FJORDNE 「THE SETTING SUN」

The Setting Sun

The Setting Sun

東京出身、 Shunichiro Fujimoto によるソロユニットの4作目。初めて聴きました。


「THE SETTING SUN」 = 「斜陽」 。今作は太宰治の作品にインスピレーションを受けた内容とのことですが、楽曲自体はアブストラクトに浮遊感を醸すシンセ類が眼前一杯に広がり、その中にギターやピアノ、ストリングス等のアコースティック楽器が不規則にエディットされ、鳥の囀りやレコードノイズも交えて空間的に散りばめられた IDMアンビエントミュージック。誰もいない夕景の鮮やかな光と深い陰影をそのまま切り取ったかのような、神秘的とも言える高潔さ/静謐さ/純度の高い透明感が常にあり、なおかつエレクトロニクスは音の隙間全てを塗り潰すほどの濃密な厚みを持っていて、表現する世界の中へ聴き手を引きずり込む強い磁場を放っています。思わず陶然とするほど美しく儚げだけれど、実の所その質量はひどく重い。そのため素朴なアンビエントとして気軽に聴き流せないのは良くも悪くもといった感じでしょうか。あと太宰治のイメージと比較するとちょっと美化されすぎてて、昭和の日本らしい湿っぽさや頽廃的な要素が足りない気もするのですが、幻想的なノスタルジアを湛えたエレクトロ抒情詩として、穏やかな中にもパワーを秘めた良作だと思います。


Rating: 7.0/10
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