YAPOOS 「ヤプーズ計画」 「大天使のように」 「ダイヤルYを廻せ!」 「Dadada ism」 「HYS」


昨日に続き、今日はヤプーズ名義のオリジナル作5枚。



ヤプーズ計画

ヤプーズ計画

87年発表の 1st 。この頃は戸川純ソロに関わってたメンツがメンバーとして参加してます。


「切ったら血の出るテクノ」 という謳い文句を何処かで見かけた事があるんですが、テクノというかニューウェーブですね。シンセや打ち込みを導入したロックバンドというスタイルで、そこに戸川純の演劇的なヴォーカルとアングラ/サブカル要素を盛大に注入して、唯一無二の個性を生み出すという。特に頭3曲は素晴らしい。サーフなノリとエロティックかつ SF な歌詞が絶妙にマッチした 「バーバラ・セクサロイド」 、深く陶酔するムードと耳元で囁くようなか細い声がまた別のエロさを表現した 「キスを」 、打って変わって不穏なシンセと鬼気迫るオペラ風歌唱、エログロ直球な歌詞が凄絶な 「肉屋のように」 、この冒頭3曲はまさに三者三様、かつどれもヤプーズという異形の個性で貫かれており、曲順も含めてかなり強烈なインパクトを持っています。それ以降もキラキラした儚さが素敵な 「ロリータ108号」 、突き抜けて明るく壮大な作風の 「宇宙士官候補生」 など可愛らしいテクノポップサウンドに濃ゆい題材 (SFネタ多し) を合わせて、独自の世界観を形成しています。80年代アングラの毒は今でも、というか今だからこそ有効ですね。逆に新鮮。


Rating: 9.0/10



大天使のように

大天使のように

88年発表の 2nd 。ここで第1期ヤプーズが終了。


やってること自体は前作からほとんど変わっていませんが、意図しての事なのか前作よりもメロディの抑揚が抑えられて掴み所のない印象になってたり、歌詞の内容も抽象的で難解なものが多かったりと、さらにマニアックな方向に走っていますね。オープナー 「私は孤高で豪華」 はまだ派手な作風だけど、そこからは淡々としたノリがなんだか薄ら寒い 「憤怒の河」 や、何故かアメリカンハードロック調の 「鉄の火」 、東洋エキゾチック風味の 「祈りの街」 「去る四月の二十六日」 など、B級アングラっぷりにさらに磨きがかかってるような。そんな中で個人的なお気に入りは、あどけなさとミステリアスな浮遊感が入り交じったワルツ調の 「森に棲む」 と、今作中1番真っ当なメロディを持った正統派ポップス (でも歌詞は深い情念漂う) 「大天使のように」 。この2曲はメロディに明確なフックがあって、比較的受け入れやすい曲だと思います。でも全体としては取っつきにくさの方が勝る、ちょっと迷走気味の内容。玄人ファン向けですね。


Rating: 6.2/10



ダイヤルYを廻せ!

ダイヤルYを廻せ!

91年発表の 3rd 。大きくメンバーチェンジが起こり、4人編成に。


まずシンセの使い方や楽曲のヴァリエーションが増えて、格段にカラフルな印象になっていますね。メロディも派手でメロウな要素が増して、以前よりもキャッチーで聴きやすくなってる。ファンシーでお洒落な浮遊感が面白い 「アンチ・アンニュイ」 や、痛快に弾けたヤプーズ流ポップスの 「Men's JUNAN」 を聴いたら、バンドが上手いこと垢抜けて90年代版にヴァージョンアップを遂げてるのが解ると思います。そのぶんアングラ/サブカル臭は幾分か減退したわけですが、それでも戸川純の独特のヴォーカルや愛憎溢れるディープな世界観は健在で、決して安易にセルアウトしたわけではありません。特に修復不能な男女関係をテーマに、どうにもやりきれない哀愁が詰まった 「ギルガメッシュ」 、赤という色に対しリアルな生の実感を確認する、精神面のヘヴィネスが圧倒的な 「赤い戦車」 、このラスト2曲は強い説得力に貫かれた名曲。彼ららしい濃さはそのままに、整理整頓されて華やかな彩りが追加された傑作です。


Rating: 8.6/10



DADADA ISM

DADADA ISM

92年発表の4th。ここでまたメンバーチェンジが起こり、オリジナルメンバーは戸川純と中原信雄の2人に。


新しく加入した河野裕一とライオン・メリイ、ともにバンドに新たな風を吹き込んでいます。河野氏はロック色の強い、火薬のキナ臭さ漂うスリリングかつ攻撃的な作風の 「急告」 「私は好奇心の強い女」 、メリイ氏はドリーミーで可愛らしい電子音を多用し、薄暗い寂しさや切なさで包まれた 「12階の一番奥」 と、曲調も歌詞も思い切りシュールな 「ダダダ イズム」 を提供しており、どちらも今までのヤプーズにありそうでなかった曲調。特に 「12階の一番奥」 は名曲ですね。夜の部屋で独り膝を抱えてるような情景が不意に頭に浮かぶ。また中原氏の十八番と言えるエキゾチックなメロディが鮮烈な 「君の世」 「コンドルは飛んでいく」 や、 「ぜんぜん知らない人から大嫌いだって言われちった」 なんて歌詞が痛快な 「テーマ」 など、相変わらずヴァラエティに富んだ粒揃いの内容。ヤプーズは作品を重ねる毎にキャッチーで派手になっていってるんですが。特に今回はアグレッシブな要素が目立つ気がする。アレンジの凝り方もだんだん深くなってるし。個人的にはアリな変化だと思ってます。


Rating: 8.4/10



HYS

HYS

95年発表の5th。今のところこれが最新アルバムですね。


3rd、4thよりもメロディはさらにキャッチーに、アレンジはさらにカラフルに進化しており、毒々しい花を華麗に咲かせるようなヤプーズ流ポップスはここで完全に確立してます。10曲それぞれの個性が立っていて、かつ全体の流れも上手く緩急がついてるという完成度。ヤプーズ王道は中原氏、可愛らしいテクノポップはメリイ氏、ロック的なのは河野氏といった具合に、曲を聴けば誰の作曲か予想がつくのは良いですね。メンバー各々のキャラが立って、バンドがバンドとして上手く機能してる証拠。特に 「あたしもうぢき駄目になる」 は前作のエキゾ路線を継承しつつドラマチックな要素も多く追加され、さらに昇華された名曲です。そして今回歌詞のテーマも曲ごとにハッキリしてる。病んだ世相、思春期の閉塞感、生の実感など精神的に重くリアルな内容のものが多く、派手になった楽曲とは対照的に、従来の個性も忘れていません。どの作品にも良い曲はあるけど、トータルの完成度で見ればこのアルバムが1番かも。毒気で言えばやはり80年代の作品ですけどね。


Rating: 8.8/10


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