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2000年代ベスト50選 (洋楽編)

FEAT


前回に続いて、2000年代総括の洋楽編です。


2000年代の中で俺的に一番大きかった出来事。それはガイジンの音楽を聴くようになったことです。俺が洋楽聴きだしたのって高校卒業した後という遅咲きさんでして、しかも最初は結構無理して聴いてたというか、勉強に近い聴き方してた。とりあえずそれまでに好きだった日本人アーティストが影響を受けた/最近好んで聴いてると名前を挙げてるバンドから手をつけていったんですが、やはり日本人とはメロディに対するツボの押さえ方が違うわ、歌詞が全然頭に入ってこないわで何聴いてもほとんどピンと来ず、それでも名盤とか言われてるし何とか良い所見つけようと繰り返し聴くという、まーよくある中二病みたいな感じです。しかし色んなバンドに手をつけて、解説とか読んでもう一度前に聴いたバンド聴いてみようってすると、不思議と良さがだんだん分かってくるんですよね。だんだん自分の脳内が開発されていくみたいで面白く、そっから数珠繋ぎでさらに広く浅くを地で行き続け、現在に至るという感じです。曲構成だとか音響だとか、サウンド的に面白みがあるのはやはりガイジンの音楽の方が多く、次第にほとんど歌詞が気にならなくなった。メロディや歌詞が聴きたいなら邦楽を聴くという感じで、自分の中でキレイに用途分けが成されてる実感があります。


そんで2000年代の音楽シーンにおける三種の神器と言えば iTunesMySpaceYouTube なわけですが、特に最近のガイジンで MySpace のアカウント持ってないヤツはいないというほど普及してくれて、これらのお陰で細かい部分までは情報の得づらかった洋楽も深く掘り進められるようになり、数珠繋ぎにますます際限がなくなりました。大概は事前に視聴が出来るのでジャケ買い/名前買いによってハズレを引くということがほとんどなくなり、無駄金を使わなくなったので貯金が出来るようになりました (笑) 。そもそも CD というパッケージに対する愛着もだんだん薄れつつあるし、利便性が増す代わりに思い入れはやはり生まれにくくなってる、という感じですね。まーでもどの年代の作品も同等に情報が入ってくるのでどれだけ古い音楽も自分にとっては新しい発見として映るという、ゼロ年代らしいフラットな聴き方は俺としては良いことだと思うんですが。だんだん話が逸れてきましたがとりあえずこの10年で漁ってきた洋楽、その中で特にアンテナに引っかかった50枚です。




50. Mogwai 「Rock Action」

Rock Action

Rock Action

モグワイと言えばデビュー作の 「Young Team」 が代表作とされてますが、俺正直アレ聴いて寝なかったことがないんですよねー。個人的にモグワイで一番好きなのはこの作品。以前に確立したインスト・ポストロックから一歩踏み出し、シンセを用いたエレクトロニカ的アプローチが随所に見られ、また静かに燃える暖炉の火のような暖かさの 「Take Me Somewhere Nice」 、たおやかなトラッドフォーク調の 「Dial: Revenge」 といった歌モノもあり。長尺曲の 「You Don't Know Jesus」 「2 Rights Make 1 Wrong」 にしても、ラウドな爆音ではなく様々な音のテクスチャーを緻密に重ね合わせて圧倒的な音の波を生み出すという、以前とは別の優しい質感を持った叙情性。単なる静寂→轟音ばかりではないコンセプチュアルな構成で纏められた傑作です。 Dave Fridmann ならではのノイジーな反響も味方につけたダイナミックな録音もジャスト。




49. Supersilent 「6」

Six

Six

ジャンル的にはジャズということになってるみたいですが、ジャズかもしれないしプログレかもしれない、ノイズ/アヴァンギャルドかもしれないしポストロックかもしれない、ここ10年で最も静かな作品かもしれないし、最もヘヴィな作品かもしれない。その 「かもしれない」 という全ての曖昧な境界線の狭間に潜む音楽。全ての曲が即興とのことですが、シンセ、ギター、ベース、ドラム、サックスがひたすら無軌道に、互いの音を窺うような冷静さで、しかし一つ一つの音に殺気にも近い念が込められ、放たれる。音の隙間で震える空気までもアンサンブルに同化し、息の詰まりそうな緊張感が全体に張りつめ、耳を背けることを許さないほどの凄味に満ちてます。余計な味付けは極限まで削ぎ落とされ、音の鳴りの細かなニュアンスのみで全てを表現するストイシズム極まれりなサウンド。タイトル通り6曲の本作がボリューム/濃度的にちょうど良いかも。これぞ音の居合抜き。




48. Asobi Seksu 「Citrus」

Citrus

Citrus

日本人ヴォーカリストを擁するニューヨークの4人組。デビュー作では戸川純に通じるサブカル不思議ちゃんオーラが危険な魅力を放っていたのですが、それがアメリカでウケるわけがないと悟ったのか (笑) 、この2作目ではその不思議要素が後退した代わりにシューゲイザーの影響が色濃くなり、轟音ギターノイズの醸す幻惑的な甘さが全面に出てきてます。ある時は嵐のようなホワイトノイズを盛大に放出したり、またある時はクリーントーンで深い陶酔を湛えたりと柔軟に表情を変えて見せますが、甘酸っぱくポップなメロディは常に中心にあり、水の中を漂うような歌声でギターサウンドと同化していく。どの曲もそういった甘さと毒っぽさの比率が絶妙です。個人的には飛び道具っぽさ満載のデビュー作を推したいのだけど、やっぱり単純に楽曲の完成度で言えばこちらの方が上ですね。お腹一杯になるまでドリームポップの世界を堪能。




47. Efterklang 「Parades」

パレーズ

パレーズ

デンマーク出身の5人組による2作目。華やかで可愛らしいジャケとは裏腹に、音の方はシリアスで深遠なポストロックサウンドです。通常のバンド形態の枠に捕らわれず、ストリングスやホーン、ピアノ、エレクトロニクス、曲によっては澄み渡ったクワイアコーラス等も柔軟に取り入れ、重層的、空間的に曲が展開していきます。その音はクラシカルでありつつ、何処かエキゾチックな風味も感じさせ、また鮮やかでありながらも荘厳であったり、感傷的であったりもする。そんな具合に曲によって豊かに表情を変えて見せ、それが映画のサウンドトラックのように様々な場面を想起させます。夜空に溶けるような切なさが涙腺を刺激する 「Mirador」 、勇ましい力強さに満ちた 「Horseback Tenors」 、クワイア陣がクライマックス的な緊張感を演出する 「Caravan」 等々、ひどくイマジネーションを刺激するパノラマサウンドの洪水。ライブ盤も凄かったよ。




46. Dinosaur Jr. 「Farm」

Farm (Dlx)

Farm (Dlx)

