bloodthirsty butchers 「NO ALBUM 無題」 「kocorono 完全盤」

NO ALBUM 無題

NO ALBUM 無題

フルレンスとしては約3年ぶりとなる新作。


ここ数作はしばらく遠ざかっていましたが、久々に今作で触れた限りでは相変わらずのご様子で一安心。 US エモ/オルタナティブ直系の轟音は荒々しくささくれ立った攻撃性を放ちつつ、ファジーな厚みでコーティングされたような耳馴染みの良さも兼備。20年選手ならではの安定感、どっしりしたグルーヴと程良い疾走感を纏い、朗々とした歌声がオープンに広がる。今回はアンサンブルの主張をそのままに、ヴォーカルパートのハーモニーが強化されてる印象を受けたのですが、これは最近の彼らの傾向なのでしょうかね。実験性は後退し、真っ直ぐで聴きやすい印象。といってもやたらめったらポップに開き直ってるわけではなく、従来の彼らの朴訥としたセンチメンタリズム、燻し銀のメロウ感がさらに安定した状態で聴こえる、ということ。長いキャリアの中で確立した土台はブレることなく、マイペースに曲を作り、歌う。歌詞には迷いやわだかまりを感じるフレーズも多く見られますが、その視線は常に遠く、目に映る景色は常に広い。目新しい発見やフレッシュさには欠けますが、従来のブッチャーズファンは納得の内容かと。


Rating: 7.0/10



kocorono完全盤(紙ジャケット仕様)

kocorono完全盤(紙ジャケット仕様)

上の新作と同時リリース。1曲追加+リマスターされた96年発表の作品。


リマスタリングは物理的に真っ当なグレードアップという感じでしょう。原盤のイメージからさほど変わることはなく。当時から今に至るまでほとんど軸がブレていないというのも凄いことだけど、やはりこの頃は若く、青い。視線は変わらず遠く前を見ているようなのだけど、現在のような安定ではなく 「前を見ることしか出来ない」 あるいは 「前を見ていないと心が震える」 そんな不安や焦燥のような感覚が背後に付きまとう。それ故の真摯さ、リアリティは今聴いても真に迫るものがあります。12ヶ月それぞれの月がタイトルとなった楽曲群。刺々しい轟音が唸り上がり、時にはノイズ混じりのサイケデリアが大きくうねる。冬の厳しい寒さや夏の茹だる暑さと、殺伐としたラウド感がそれぞれの季節をノスタルジックに彩り、やり場のないナイーブな感傷を力強くスケールの大きなものに変える。2月から12月で終わっていた原盤に最後の1月が追加され、1年が巡るようになった。季節が終わりから始まりに戻り、頭の中も整理されることなく行ったり来たりを繰り返す。この完結しない日常から決して逃れることはできません。極東の荒野にひっそりと聳える金字塔。


Rating: 10.0/10


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