Antony and the Johnsons 「THE CRYING LIGHT」

Crying Light

Crying Light

シンガーソングライター Antony Hegaty を中心とするバンドの3作目。初めて聴きました。


まずその歌声。男性的な渋みを含みつつ女性的な丸みも帯びており、大らかな包容力、か細く揺れる繊細さ、温もりや悲しみ、それらを一度に内包したような声。穏やかな中にも底の見えないほど豊かに情感が込められた歌で、そこには思考を奪われて没頭してしまうくらいのパワーが確実に存在します。ジャズ/シャンソン調の楽曲や至極シンプルな演奏陣がさらにその声を引き立て、静かな空気の中に凄まじく濃密な音世界を構築してる。それで珍しく歌詞が気になって調べたら、 「私を四分に切り裂き、その隅に打ち捨てよ」 「身体は土と化し、その上に雨が降り注ぐ」 といったヘヴィな場面があれば、 「太陽が目を開き、大地に光が満ち溢れた」 「永遠の時が私を自由にしてくれる」 などの壮大な場面も見られ、そこでは深い絶望の中に甘美な安らぎがあり、生きようとする力強さの中に険しい痛みや苦しみがある、そういった人間の業を美しくリリカルに表現した内容でさらに心酔しました (多分に妄想入ってるかもしれませんが) 。余計な装飾/流行のギミックなどは一切排除し、感情的な歌というものをストイックに突き詰めた極上の一品であります。暗黒舞踏家の大野一雄をフィーチャーしたジャケも含めて最高。


Rating: 9.0/10
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