オリジナルメンバーで復活後、その音は衰えるどころか新たな黄金期かとも思えるほどフレッシュな勢いを感じさせてくれている彼ら。今作でもガッツリした骨太な厚みでもってラフに掻き鳴らすアンサンブルと、その骨太さに反して 「意地でも頑張らねえ」 とばかりにヘロヘロな J. Mascis ならではの脱力ヴォーカル。またカラッとした明るさの中に何気ない切なさが滲むメロディセンス、そのメロディ以上にギターはギャンギャン弾きまくり、歌いまくり。なおかつ 「エモ」 と言うほど洗練されてない、カントリー/フォークにも通じそうな土臭く人懐っこいムード。そんなダイナソー節全開のオルタナティブ・ロックンロールの連打連打であります。それら楽曲の目指す方向に一切のブレがないのは、時代の流行り廃りとか関係なく彼らが好きで演りたいことを突き詰めて純度を高めてきた、その結果なのかなと。初見の人にもオススメ。




45. Beirut 「The Flying Club Cup」

Flying Club Cup

Flying Club Cup

アメリカ出身、 Zach Condon によるソロユニットの2作目。聴いてる間にジャズ、フォーク、シャンソン、ボサノヴァといった単語が頭に浮かぶのですが、オサレカフェ対応のクラブミュージックではありません。とても21歳とは思えないくらい情感たっぷりに歌い上げるミッドローヴォーカル、ノスタルジックな哀愁に満ちたメロディ、さらにストリングスやホーン、マンドリンアコーディオンといったアコースティック楽器がフル活用された、レトロ趣味全開のインディーポップス。躍動感あるパーカッションが効いた 「Nantes」 「Cherbourg」 、内なる情熱が徐々に広がっていくジャズナンバー 「In the Mausoleum」 等々、様々な音色による華やかさと品のある落ち着きを両立したアレンジがどの曲でも絶妙で、自然と流れに引き込んでくれる。セピア色の濃淡だけで魅せる鮮やかさと言うか、アンティークならではの良さがセンス良く表現されてると思います。




44. Fuck Buttons 「Tarot Sport」

Tarot Sport (Dig)

Tarot Sport (Dig)

ブリストル出身の2人組による2作目。所謂ノイズ/アヴァンギャルドに属する無機質な雑音をこれほどポップに組み立てた例もそうそうないんじゃないかと。色鮮やかに広がるエレクトロニカと、軋むような音で存在感を示すノイズ・コラージュ音。それら美と醜の相反する要素が大胆にぶつかり合って、ミニマルな反復を繰り返す長尺構成の中、トランシーな恍惚をひたすらに溜め込んで膨張させていく。1曲目 「Surf Solar」 というタイトルが最も象徴的だと思いますが、眩しい陽の光の中を高速で突き抜けていくような、パノラマ的な広がりと心地良い浮遊感、またアッパーな高揚感も強く感じさせてくれる。大ラス 「Flight Of The Feathered Serpent」 では本当にトランスに発展してしまって、この気持ち良さったらちょっとしたもの。7曲60分がシームレスで繋がれたコズミック浪漫飛行。ノイズは宇宙でございます。




43. Goldfrapp 「Seventh Tree」

Seventh Tree

Seventh Tree

ロンドン出身の男女デュオによる4作目。今までとまるで方向性が違うというので 「Supernature」 も聴いてみましたが、やっぱ俺は今作の方が断然好み。優しく爪弾かれるアコギと拡散するシンセやストリングスの音色が一つに溶け合い、その中からウィスパー寄りの繊細かつ伸びやかな女性ヴォーカルが浮かび上がる、鈍く暖かな陽の光に満ちた歌モノフォークトロニカです。ノスタルジックな感傷や幻想的な微睡み、時には力強い包容力も感じさせるサウンド、そこに乗るメロディには抽象的になり過ぎない明確なポップネスが宿っていて、実にスムーズに意識を引き込んでくれます。主にはアンビエント的な浮遊感がどの曲でも強いんですが、スケールの大きな昂揚感が一層強く滲み出た 「A&R」 や 「Caravan Girl」 など動的なハイライトも兼備。ジャンル云々と言った堅苦しさに寄りかかり過ぎない、単純に高品質ポップスとしてゆったり浸れる素敵な作品であります。ジャケットも素敵。




42. The NotwistNeon Golden」

Neon Golden

Neon Golden

ドイツ出身の4人組による5作目。 「OK Computer」 以降の Radiohead はやはり多大な影響力を持っていたのか、最初聴いた時は 「ドイツ版レディへか?」 と思うほど共通項が多数のギターロック×エレクトロニカサウンド。しかしながらただのパクリではござらぬ。精緻に研ぎ澄まされた電子音のテクスチャーは生音と自然な融合を見せ、本家レディへよりも楽曲展開が素直で取っつきやすい仕上がり。その一方で全体を覆う倦怠/憂鬱なムード、油断すると心の隙間に入り込んでくるダークな心地良さは一切薄まってません。表層的な手法だけ真似する輩は数多くあれど、そこから一歩踏み込んだ感情まで表現できるバンドはそうそうないはず。そもそも結成当初はパンク/ハードコアバンドだったのが、紆余曲折を経てこの音に辿りついたとのことで、そういう変遷も何だかレディへと共通してて面白いですね。あまり依存しすぎると帰ってこれなくなりそうな、危険な甘さを孕んだ鬱ポップ集。




41. ...And You Will Know Us By The Trail Of Dead 「Source Tags & Codes」

Source Tags & Codes

Source Tags & Codes

「60〜70年代ハードロックと Sonic Youth に代表される80〜90年代初頭のオルタナティブギターロックの融合」 とかいう煽り文句をどっかで見かけたんですが、確かに音を聴けばそういう風にも捉えられるのだけど、骨太な厚みを持ってラフに鳴らされるアンサンブル、アッパーな勢いとともにメロウに聴かせるグッドセンスなメロディ、そういったロックサウンドの旨みが凝縮されたようなこの作品は、俺的にはジャンルや世代といった小難しいことは関係なく、ただ純粋に 「ロックンロール」 としてストレートに響くのです。アヴァンギャルドな音響ノイズは曲間を繋ぐインタールードに留まり、朗々と叫び歌うヴォーカルにラウド感と深みを併せ持ったギター、荒々しく疾走するドラムやピアノ/ストリングスのちょっとした装飾にも旨みたっぷり。 Sonic Youth という単語が出ると脊髄反射的に身構えてしまうのですけども、実に取っつきやすくて痛快な王道ロックンロールアルバムですね。




40. Mastodon 「Remission」

Mastodon

Mastodon

次世代のメタルを担うともっぱら評判のアトランタ出身4人組。テクニカルな変拍子と手数の多さがプログレッシブな構築美を感じさせつつ、脊髄反射的に切れ味の鋭いプレイを次々と繰り出す爆裂グラインドっぷりはフィジカルな即効性も抜群。彼らは作品を重ねるごとにプログレ由来の知性を高めていくわけですが、原点となる今作ではそういった知的要素も備えつつ肉感的/本能的なアグレッションを重視しており、インパクトは申し分なしです。仰々しく圧し掛かるリフが蟻の行進どころじゃない 「March of the Fire Ants」 、徐々に視界が開けていくようなスケールの大きさを感じさせる 「Ol'e Nessie」 等々、そのラフでバーバリックな音塊の嵐はヘヴィメタルと言うよりもロックンロールが最もヘヴィ/ハードコアに進化した亜種、と言った方がしっくりくる。原始の荒野に思いを馳せるガチムチ蛮族スペクタクル絵巻。




