cali≠gari 「第7実験室」 「第2実験室 改訂版」 「8」


昨日に続いてカリガリ祭の後半。メジャーデビュー後の3枚です。



第7実験室

第7実験室

散々焦らしてきた彼らも、この作品でようやくメジャーデビュー。


前作から導入されたテクノ/ニューウェーブ要素は今作でさらに消化されて、バランス良く纏まったアンサンブルに進化を遂げてますが、その一方で曲調の多彩さはさらにエスカレート。疾走感あるギターロック、シュールな祭囃子、ファンク、4つ打ちテクノ、音響、昭和歌謡、ジャズ、フォーク、ハードコアといった具合に様々なジャンルを貪欲に取り込む (というか同一線上に陳列していく) 姿勢はメジャーに行ってもまるで変わらず、痛快ですらあります。レンジの広さは間違いなく過去最高で、 「ウチらがこのジャンルを導入するとどうなるか」 という調合を片っ端から試していく様は正しく実験室。それらが単なる付け焼き刃的なものではなく、各メンバーのアンテナの高さ/音楽的な引き出しの多さに裏打ちされたものなので、雑多でありながら散漫にはならず、強引に一枚のアルバムとして聴かせてしまう強度を保ってる。人身事故がテーマの 「マグロ」 や全歌詞規制の 「東京ロゼヲモンド倶楽部」 など昔の毒が若干戻ってきた部分もありつつ、彼らならではの持ち味/スタイルを最大限に発揮した代表作です。


Rating: 9.2/10



第2実験室 改訂版

第2実験室 改訂版

96年に発表したデモテープの、現メンバーによるリメイク作。


元々が第6期以前の、 「奇形メルヘン音楽隊」 の頃の作品ということで、前半はアングラ臭炸裂の電波曲揃いです。秀仁氏が一人で再構築した 「ギロチン」 はインダストリアルビートと不穏な電子音と絶叫に塗れた壮絶ノイズ曲に。続く 「嘔吐」 は初期カリガリの代表曲。初っ端で滑るようなチョッパーベースをカマした後は、カニバリズムがテーマの歌詞とキテレツな不協和音ギター、軽快に跳ねる陽気さが逆に薄ら寒い怪曲。これぞカリガリって感じで素敵としか言いようがない。しかし後半では優しいメロディサイドに移行。車の中で録ったという 「腐った魚」 はまさに水の中で歌ってるような音響処理で穏やかさが倍増されたアコギ弾き語り。また 「オヤスミナサイ」 はネオアコ的な乾いた甘酸っぱさが映える名曲。とても 「嘔吐」 とかと同じバンドとは思えない (笑) 。そしてラストの新曲 「夏の日」 は 「月夜の遊歩道」 のサビメロを引用してるんですが、元曲とは印象がまるで違い、青氏らしい昭和メロディの哀愁が全編に溢れる名曲。歌詞もポジティブで泣ける。過去と最新のスタイルが様々な形で混じり合った、興味深い内容です。


Rating: 7.8/10



8

8

タイトルから 「実験室」 が排除された、現時点での最新作。


「入口」 「出口」 「ドラマ」 も無く、今までの彼らの様式を脱する異色作。今までは無節操なほどに様々なジャンルの音楽を取り入れてたのが彼らの 「実験」 でしたが、今回はアレンジや曲構成が先の読めないマニアックな練り込みが成されている、曲単位での 「実験」 に移行してます。特に秀仁氏の楽曲にそういった傾向が強いのですが、 「その行方、徒に思う…」 や 「ダダン・ディ・ダン・ダン」 などさらにニューウェーブ色を強めながら不穏でアブストラクトな作風が目立つ。そして青氏はそんな楽曲群に真っ向から対峙するかのごとく昭和オカマ歌謡 「新宿エレキテル」 や爽やかに疾走するギターロック 「青春狂騒曲」 を作っていて、秀仁氏の曲はアルバム前半に、青氏の曲は後半に局在。何だかんだで全体的にバランスの取れていた 「第7」 とは対照的に、各メンバー間で音楽性の折衷を図るのが困難になってきたのか、正直言って今回はトータリティが破綻してる。それでもバンドとしてまた新たな領域にチャレンジしてる事は確かだし、これはこれで面白いとは思いますが、迷走してる感は否めない作品でした。


Rating: 7.6/10



以上で第7期カリガリ作品はほぼ網羅。 個人的には 「ブルーフィルム」 が業のように大好きなのですけど、初めての人には 「第7実験室」 か、入手しづらいけど 「再教育」 がオススメですね。 「第6実験室」 は baroque を筆頭とする所謂オサレ系ブームの切っ掛けとなった作品なんですが、当時のヴィジュアルシーンをリアルタイムで経験した人じゃないと十分に楽しめないかもしれない。今はもう DIR EN GREY やムックなどのラウドロックがすっかり主流となってるので、果たして今の彼らがどれだけシーンの中で有効なのか分かりませんが、とりあえず消費期限が切れるまでチェックしておこうと思います。つか昨日 「新作が出るかどうか微妙」 とか書きましたけど7月にシングル出すんですね。来たるべきニュー実験室に俺は期待を膨らませるばかりですよ。


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