特撮 「オムライザー」 「夏盤」 「綿いっぱいの愛を!」


昨日の続き。インディーズに移ってからの後半3枚です。



オムライザー

オムライザー

ベスト盤を挟んで、2年ぶりとなった4作目。


リードトラック 「オム・ライズ」 は文句なしに格好良いです。キレのあるヘヴィネスで軽快に盛り上げ、サビではキャッチーなメロディが一気に開けるという特撮の王道路線を踏襲した秀曲。その他だと物悲しさが優しく流れるバラード 「Sweets」 、究極の逆ギレソング 「子供じゃないんだ赤ちゃんなんだ」 、やたら大仰な雰囲気の中エディのピアノが鬼気迫る勢いで展開する 「プログレ・エディ」 辺りが聴き所。でも以前の作品と比べると良くも悪くも肩の力が抜けてると言うか、腹八分目のボリュームでまとまってるのもあって小粒な感じは否めないです。特撮としての個性はそれなりに出てるし良いのは良いんですが、既存の枠からはみ出てる部分はほとんどなく、予想の範囲内で留まってしまってる。もう少し練り込んでから出してほしかったという気持ちも正直残ります。あとこの頃からエディがニューウェーブ風シンセを使い始めてるんですが、本来の凄腕クラシックピアノに比べるとやはりまだ付け焼き刃的な印象は拭えないなーと。そんな感じで結局 「オム・ライズ」 ばかりリピートして聴いてる俺なのでした。


Rating: 7.4/10



夏盤

夏盤

タイトル通り夏をテーマにした5作目。


夏がテーマと言っても当然チューブとかサザンみたいになるわけはなく、インドア派が夏を楽しんで何が悪いっつー逆ギレめいたアティテュードで夏をお届け。でも製作期間が短かったからか前作に増して小粒な印象になり、正直練りこみが足りず今一歩な内容で終わってると思います。オープナー 「アングラ・ピープル・サマー・ホリデイ」 が完全に過去のフォーマットをなぞっただけの凡曲だし、7曲というボリュームも凄く中途半端に感じる。軽快なロックンロール的ノリが新鮮な 「ロードムービー」 、えらくヘヴィなピアノリフがズンズン響く 「エレファント」 、重厚さと美しさが絶妙に混じり合うミドルチューン 「花火」 など、良い曲もあるにはあるんですけどね。あと特撮は作品を重ねるごとにヘヴィネスが抜けてポップス志向になっていくのですけど (多分 NARASAKI の影響) 、あまりそれが良い方向に作用してない気がします。音の迫力や凄味が削がれるというマイナス面の影響が大きくて、ポップなメロディもそれにつられて弱くなってると思う。どうも色んな意味で食い足りなさの残るアルバムでした。


Rating: 5.6/10



綿いっぱいの愛を!

綿いっぱいの愛を!

1年ぶり6作目。現時点での最新作です。


スラッシーな高速リフとキャッチーなサビが鮮烈な王道曲 「綿いっぱいの愛を!」 、ニューウェーブポップスからスラッシュメタルに突然変異の 「僕らのロマン飛行」 、そこはかとない無常感とジャジーな雰囲気が素敵な 「死人の海をただよう」 が良い感じ。でも全体的に見るとヘヴィネスの減退は進行し、さらに縮こまってしまってる印象。以前のような冴えが見られずに 「デス市長」 の再録とか 「江ノ島オーケン物語」 のトホホな歌詞とか 「さらばマトリョーシカ」 のエディによるオペラヴォイスとか、そういった若干のネタでなんとか苦し紛れに繋いでる感がある。ここまでくると特撮としての引き出しはもう空っぽで、やれることはやり尽くしてしまったのかという寂しさを感じてしまいました。初期の頃からアンサンブルが完成されてたぶんそこから脱却するのもまた難しいだろうし、メジャーを離れてからはあまり制作環境も良くなかったのかもしれない。そういう問題点を十分には解消しきれてない、ちょっと厳しい作品だと思います。


Rating: 5.2/10



以上で終了です。個人的には前半がひどく勢いづいてて素晴らしかったのだけど後半の失速ぶりもちょっとアレで、後半3枚から良い曲を抜粋してやっとアルバム1枚ぶんの濃さになるんじゃないかくらいのヌルさになってしまってたので、オーケン筋少復活宣言したときは驚くと同時に妙に納得したものでした。いやでもしかし、パンク/メタル/ハードコアを基盤としつつこれだけの個性の強さを持ったバンドって他にそうそういないはず。筋少の影に隠れてあまり評価されてないような気がするのですけど、まだ聴いたことない方は 「爆誕」 「ヌイグルマー」 あたりから是非どうぞ。


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