39. Yeah Yeah Yeahs 「Fever To Tell」

Fever to Tell

Fever to Tell

ゼロ年代初頭のロックンロールリバイバルバンドとして The StrokesThe White Stripes などがありますが、その中で俺的に一番お気に入りなのがこのバンド。それはヴォーカルの Karen 嬢というキャラクターの存在が大きいからかもしれません。奇抜な衣装に奇抜な挙動で、セクシーに喘ぎヒステリックに叫ぶ。実に痛快なロックアイコンとしてカリスマ的な魅力があると思います。かと言ってバックの演奏が弱いというわけではなく、ベースレスでスカスカしてるのにやたら生々しくて刺々しい瞬殺パンク/ロックンロールチューンの応酬。 「Date With The Night」 「Tick」 とか無条件で血が滾りますよ。しかし巷で名曲名曲としきりに絶賛されてた 「Maps」 はこちらの想像と違い、花が咲くような穏やかさで歌声が立ち昇る、暖かく感傷的なラブソング。実はこういったリリカルなメロディセンスに長けてるというのも重要なエッセンスなのですね。双方まとめて強く支持したい。




38. James Blackshaw 「Litany Of Echoes」

Litany of Echoes (Dig)

Litany of Echoes (Dig)


ロンドン出身のギタリストによる6作目。基本は12弦アコースティックギターが一番の幹にあり、装飾としてピアノもしくはヴァイオリン、あと環境音的ノイズが加わる程度のシンプルなインストゥルメンタル。なのにどの曲もひたすらに深く、物悲しい。絶え間なく爪弾かれるアルペジオはミニマルな反復を執拗に繰り返し、その中で少しずつ音を足し引きしながら感情の色を移ろわせる。その様はひどく幻惑的な恍惚を湛えつつ、思わず背筋を正してしまうほどのストイックな緊張感に貫かれていて、ひどく意識を惹きつけられます。優しさと険しさ、冷たさと暖かさ、陶酔と覚醒、そういった相反する感情が複弦の隙間からポロポロ零れ落ちてくるかのよう。冒頭 「Gate of Ivory」 とラスト 「Gate of Horn」 が対を成すコンセプチュアルな統一性もあり、まさしく一つの確固たる世界を作り上げてます。収録曲の半分が10分超だし敷居の高い作品ではありますが、脳ミソの洗濯には最適かと。




37. Paramore 「Riot!」

Riot

Riot

ちょうど Avril Lavigne を彷彿とさせるガールズパンクポップ。演奏はタイトでガッツリとした厚みがあり、メロディは爽やかに突き抜けててキャッチーという。ヴォーカルの Hayley Williams はまだ20歳という若さながら、未熟さなど感じさせず何とも堂々とした歌いっぷり。芯がありパワフルに伸びる声で、フレッシュな勢いに満ちてます。またどの曲もサビを引き立てる形でしっかりしたメリハリをつけ、勢いのある曲でもバラード曲でも引き込む流れを保ってて凄く聴き応えがある。全曲3分台なのもスカッと聴けて良いですしね。あえてお気に入りを挙げるなら、メロディの甘酸っぱさがバシッとくる 「That's What You Get」 、シリアスサイドの切れ味が冴えた 「Crushcrushcrush」 かな。いやしかしどの曲もストレートに響いてくる。真夏の野外スタジアムがよく似合う的な、そういう分かりやすい子供味が相変わらず大好きな俺です。




36. Prefuse 73 「One Word Extinguisher」

One Word Extinguisher (WARPCD105)

One Word Extinguisher (WARPCD105)

神経質なまでにブツ切りにカットアップされたエレクトロビート/シンセ、ゲスト陣のラップ/ヴォーカルが自由奔放に散りばめられ、異形のアブストラクトヒップホップを構築。その手法自体はデビュー作 「Vocal Studies + Uprock Narratives」 の時点で十分に確立されていましたが、このセカンドではその手法をさらにポップに推し進め、小気味良いアタック感とルーズに躍動を伝えるグルーヴ、全体をうっすら包むメロウなアンビエント感、それら全てが絶妙のバランスを崩すことなくキャッチーさ2割増しで迫る痛快作となってます。全ての音がリズムとメロディを同時に担ってる感じと言うか、フリーキーなノイズすらもグルーヴを生み出す楽曲の一部として機能してる気がする。勢いに満ちた鮮やかさで軽快なスタートダッシュを切り、所々ジャジーな小技も効かせてたりと、空間的に様々な角度から鼓膜を挑発するエレクトロサウンドの飛礫iPod に突っ込んで街中歩きながら聴きたい系ですね。




35. The Mars Volta 「De-loused In The Comatorium」

De-Loused in the Comatorium

De-Loused in the Comatorium

At The Drive-In という形容も必要ないほどこのバンドでの個性と評価を確立したデビュー作。従来のエモ/パンクスタイルから作曲スタイル、演奏テクニックにおいて一気に飛躍を遂げ、長い尺の中で真っ直ぐに響くエモーショナルなヴォーカル、ラテンの血を感じさせる情熱的な躍動感とその裏で仄かに流れる哀愁、アンビエント/ノイズによる不穏な静寂、それらを緻密に繋ぎ合わせてコンセプチュアルで壮大なサウンドスケープを繰り広げています。硬く引き締まった音の鳴りが凄まじい手数で乱れ飛び、一音一打が鋭角に突き刺さるそのアンサンブルは常に緊張感を緩めない刺激に満ち、転調や変拍子だって腹一杯になるくらいてんこ盛り。本能的であり変態的、なのだけどひどく冷静で知的な印象も同時に受ける。インテリジェンスとアグレッションが高次元で噛み合った特濃盤。ただこの作品以降はインテリ面が肥大して無駄に難解になりすぎな感が否めないんですけどね。




34. The Dillinger Escape Plan With Mike Patton 「Irony Is A Dead Scene」

Irony Is Dead Scene

Irony Is Dead Scene

4曲のみの EP 扱いですがあまりに素晴らしいので挙げちゃいます。カオティックハードコアの旗手 DEP と、ヘヴィロック界の奇才マイクパットンのコラボ作。再生した瞬間から怒涛の勢いで雪崩れ込む変速ハードコア、そこに多彩なヴォーカリゼーションを駆使するパットン御大が暴れ馬をいなすロデオのように乗っかり、楽曲に強烈なフックを与えて一気に引き込んでくる。 「Hollywood Square」 では 「ペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ」 、 「Pig Latin」 では 「チンガ!チンガ!キャキャキャキャキャキャー」 、 「When Good Dogs Do Bad Things」 では 「ヘーイキリキリキリキリキリキリキリ」 がそれぞれ聴き所。ラストの Aphex Twin 「Come To Daddy」 の人力カヴァーが一番まともに聴こえるから不思議だ。バンドのアグレッションに満ち満ちた肉体性と狂気的ユーモア、双方の個性の美味しい部分が完全に合致したコラボの理想形です。変態×変態=奇跡。




