deadman 「no alternative 2.0」 「in the direction of sunrise and night light」

no alternative 2.0 remix

no alternative 2.0 remix

2006年に活動停止した名古屋出身の4人組による、2003年にリリースした初フル作の再発盤。


何故このタイミングで出たのかは置いといて。攻撃性を打ち出そうとすると何かとメタルに向かいがちなヴィジュアル界において、グランジ/オルタナ寄りの刺々しくザラついた砂塵サウンドを鳴らした稀有なバンド。眞呼氏のコロコロ表情を変える道化風ヴォーカルに、色褪せた哀愁と妖しさが入り混じる独特のメロディ感覚、そして荒々しさの中にセピア色の頽廃的な影を落としたアンサンブル。比較的メロウ感を重視した前半と、毒気のあるコミカルさを挿入しつつアグレッシブに迫る後半で構成された、彼らならではと言える個性を確立した傑作です。それで今回 「2.0」 とあるように全曲にリミックスを施したとのことですが、余計な弄りは加えず純粋に音質を向上させたということですね。音の厚みと立体性が増したと同時に余計な粗さが取れ、全体の音が程良く混ざり合って一体感が増したように感じます。微妙な違いと言えばそうだけどこれは何気に重要。特に 「lunch box」 なんかは曲自体は好きだけど音のバランスがチグハグだと思っていたので、今回の調整でようやく完成した感があります。痒い所に手が届き、名盤がより名盤らしくなって嬉しい限り。


Rating: 9.2/10



in the direction of sunrise and night light 2nd press

in the direction of sunrise and night light 2nd press

そしてこちらが2005年リリースの2作目。


「no alternative」 も良いけど、せっかくならこちらもリミックスしてほしかった。基本的な方向性は変わっていませんが、全体的にメロディを聴かせることを重視し、枯れた渋みをさらに深くしてますます味の世界に邁進してる印象。そのぶんラウド感は後退しているため一聴したときの掴みはどうしても弱いのと、前作が非常に充実した内容だったため相対的に聴き応えは落ちるかもしれません。と言うか個人的にリアルタイムで聴いてた時はそういった理由のためあまり良い印象が無かったんですが、改めて聴いてみると単純に良い曲が多いことに気付き、目から鱗が落ちるような感覚がありました。 「when the saints go marching in」 や 「follow the night light」 などのメロウ曲の哀愁には今聴いても胸を打たれるし、彼ららしい個性は決して損なわれてないと思います。ただポップで甘いだけではない、憂鬱かつ淫靡な翳りを纏った彼ら流のメロディ感覚にはどうしてもツボを突かれてしまう。彼らに関してはイマイチ不遇のまま終わってしまったバンドという印象があるんですが、今からでも興味のある方は手に取ってみては。他にはあまり見られない音だと思いますよ。


Rating: 7.4/10


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