黒夢 「Cruel」 「feminism」 「FAKE STAR 〜I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER〜」


昨日に続いて黒夢祭りの2回目。さらに音楽性が多様化していくメジャー中期です。



Cruel

Cruel

わずか半年のインターバルで完成したミニアルバム。


音的には前作 「迷える百合達」 の延長線上ですけども、その前作がほとんどメロディ重視の楽曲で占められてたのに対し、こちらはバンドのコアな部分を打ち出した、ラディカルな側面が前に出てると思います。ヒステリックなシャウトで捲くし立てる高速ハードコアナンバー 「CHANDLER」 「Sick」 、スカを取り入れた軽快な (けど妙にエロい) 曲調で新たな一面を見せる 「sister」 、ディープな妖しさにズブズブ沈んでいくような 「意志薄弱」 と、コンパクトなサイズの中で順当な進化/拡大を遂げてる。歌詞はエログロ SM スタイリッシュな世界観で統一されててコンセプチュアルな趣もあり。ボリュームが少なくてアルバムとして聴くには若干消化不良だけど、この頃の彼らの方向性が分かりやすい形で纏まってると思います。アルバムヴァージョンの 「ICE MY LIFE」 はシングルより若干アレンジが派手に装飾されててこちらの方が好み。 「Sick」 は後のリメイクヴァージョンの方が断然格好良いですけどね。


Rating: 7.2/10



feminism

feminism

メンバーが2人となり、初のチャート1位を獲得した3作目。


清春はインタビューで 「気持ち悪いくらい優しい表現をしたかった」 と述べていたそうですが、確かにその言葉通り、オリコン1位も納得といった具合に彼ら流のポップネスが全開です。 「前作を否定する」 意味合いを含む 「心臓」 「解凍実験」 を経て、表題曲 「feminism」 はキャッチーで翳りのあるメロディと清春の妖艶なヴォーカルがマッチした、まさに今作の象徴。その他もシングル曲 「優しい悲劇」 「Miss MOONLIGHT」 を筆頭に、暖かい優しさが異色な 「眠れない日に見る時計」 、愛らしく軽快に跳ねる 「Happy Birthday」 、幻想的な美しさで魅せる 「至上のゆりかご」 等々、あくまでも歌を中心に聴かせることに拘りつつ、黒夢としての個性もしっかり貫かれた高品質ポップソングの応酬。その一方でシニカルかつ不穏な 「Unlearned Man」 、随一のアグレッシブナンバー 「カマキリ」 といった毒の側面もアルバム内で良いアクセントとして機能してますね。ここにきて彼らはデビュー以来の方向性において頂点に達した感があります。代表作の一つ。


Rating: 9.0/10



FAKE STAR~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~

FAKE STAR~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~

連続チャート1位を獲得した4作目。


ここにきて大胆な方向転換。所謂ヴィジュアル系な耽美要素はかなり抜けて、シンセ/プログラミングを大幅に導入したデジロックアレンジとなり、ある意味 J-POP の主流にグッと近づいたような気が。特にシングル曲 「BEAMS」 「ピストル」 は今までとは確実に一線を画す明解なポップさで、幅広い層にアピール出来るであろうポテンシャルを持った秀曲です。しかしポップさが増した一方で、彼らが以前から持っていた毒の部分も同様に前面に出てきてますね。そもそもアルバムタイトルからしてシニカルさ全開なわけですが、歌詞の方にもかなり直接的な表現がチラホラ。辛辣な皮肉がアグレッシブな曲調とともに牙を剥く 「FAKE STAR」 「BARTER」 、ギトギト過激なセックスソング 「SEX SYMBOL」 「S.O.S」 と、デジ要素を纏って派手さ/キッチュさが増したことで陰と陽双方により突き抜けた感がある。物理的に音の厚みや強度が増して、そのぶん様々な要素がヴァージョンアップされたような印象。賛否両論あるかもしれないけど、確実に大きな進化を感じさせるアルバムです。


Rating: 8.4/10


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