33. The Goslings 「Grandeur Of Hair」

Grandeur of Hair

Grandeur of Hair

闇。




32. Gang Gang Dance 「Saint Dymphna」

Saint Dymphna

Saint Dymphna

バンド名からダンスプロパーな4つ打ちテクノサウンドを想像したのですけど、そんな単純なものではなかった。スペーシーに浮遊/拡散するシンセ類、トライバルな躍動感のパーカッション、ヒップホップやハウス等のクラブミュージック要素、そういった様々な素材を組み合わせて独創的な音世界を構築してます。幻想的でありつつプリミティブでもあり、ジャンクに音を混ぜ合わせたりなど遊び心もそこかしこに仕掛けられ、なおかつ全体はエキゾチックなメロディで覆われ非常にポップでもあるという、まあ一言で形容しにくいことこの上ない。シームレスで繋がれた全体の流れが上手く起伏に富んでるのと、パズル感覚で散りばめられた個々の音がどれも絶妙なニュアンスを含んで鳴らされてるので、常に刺激を感じつつスムーズに聴き通せます。まるで紀元前と近未来と現代が知的かつダイナミックに繋がった 「ここではない何処か」 を気ままに時空旅行してるような一大アートポップ傑作ドドーン!




31. Battles 「Mirrored」

Mirrored (WARPCD156)

Mirrored (WARPCD156)

異形の民族行進曲 「Atlas」 を先に聴いて、その時点でかなりの手応えはありました。ハードコア出身ならではの硬く厳つい音の鳴り (特にドラム) がバンドの強靭な骨格をアピールしつつ、様々なフレーズをパズルのように複雑に組み合わせて展開していくマスロックスタイル。この作品ではそういった従来の路線を継承しつつもストイックな作風からは脱却し、禁じ手と思われていたヴォーカルの効果的な導入、またシンセ/エレクトロニクスの比率も大幅に増え、よりカラフルでスケール感のある世界観を表現しています。どこぞの民族旅団が航海に出て道なき荒野を突き進んでいくような、全体に一本筋の通ったトライバル感覚。グルーヴ感や展開の切り替えも実に絶妙で、長尺であっても強く引き込む起伏に富んだ流れが素晴らしい。ガチガチに計算ずくにはならずユニークなアイディアを柔軟に取り入れ、所謂マスロック勢の中でも彼らが頭一つ抜けた存在であることを示す傑作です。




30. Hot Chip 「Made In The Dark」

Made in the Dark

Made in the Dark

ロンドン出身の5人組による3作目。コミカルで無機質なジャンクフードみたいなテクノポップサウンドです。そのダンスグルーヴと程良くスウィートなメロディがひたすらに心地良く、B級テイストを塗したアイディアも窓口を広げるのに十分に貢献。仕掛け満載の飽きさせない作りになってて思わず引き込まれてしまう。鳴らしてる音自体は脱力系なのに勢いある曲ではしっかりダンサブルなグルーヴを維持しており、インテリではあるけども身体を揺さぶるフィジカルな魅力も兼ね備えていて、決して頭でっかちな違和感は感じさせません。特に 「Ready for the Floor」 「One Pure Thought」 といったキャッチーなキラー曲はかなりのめり込んで聴けました。また逆にしっとりチルアウトしたジャジー曲 「Made in the Dark」 「In the Privacy of Our Love」 も全体の流れの中で良いアクセントになってる。色んな意味で一筋縄ではいかない面白さの詰まった作品だと思います。




29. Anaal Nathrakh 「Echaton」
28. Infernal War 「Redesekration」

Eschaton

Eschaton

Redesekration

Redesekration

イギリスの2人組とポーランドの5人組。2000年代半ば頃からは悪い知人の影響で (笑) デス/ブラックメタルも少しずつ聴くようになったのですが、その中で特別気に入ったのはこの2枚。 「Echaton」 は超高速マシンガンドラムと濁流のように歪んだギター、この世の悲しみ憎しみ恨みつらみを全て背負い込んだかのような絶叫が止めどなく溢れ、全身の気力を振り絞った末に放たれるメロディの勇壮さ、リフフレーズの物悲しさが真に迫る。 「Redesekration」 はそういったメロディの泣きこそないものの、突進しながら自在にうねりを見せるブラストビートを筆頭に、物理的な速さだけではないメタルグルーヴの 「体感速度」 が半端なく気持ち良い。前者は精神性、後者は肉体性を重視してる趣がありますが、まーいずれにしても死よりも速いスピードと業よりも重いヘヴィネスが最低かつ最高なのには変わりない。デス/ブラックがいかに陰惨で暴虐的でガイキチなジャンルであるかを十二分に体現する極道盤です。日頃の鬱憤をキレイサッパリ晴らしてくれる2枚。




27. Basement Jaxx 「Rooty」

Rooty

Rooty

何処をどう切っても極彩色な超享楽志向ハウスミュージック。煌びやかな R&B ヴォーカル陣と自由奔放に散りばめられたシンセ/ヴォイスの断片、それらが陽気で時に甘酸っぱい激ポップメロをさらにカラフルに装飾。また弾力があってネチっこいダンスビートとブリブリ極太なベースラインが抜群のコンビネーションで迫り、切なさが涙を誘いつつグルーヴに精力注入してスポーティに汗を発散させる。ついでにクラブミュージック特有のセクシャルなムードやラテン/サンバ方面の刹那的情熱も仄かに漂い、上から下まで身体中ビショ濡れにさせる勢いの色気ムンムン度。超キャッチーなキラーチューン 「Romeo」 や 「Where's Your Head At?」 等々、どれもこれも即効性抜群で身体にビシバシ響く単純明快な作り。しかしこんなチャラくてケバケバしいのが名盤扱いで良いのか?楽しければ何でも良いんです。





26. Marissa Nadler 「Little Hells」

Little Hells

Little Hells

ワシントンのシンガーソングライターによる、2年ぶりの4作目。これの前作は全曲アコギ弾き語りを基調とした作品だったんですが、それに比べると今回は随分とアレンジの幅が広がってます。もちろん従来の流れを踏襲したフォーク曲も幾つか健在ですが、オープナー 「Heart Paper Lover」 ではくぐもった響きのウーリッツァー、 「Mary Come Alive」 ではプログラミング音に生ドラム×エレキギターといったロックバンド編成、 「The Hole is Wide」 では歯切れ良く鳴らされるピアノと、アイディアとしては実にシンプルなものですが、そういったアコギ以外の楽器がとても効果的に導入されてる。なので聴きやすさが増した印象を受けるのですけども、だからと言って本来の情念深さが薄らいだわけでは全然なく、むしろその変化によって情念が即効性を増してより伝わりやすくなってます。優しい歌声が真綿で首を絞めるようにゆらりと纏わりつく、果てしない業の深さにただ陶然とするばかり。




