧倒されます。さらに脈絡なくサンバが入る 「earth thing」 、勢いはそのままにポップな明るさが宿った 「summer days」 と容赦なく畳みかける。この時点で既に窒息しそうなんですが、次の 「snow」 は一転して透明感と寂寥が深遠に響き渡り、途中からまさに吹雪のごとくギターノイズが降りかかるプログレッシブな大曲。そのスケール感と雰囲気の妖しさ、切なさには別の意味で息が詰まりそうになる。そして直線的な荒々しさとメロウな感傷が合致した名曲 「blink」 で一気にスパートをかけて、 「the visitors」 でキテレツなオチをつけるという。彼らのオルタナティブな個性はこの頃から遺憾なく発揮されてますね。


Rating: 8.4/10



SUBMERGE

SUBMERGE

活動休止期間を経て、4年ぶりとなった2作目。


前作のアグレッションが幾らか統制を受けた形で受け継がれつつ、テクノ/エレクトロニカ方面に手を伸ばしたり音響面に拘ったりした結果、全体的な構築性がさらに高くなりました。冒頭の 「Receive Assimilation」 は圧倒的な厚みを持ったギターサウンドと溶けるようなヴォーカル、浮遊感あるシンセが複雑に絡み合って、ディープな奥行きの増した音世界を繰り広げてます。また 「Cell」 「Sazabi」 ではポップなメロディが前面に出てたり、ジャジーな 「Silver World」 や Aphex Twin を思わせる 「dI++」 と小曲を挟んでたりと、勢い最重視の前作にはなかった実験的な試みが満載。その後もドゥーミーな妖しさが圧しかかる 「Tim」 、ギターロック的な切ないポップネスがより一層際立った 「Natsunogyouninzaka」 、ミサトさん参加の名曲2 「Submerge」 と彼らならではのロックサウンドを展開し、ラストは孤独感と暖かさが交錯する 「The Lifeblood」 で泣いて終了。ヴァラエティに富んだ楽曲群を上手くまとめ上げ、カッチリとトータリティを貫いた傑作です。底なしの深みにズブズブ沈む 「Receive e.p.」 と合わせて聴くとなお良いかと。


Rating: 8.8/10



THE BREASTROKE - THE BEST OF COALTAR OF THE DEEPERS

THE BREASTROKE - THE BEST OF COALTAR OF THE DEEPERS

91年〜98年の間を総括するベスト盤。


上の2枚からも抜粋されてるんですが、曲の繋ぎなど細かい所に NARASAKI の編集が入ってるらしく、実にスムーズな流れのためオリジナル盤と同じ感覚で聴けます。基本的には 「THE VISITORS〜」 と同じ、 (やかましい類の) ギターとロックにまつわる様々なジャンルをごった煮にした、ラウドかつソリッドなスタイル。はち切れんばかりのエナジーと冷静な視点によるアイディアがどの曲にも詰まりまくってます。昔の曲は複雑な構成のものが多く、それが 「圧倒的」 という印象に拍車をかけてますね。彼らの原点 (と勝手に思ってる) 「MY SPEEDY SARAH」 、スラッシーな怒涛の疾走を見せる 「DEEPERS'RE SCHEMING」 、4つ打ちのダンサブルなグルーヴが格好良い 「SARAH'S LIVING FOR A MOMENT」 とやはり密度の濃いナンバーが並ぶ一方、新録の 「THE LIGHTBED」 では軽快に跳ねるリズムとネオアコ的な風通しの良さも携えて、それが全体の中で良いアクセントになってます。そういった雑食性だったり、ヘヴィとメロウ、シリアスとユーモア、熱さと冷たさ、そういったあらゆる感覚が分け隔てなく消化され、78分のフルボリュームで吐き出されてるのです。名盤。


Rating: 10.0/10


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