戸川純 「20th Jun Togawa」 / 戸川純バンド 「Togawa Fiction」


戸川純祭りのラスト、2000年代の2枚です。



20th Jun Togawa

20th Jun Togawa

デビュー20周年を記念してリリースされたカヴァーアルバム。


内容は The Velvet UndergroundPatti Smith といった60〜70年代のオルタナティブミュージシャン、フレンチポップ界隈の Brigitte Fontaine に Vanessa Paradisクラウトロック勢 (らしい) Slapp Happy 、さらには Phew という80年代好きのツボを突く曲もあったり。これ本人による選曲だとしたら興味深いですね。そんで音の方はホッピー神山がプロデュースを手掛けており、実験的ノイズ/コラージュが全編に散りばめられたアヴァンギャルドな作りになっています。ギターが狂気的なハウリングを発する 「Because the Night」 やホッピー流トリップホップと言えそうな 「終曲」 「All Tomorrow's Parties」 はもちろん、チェロやクラリネットのアンティークな響きを前に出した 「ラジオのように」 なんかでも何処かしら不穏な影が付きまとい、総じてひどくダークかつ粘着的。俺がまともに原曲を知ってるのは VU だけなんですが、どの曲も現代的なフィルターを通してやりたい放題弄られてるんだろうというのは想像つきます。純さんのヴォーカルがいつもより不安定なのもある意味ダークさに拍車をかけてて良い。20周年記念って言ってるのにこんな根暗なの出してしまうんだから頼もしいですね。初心者の方もどうぞ。


Rating: 7.4/10



TOGAWA FICTION

TOGAWA FICTION

現時点での最新作。純粋なオリジナル作としてはヤプーズ 「HYS」 以来ですか。


プロデュースは引き続きホッピー神山。さらにナスノミツル吉田達也といったプログレ方面の豪傑もメンバーに加わり、よりアグレッシブでジャンクな、ロックバンドらしい肉体性を感じさせる内容になってます。ゲルニカともヤプーズともまた一味違ったスタイルで演奏が強く主張してくるという。カオティックなジャムセッション風の演奏の中、戸川純の喘ぎにも似たヴォーカルがエロティックに絡みつく (最後はしっかりオチまでつける) 「カウンセル・プリーズ」 、コミカルなスカ調だけど歌詞はアレな 「オープン・ダ・ドー」 、牧歌的なメロディを聴かせつつ中盤の展開では演奏陣のプログレ気質が露わとなる 「拝啓、パリにて」 、今作中最も実験的でヘヴィな 「さよならハニームーン」 、 「ちょっと悪いは最高じゃん?」 名言炸裂の 「トガワ フィクション」 、幽玄な広がりの中に寂しさや無常感が漂う不思議な味の 「おしまい町駅ホーム」 、以上6曲。アングラに収まりすぎてあまり外を向いてない、内輪ノリっぽいムードがあるのは少し気にかかりますが、相変わらず粒立ちの良い楽曲が揃ってるし、ファンは納得の内容かと。


Rating: 7.8/10



以上で終了です。ライブ盤や単発プロジェクト (アポジー&ペリジーとか) といった細かい所まではまだ聴けてないんですが、大まかな部分はなんとか追えました。不思議系/自傷系に属すシンガーは探せばそれなりに見つけられますけど、それらとは確実に一線を画す真性のお方ならではの業の深さ、決してアングラの闇からは抜け出せない呪縛めいたものすら感じさせるオーラ。それに加えてヴォーカルや歌詞、楽曲はオリジナリティに溢れていて語り所満載。これほど色んな意味でクオリティの高い人ってそうそういないはず。何かしら機会があれば触れてみることをお勧めします。これに比べたら椎名林檎なんて全然ポーザーだよな! (知ったような顔で)


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