25. Bat For Lashes 「Two Suns」

Two Suns-Digipak

Two Suns-Digipak

イギリスはブライトン出身、 Natasha Khan によるソロユニットの2作目。80年代ポップス風の薄いシンセ音やエキセントリックな佇まいから Kate Bush の影響を感じたり、エレクトロニクスと生演奏を融合させて幻想的/呪術的エキゾチシズムを醸すという点から Gang Gang Dance を想起したりしますが、それらが曲によってトリッキーとも言えるほど多彩に表情を変えていたのに対し、こちらは透明感のある歌声と空間的な音処理、シリアスさと静謐を湛えた空気によって全体のカラーがストイックに統制された作り。時には荘厳な聖性すら感じさせるほどの緊張感があり、聴いてるうちにそのディープな内面世界へズブズブと飲み込まれていくかのよう。その一方で全体に流れる高潔なポップ感、ニューウェーブ由来のキッチュな感覚が楽曲の雰囲気を重苦しくなりすぎない、ポップスとして比較的聴きやすいものにしてるかも。深遠かつスピリチュアルな 「ここではない何処か」 への彷徨。




24. Deerhunter 「Microcastle/Weird Era Cont.」

Microcastle

Microcastle

掴み所のない暗黒サイケデリアムードが印象的だった 「Cryptograms」 に比べると今回は驚くくらいポップ。暖かくて牧歌的、なおかつ頭に残りやすいフックを兼ね備えたメロディがゆらりと歌われ、それをシューゲイザー由来のディープなギターノイズで優しく包み込み、この上なく甘美に仕上がった高品質ポップソングがズラリ。でも毒気が抜けて日和ったかと言えば全然そんなことはなく、むしろ病状が悪化して脳内がお花畑にトリップしたかのような不安定さが潜んでる。嫌なうわ言呟いてそうな死に顔ジャケのせいか、どうしようもない無気力さや不穏な疑念、悪意なんかを裏側に感じずにはいられない。特にタイトル曲 「Microcastle」 や 「Agoraphobia」 、比較的アッパーな 「Nothing Ever Happened」 「Operation」 なんかも暖かい瘴気に満ち溢れてて最高です。甘さと毒気がドロドロとマーブル模様を描くサイケポップ集。こんなの聴いてるからますます引きこもりになるんだっつーの。




23. Mew 「Frengers」

Frengers

Frengers

デンマーク出身の4人組。オルタナティブ/インディロックの体裁をとりながら、中性的なハイトーンヴォイスと透明感に満ちたメロディ、全体に漂うミステリアスで冷たいムードは北欧出身らしいアイデンティティをしっかり感じさせます。ナイーブで線の細い印象だけど演奏自体は意外に骨太で芯があり、切なさを纏いながら力強さを見せるドラマチシズムには普遍的な魅力が宿ってる。またシンセ/ピアノの効果的な導入やそこかしこに仕掛けられた拍子の変化も聴き応えを増強。幕開けを飾る 「Am I Wry? No」 は彼らのアンセムと成り得る名曲だし、直向きな強さを感じさせる 「Snow Brigade」 、あまりの儚さ/美しさに陶然とする 「Symmetry」 、ゲストに歌姫 Stina Nordenstam 降臨の 「Her Voice Is Beyond Her Years」 など、とにもかくにも名曲揃い。同じオルタナロックでも出身国のフィルターを通すだけでこれほど個性的になるのかという目から鱗な傑作。ロックに方言は大事。




22. The Music 「The Music」

The Music

The Music

最近は勢いが落ちに落ちて Big In Japan ですらもなくなってしまった感がありますが、このデビュー作を初めて聴いた時は衝撃的でした。単純明快なフレーズを朗々と叫び歌うヴォーカル、サイケデリックな広がりとハードロックの豪快さを兼ね備えたギターと、うねるようなダンスグルーヴを叩き出すことのみに注力したリズム隊、それらがまるで渦を巻きながら立ち昇るように放たれるアンサンブル。そのやけっぱちな初期衝動の中には若さ故の青さやナイーブさも感じられますが、その場の振動する空気まで封じ込めたような音像の中に猪突猛進なパワフルさと緊張感に満ちたムードが貫かれ、十分な演奏力でもって強く身体に響いてくる。俺は快活に弾けるパーティーチューン 「Float」 と男らしいシリアスな泣きが冴える 「Getaway」 が特に好きですが、それ以外にもライブで沸点越えること必至のキラー曲がズラリ。楽しいことだけに夢中になれた青春の一枚。




21. Animal Collective 「Merriweather Post Pavilion」

Merriweather Post Pavilion

Merriweather Post Pavilion

彼らを初めて聴いたのは 「Feels」 で、その時は確かに個性的で面白い音楽だとは思ったものの、そこまで深くハマらなかったんですね。しかし久々に聴いたこのアルバムはかなりガツンときた。フリークフォークの代表格として知られてると思うんですけど、ここではむしろテクノ/ニューウェーブの要素が強いです。濃密な霧で包み込むかのごとくサイケデリックな音響処理を全体に施し、多彩なシンセ音が大きな口で飲み込む魔物みたいに目まぐるしく飛び交うのですが、その奥から浮かび上がるメロディ部分は以前よりさらにポップに突き抜けた感がある。牧歌的で陽気な躍動感の 「My Girls」 「Brother Sport」 、ほんのりと感傷的な郷愁を滲ませる 「Daily Routine」 「Guys Eyes」 、飛び抜けてフリーキーさが際立った 「Lion in a Coma」 など、熱帯密林の奥地にひっそり佇む桃源郷のような、サイケデリアが泉のように湧き立つ総天然色ポップ。




20. Fall Out Boy 「Infinity On High」

Infinity on High

Infinity on High

彼らのような US チャート直撃みたいなエモ/パンク系って聴かず嫌いしてた所があったんですが、そんな先入観やらを打ち砕くくらいのパワーが感じられました。バンドサウンドの骨太な厚みと突き抜けたポップさ、双方が最高の形で噛み合った傑作。とにかくどの曲もメロディが良く、フレッシュな勢いがある。どの曲においてもパワーが迸ってて、単純に聴いてて凄く気持ちが良いんですね。また 「This Ain't a Scene, It's an Arms Race」 の R&B 風打ち込みビートや 「Hum Hallelujah」 のハレルヤ大合唱、 「Thnks fr th Mmmrs」 のオーケストラ&ラテンアコギ、さらに 「The Carpal Tunnel of Love」 ではスクリーモ絶叫まで導入してたりと、アイディアもそこかしこに満載。そのどれもがキャッチーさを助長させるフックとして機能してて、ことごとく痛快にヒットしてくる。まさに旬の勢いが良く出てる、脂の乗ったアルバムだと思います。ただ打ちのめされるほかない。




19. Godspeed You! Black Emperor 「Lft Yr. Skinny Fists Like Antennas To Heaven」

Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven

Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven

2枚組、全4曲、合計80分。所謂ポストロックとカテゴライズされる作品の中でも特に敷居の高い内容なはずですが、この作品は眠気を誘うどころか意識を覚醒させ、その音の中にグイグイと惹き込む磁力の強さがある。バンドサウンドとオーケストラが絶妙の比率で混じり合い、ゆっくり嵐が通り過ぎるように何分もかけて大きなクレッシェンド/デクレッシェンドを描き、サイケデリックな反復からここぞという場面で劇的な転換を見せる。ストイックな緊張感を一切緩めることなく音の収縮→爆発を繰り返す、その様はひどくカタルシスに溢れ、確固たるポリシーを感じさせます。既存のロックの枠組みから脱しようとする音楽的野心と、表現したい世界に向かう照準のブレの無さ。ロマンチックな感傷や甘い幻想性などは無く、シリアスに研ぎ澄まされた音の波がひり付くような悲哀とポジティブな力強さを生み出す、ひどくリアルな音。ポストロック勢の中ではやはりこれが極致だと思います。




18. The Knife 「Silent Shout」

Silent Shout

Silent Shout

スウェーデン出身の兄妹ユニット。そのエレクトロニカサウンドは80年代風のチープな感触を残しながらも、ひどく低熱に研ぎ澄まされた緊張感で貫かれてます。音数少なめで空間的な隙間の多いミックスや、淡々と過ぎていく曲調、その中に浮かぶメロディは何処となくエキゾチック風味。そしてそれを歌う女性ヴォーカルはヴォコーダーで加工され、悪戯好きな幽霊が迷い人を嘲笑うかのような薄ら寒さがあります。表題曲 「Silent Shout」 は4つ打ちのハウス曲なんですが、その4つ打ちはグルーヴィに踊らせるためではなく、そのリズム独特のクールネスをホラー感の演出に使うためという。その他の曲もアガる要素や遊び心があるとしてもその裏側の、聴き手の背筋を正させるダークなムードで浸食されていく。中心のメロディが仄かながらもしっかりポップなのと、必要以上に飾り立てないアレンジがこちらの妄想をかき立てる余白を残してる感じで、その歪んだ美しさにグイグイ惹かれました。




17. Antony And The Johnsons 「The Crying Light」

Crying Light

Crying Light

まずその声。男性的な渋みを含みつつ女性的な丸みも帯びており、大らかな包容力、か細く揺れる繊細さ、温もりや悲しみ、それらを一度に内包したような声。穏やかな中にも豊かに情感が込められた歌で、そこには思考を奪われてしまうくらいのパワーが確実に存在します。ジャズ/シャンソン調の楽曲や至極シンプルな演奏陣がさらにその声を引き立て、静かな空気の中に濃密な音世界を構築してる。それで歌詞が気になって調べたら、 「私を四分に切り裂き、その隅に打ち捨てよ」 といったヘヴィな場面があれば、 「太陽が目を開き、大地に光が満ち溢れた」 などの壮大な場面も見られ、そこでは深い絶望や生きようとする力強さ、そんな人間の業を美しくリリカルに表現した内容でさらに心酔しました。余計な装飾は一切排除し、感情的な歌というものを純粋に突き詰めた極上の一品。個人的には前作 「I Am A Bird Now」 よりもこちらの方がシンプルなぶん格調高さは上じゃないかと。




16. Meshuggah 「Nothing」

Nothing

Nothing

スウェーデン出身の5人組。ジャンル的にはヘヴィメタルですが爽快な泣きメロやファストな心地良さど微塵も無く、かと言ってデス/ブラック勢のようにジメジメしたダークな怨念でもない、他のバンドとは確実にヘヴィの質が違う強烈なインパクトを持っています。ギッチギチに硬い音でポリリズムを演ってない時間はないくらいに変拍子満載の超絶テク。大蛇がビタビタのたうち回るような気色の悪いうねりを見せながら、計算し尽くされた無慈悲なヘヴィネスを叩きつける。時間を歪ませ、空間を歪ませ、次第に聴き手の感覚まで歪ませていく拷問のような楽曲群。しかしこれが聴けば聴くほど味の出る奇妙な中毒性に満ちていて、ギターサウンドひとつ取ってもその激しいだけではないテクスチャーの奥深さが心地良く脳髄に突き刺さる。自ら望んで何度もこの無間地獄に没頭してしまうのはどうにかしたいです。悪党は知性を持ったタイプが一番タチが悪いとよく言いますがまさにそんな感じ。




15. Portishead 「Third」

Third

Third

ブリストル出身のトリップホップ代表格が11年越しに放った3作目。中身は長いブランクを物ともしないほどの陰鬱さで充満しており、聴き手を身体の芯から痺れさせてくれます。静かに脈打つようなビートは極めてシンプルながら密かに躍動的なグルーヴを携え、そこに被さるギターは優しいアルペジオで流れたり薄汚く歪んだ音を叩きつけたりと柔軟に表情を変えて見せ、その全ての音色/質感が曲のダークな雰囲気を引き立てるのに十分に貢献してる。そして女性ヴォーカルを中心に立てることで歌モノとしてメリハリをつけているんですが、この歌もまた灯りのない密室で独り咽び泣くような負の情念に満ちていて、何だか聴いてるこっちが呪われそうな気分になってくる。疑念とか信頼とか孤独とか繋がりとか希望とか絶望とか、そういった相反する感情を同じ場所に11年溜めこみ続けて吐き出した、真綿で首を絞めるように迫る強烈作。




14. Franz Ferdinand 「You Could Have It So Much Better」

You Could Have It So Much Better

You Could Have It So Much Better

所謂ニューウェーブ/ポストパンク・リバイバルの立役者ですね。ジャキジャキ刺さるようなギターの質感、ファンキーかつディスコで踊れるグルーヴ、そういった70〜80年代ポストパンクの要素に現代版インディロックのフィルターを通し、なおかつ洒脱なメロディセンスでもってポップでキャッチーに生まれ変わらせた知能犯。一般的には 1st の方が評価が高いですが、個人的にはこの 2nd の方が好き。 1st よりも全体的に音の迫力が強化されて勢いがつき、メロディもよりオープンな即効性を持って響いてきます。底抜けに楽しいパーティアンセム 「Do You Want To」 を筆頭に、パンキッシュとも言えるアッパー感が痛快な 「This Boy」 「Evil And A Heathen」 「You Could Have It So Much Better」 等々、ポップバンドとしてのスケールを順当に押し広げた快作です。当時 iPod 買いたてだったので一番に取り込んでよく聴いてました。




13. Muse 「Absolution」

Absolution

Absolution

俺が彼らを初めて聴いたのは 「Showbiz」 で、その時の印象は Radiohead 「The Bends」 をさらにケレン味たっぷりに拡大解釈したオペラロック、なのだけど本家ほどの良さは感じられずスルーしてたんですね。しかし数年経ってから今作を聴いた時は本当にガツンとやられた。演ってること自体はほとんど変わってないのだけど、ドラマチックな情感に満ちたメロディの質、一音一音が重く響くアンサンブルの強靭さ、それらが合わさって構築する壮大なスケール感、それら全ての面において段違いにレベルアップを遂げています。ナイーブで憂鬱な翳りとパワフルな躍動が交錯し、ミュージカルかと思うほどシンフォニックな広がりを見せるサウンドは、確信に満ちたポリシーに貫かれていて有無を言わさず捩じ伏せるほどの迫力があります。ドラマチシズムを表現するということに対して一点の曇りも無く直走る、ミューズ流シンフォニックハードロック一大抒情詩。




12. Converge 「Jane Doe」

Jane Doe

Jane Doe

パンク/ハードコア由来のフットワークの軽いビート感、血肉に響く荒々しさを何処まで極められるか。アグレッションを一切薄めないままで楽曲の形をどれだけグシャグシャに歪められるか。そういったストイックな命題に真っ向勝負で挑み、見事カオティック・ハードコアとしてそのスタイルを確立した傑作です。卓越した演奏力をもって複雑な展開を目まぐるしくこなしていくのですけども、それが悪い意味でのプログレアート的な頭でっかち状態には決して陥らない。断末魔のようなシャウトは勢い任せなだけじゃなく悲痛さと説得力を持って響き、ブレーキの外れた高速曲ではもちろんスロウ曲での薄汚い音の吐瀉っぷりも凄まじく、緊張感が緩む瞬間が一切見当たらない。だけど不思議とマッチョな印象はあまり受けず、心身を削りながら爆音の放射を続けるその様は今にも消え入りそうな不安定さやナイーブさがあり、時には美しさすら感じます。焼け付くようなリアルな痛みに満ちた劇薬盤。




11. Daft Punk 「Discovery」

Discovery

Discovery

ダフパンに関しては06〜07年のピラミッド大作戦ライブが凄まじ過ぎだったので、アレを体験した後だとオリジナル作がライブ用のサンプル音源集みたいに思えてしまうけど、それはさておき。 「Homework」 の時点で既に評価を確立してたと思うんですが、この2作目ではそのハウスという枠組みを飛び越えて、広義のテクノ/ニューウェーブすらも越えて、単純に 「ポップ」 として響く普遍的な魅力を獲得してます。みんな大好き 「One More Time」 を筆頭に、人懐っこく憎めないB級テイストで脱力を誘う 「Digital Love」 「Harder, Better, Faster, Stronger」 等々、ダンスフロアどころかテーマパークや茶の間に流れてても違和感ない、アゲアゲのダンスグルーヴと超スウィートなメロディに満ち溢れたエレクトロパーティポップの雨霰であります。刹那的な快楽とクセになる甘酸っぱさ、終焉に向かう時の感傷までも内包した、まるで一夜のうちに過ぎ去ってしまう煌びやかな夢のような作品。




10. Primal Scream 「XTRMNTR」

XTRMNTR

XTRMNTR

アルバム毎に様々な音楽を貪り食ってきた彼らの、2000年代一発目にして90年代の総決算、集大成的なアルバム。ガレージパンクバンドとしての出自を示す 「Accelerator」 がある一方で、テクノ/トランスに思うさま傾倒した 「Swastika Eyes」 やヒップホップ調の 「Exterminator」 「Pills」 、ダブ的な奥行きのある音像の 「MBV Arkestra」 など、過去の経験をフルに生かした引き出し全開のヴァラエティがありつつ、その全てがキナ臭くアグレッシブな瘴気に満ちている。パンクやテクノの切れ味とダブ、サイケデリックの不穏な奥行き、どちらも 「毒気を出す」 という点では有効である、その本質を射抜いた上で巧みに融合させた傑作。寄生虫だの梅毒だのシックだのファックだの辛辣な表現ばかりを叩きつけ、他人を道連れにする勢いで内省の袋小路に迷い込み、その後に 「Keep Your Dreams」 なんて歌われたらグッとこないわけにはいかんでしょう。個人的には 「Screamadelica」 よりもこっちの方が断然好き。




9. Rodrigo Y Gabriela 「Rodrigo Y Gabriela」

Rodrigo Y Gabriela

Rodrigo Y Gabriela

メキシコ出身、ロドリーゴさんとガブリエーラさんによるデュオの2作目。初めて聴いた時はクソ格好良くて鼻血出るかと思った。基本的に2人のアコースティックギターのみという至極シンプルな編成にも関わらず、そこから繰り出される音のエネルギーは凄まじいものがあります。とりあえず2人とも超絶バカテクの持ち主なのですね。片方は刹那的な情熱迸るフラメンコ風メロディをこの上なく流麗に聴かせ、もう片方はボディ全体を駆使してトライバルなリズムをガッシガッシと打ち鳴らす。ギターの持つポテンシャルを最大限に発揮した演奏で、そこから生まれる強烈な躍動感に満ちたグルーヴ、表現する感情の奔流に一撃で飲み込まれてしまいました。元々 HR/HM 畑出身ということで Led ZeppelinMetallica のカヴァーも入ってますが、どちらも原曲の持つ勇壮でドラマチックな感覚を完全に自分のモノとして消化しており、メタルでありフォークでありフラメンコであるという凄えとしか言いようのない状態。血沸き肉踊るワールドミュージックのエクストリームな形のひとつです。




8. The Arcade Fire 「Funeral」

Funeral

Funeral

彼らを初めて知ったのは2005年のサマーソニック。当時何の予備知識もなしに見た俺は、楽曲の素晴らしさに加えてメンバーが楽曲によって目まぐるしくパートチェンジを繰り返す大所帯編成の賑やかさ、またシンバルに布巻きつけて振り回したり、セットによじ登って鉄骨を打ち鳴らしたりといった破天荒なパフォーマンスに一撃で撃ち抜かれました。それでサマソニ終了後には速攻で買いに走った本作。ピアノ、ストリングス、木琴、アコーディオンなどといった様々な楽器を導入して細部まで凝りつつも、全体の印象は風通しが良くてポップ。ロックバンドというよりトラッド楽団のような牧歌的な空気感を漂わせつつ、どの曲も壮大なスケール感やポジティブな力強さを感じさせる。特に 「Wake Up」 「Rebellion (Lies)」 に至っては分厚いコーラスがミュージカルのクライマックスの様な高揚感。タイトルは 「葬式」 だけど湿っぽい悲愴感のみには終わらず、豊かに悲喜交々な感情が込められドラマチックなカタルシスに溢れたインディポップの最高峰です。まるで祈りのような崇高さすら感じられる。




7. Queen Adreena 「Taxidermy」

Taxidermy

Taxidermy

Daisy ChainsawKaty Jane Garside と Crispin Gray を中心とする4人組。オルタナ/グランジ由来の鋭く突き刺さるラウドサウンドと、あどけなさも妖艶さも狂気も同居した Katy 嬢の演劇的ヴォーカルを中心に、激しさの中にディープな陰翳を孕んだゴシックパンクを繰り広げているのですが、このデビュー作は後の作品に比べるとパンクよりもゴシックの方に重点が置かれており、彼らの世界観がよりシアトリカルに表現されてます。某マンソンみたいにパワフルでゴージャスなスタイルではなく、身体を麻痺させるような不穏さ、生々しい低熱の空気が全体を支配してる。夜の淵で悪夢に魘されてるようなアンビエント曲はもちろん、アグレッシブな曲でも裏側には背筋を正すような緊張感を孕み、歪んだ美意識に貫かれた漆黒の闇を展開してます。 「I Adore You」 の愛情、 「Pretty Polly」 の童話的な素朴さも彼らのフィルターを通せば全て闇を彩る装飾の一つと化す。俺がゴスいものを聴くときに自分の中である種の基準にしてる作品です。




6. System Of A Down 「Hypnotize」
5. System Of A Down 「Mezmerize」

Hypnotize

Hypnotize

Mezmerize

Mezmerize

アルメニア・コミュニティ出身の4人組。その出自からポリティカルで辛辣なメッセージも多分に含まれているのですが、そういった思想面よりもまずは音の格好良さが直球で響く。ポルカ風のエモーショナルな哀愁を湛えたメロディ、緩急織り交ぜながら切れ味鋭いアグレッションで迫るヘヴィネス、そしてそこかしこに仕掛けられた人をナメきってるかのようなギャグユーモア、それらが三位一体となり頭に一発で残る強烈なキャッチーさをもって身体を突き上げ、胸を打ってきます。2部作として分けられた本作は 「Hypnotize」 がヘヴィ、 「Mezmerize」 がポップの方に比重が寄ってる感じですが、いずれにしても民族的でハードコアで呪術的でバカっぽくて、キメるべき所では最高にキマりまくってる。合計23曲というボリュームの中に様々なアイディアが溢れており、彼らの音楽を構築する数々の要素全てがバランス良く噛み合って、一切の隙を見せない充実っぷり。頂上まで登りつめたことを実証する濃厚作です。一度でいいからライブ見たかった。




4. A Whisper In The Noise 「As The Bluebird Sings」

As the Bluebird Sings

As the Bluebird Sings

ミネアポリス出身の6人組。 Steve Albini が絶賛しており、次作 「Dry Land」 では実際にプロデュースを手掛けたという入れ込みよう。ストリングス+ピアノ+リズム隊という編成が基本にあり、場面場面で表情を変えるヴォーカルはすぐさま脳内映像を喚起させる程にシアトリカル。どの曲にもひたすら退廃的でゴシックな影が落とされており、陰鬱とした病的ムードが全体に蔓延してるわけですが、表題曲 「As The Bluebird Sings」 や 「Hell's Half Acre」 では雲間から光が差し込むようにメロディがスッと挿入されたり、 「Through Wounds We Soon Will Stitch」 ではドラマチックなピアノが緩やかに広がったりと、かなり甘さ控えめですけども不意にメロディアスな要素を増して白黒のグラデーションを生み出すという手法が凄く効果的。クラシカルな面もあって妙に耳に馴染みやすく、けれども緊張感は一瞬たりとも途切れない。その醜くも美しい音世界の構築っぷりに少なからず痺れさせられました。




3. Kila 「Luna Park」

Luna Park

Luna Park

アイルランドの至宝。フィドルやフルート、ティンホイッスルなどのアコースティック民族楽器を用いた所謂ケルト/アイリッシュトラッドが根っこにあり、ジャンル特有の土臭く乾いた哀愁を纏ったメロディや涼やかで幽玄なムードがとても心地良く響く。ゲール語で朗々と歌い上げる男性ヴォーカルも非常に味があり、それだけでも聴き応え十分なものですが、この大所帯バンドはそれに留まらずファンク/アフロビートのダンサブルな躍動感、ガシガシ展開を繰り返すプログレ的な長尺構成、またラテン風味の刹那的な情熱やポストロックの音響性までも同じ釜の中にブチ込み、ワールドミュージックの枠に留まらないカオティックかつポップな一大音楽スペクタクルを展開しています。情感豊かな旋律をしっとりと聴かせるフォーク曲が素晴らしいのはもちろん、 「Glanfaidh Me」 「Gland Hotel」 といったアッパー曲では正しく彼らの本領発揮。ケルトの哀愁とリズムの肉感的快楽、それらが交わって圧倒的なパワーを生み出す、まるで幻想の国の祭囃子のような人力トランス曲には有無を言わさずノックアウトされる。ケルトであることの矜持と貪欲な探求心がひしひし感じられる名盤。




2. Slipknot 「Iowa」

Iowa

Iowa

極上の移動式グロテスクエンターテインメントショウ。耳を劈くヘヴィネスに超高速ブラストビート、腹の奥底から悪意/疑念/憎悪をブチ撒けるデスシャウト、当然歌詞はファックもシットもテンコ盛り、ついでに腐死体マスクとお揃いのツナギでヴィジュアル面でもキナ臭さ全開。これだけブルータルな毒気に満ちたキワモノ以外の何物でもない内容なのに、当時聴いた時に一発で撃ち抜かれたのは、やはり単純に曲作りにおいてのセンスがズバ抜けてるから。もちろん卓越した演奏陣のうねっては突進するヘヴィグルーヴもノリの良さの要因の一つですが、 「People=Shit!」 とか 「555!666!」 とか、シンガロング必至のメロディが映える 「My Plague」 「Left Behind」 など、ヘヴィネスの切れ味とともにフック作りのアイディアが冴えまくってて、どの曲も一緒に歌って叫んで暴れられる、まさに全曲キラーチューンな内容。メタルの重厚さとハードコアのフットワーク軽い突進力、双方のエッセンスをキャッチーに落とし込み、まるで身体張って挑むロデオみたいに魅せる凄絶盤。俺のメタル/ラウドロックへの入口となった一枚でもあります。




1. Radiohead 「Kid A」

Kid a

Kid a

異様なアルバムだと思う。もちろん今までのバンドサウンドをかなぐり捨て、テクノ/エレクトロニカに思うさま傾倒した音楽性もそうなんですが、何より全ての曲が凄まじいほどに冷たく、醒めたリアリティに満ちてる。退屈な反復を繰り返すばかりの毎日で緩やかに狂ってしまった、一言では片付かない矛盾した感情ばかりを抱えてしまった、そんな頭の中を一切の誇張なく、淡々と無表情に、けれども果てしなくエモーショナルに曝け出したような、そういった音。厳選された音のテクスチャーと配置、あまりにも甘美な Thom Yorke のヴォーカル、それらが瘡蓋を徐々に剥ぎ取るかのような痛みと快感を伴って迫る。歌詞がわけの分からない表現ばかりなのも、意味よりも語感の響きを重視したとかじゃなく、妄想の世界に現実逃避して何とか平静を保とうとするためのように思える。普通にロックとテクノを掛け合わせただけでこんなダークな空気が生まれるはずがない、音楽的野心とともに彼らの感情を描く表現力がピーク値に達した、あまりにも現実的で危険なアルバム。いつ聴いても心を徐々に蝕まれるような気分になる。双子作 「Amnesiac」 も当然素晴らしいのだけど、やはり個人的には絶対零度のトータリティで貫かれたコレが極北だと思います。




以上でございます。レディへは各メディアでも軒並み上位に名を連ねてるのでどうかとも思いましたが、やはりこればっかりは避けられないですね。俺にとって一番の洋楽の取っ掛かりであり、今聴いてもその説得力はまるで薄れていない。でも洋楽は2000年代後半の方が印象に残ってるのが比較的多く、それは単純に後半の方が圧倒的に聴いた量が多いからですけども、個性がますます多様化して豊かになっていってる感じがします。基本的に Pitchfork を参考にしてるので変な偏り方してるかもしれませんが、その一方でテクノやらメタルにもアンテナが伸び出して本当深く掘ってるヒマがありませんことよ。


それでは2000年代最初の10年はこれにておしまい。綺麗に箱に仕舞ったら次の10年に参りましょう。