ゆらゆら帝国 「3×3×3」 「ミーのカー」 「太陽の白い粉」 「ゆらゆら帝国III」

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皆さんすでにご存じの通り、 「この3人で、やれることは全てやり切った。」 という言葉を残し、ゆらゆら帝国は今年の3月31日に解散しました。


ゆらゆらていこくとぼく。その出会いは確かベスト盤 「1998-2004」 だったと思う。それまでにも名前だけはちょくちょく目にしてはいたけれど、あのジャケットには見た瞬間射抜かれたような感覚を覚えたものです。ベスト盤なのに何なんだよあの売る気ゼロの気色悪い妖怪は。もちろん内容からもそれ以上の強烈なインパクトを受けました。冒頭の新録 「グレープフルーツちょうだい」 から2枚目最後のカーペンターズ 「イエスタデイ・ワンス・モア」 カヴァーに至るまで、その (ルックス含めて) 瘴気満載な異形の格好良さ、シュールな居心地の悪さが孕む中毒性に階段2段越しくらいの勢いでのめり込んでいきました。


そこから今年の解散に至るまで、彼ら的にはちゃんと地に足のついた、けれども一般から見ればまるでキテレツな変化を作品毎に遂げてきた彼ら。解散から微妙に月日が経ってしまいましたが、ここでは2回に分けてゆら帝メジャーデビュー以降のアルバム作品を追っていきたいと思います。まず前半4枚。



3×3×3

3×3×3

記念すべきメジャーデビュー作。


最初の一発目の音だけで空気を変える作品、というものにたまに出くわすことがありますが、俺にとってはこの作品こそソレ。この時点でメンバー3人に加えプロデューサーの石原洋、エンジニアの中村宗一郎といった制作チームはすでに完成されており、音の方もこの時点ですでに十分なくらいの個性を発揮しています。大まかに言えばドライで硬質な鋭角ガレージと奥底の見えないサイケデリアの2本柱、その双方に共通するのが70〜80年代辺りを彷彿とさせる牧歌的なメロディ、そして坂本慎太郎の妙な色気をネットリ醸すヴォーカル。なおかつこの作品では 1st ということもあってか、ギターがやたら大きい音量で強調されてるためアグレッシブで歪な印象が強く、 「わかってほしい」 「発光体」 「つきぬけた」 といったアッパー曲の破壊力には一撃でノックアウトされる。もちろんそれ以外にも暗黒サイケの底なし沼へとズルズル手招く怪曲 「3×3×3」 「EVIL CAR」 等々、凄まじくアクの強い楽曲が勢揃い。とにかくその鳴らす一音一音がいちいち刺激的であり、全くもって一筋縄ではいかない。これこそ日本人 (の異端) にしか出来ないロックでしょう。


Rating: 9.0/10



ミーのカー

ミーのカー

1年2ヶ月ぶりとなる2作目。


歪でトガった印象が強かった前作と比べて、今回はアンサンブルの統制が取れて幾分か聴きやすくなったように思います。前半〜中盤は比較的ポップでストレートな勢いを持ったロックンロールがズラリ。ダイナミックにグイグイ加速していく 「ズックにロック」 、大きく波打つようなハードロックグルーヴが身体を揺さぶる 「人間やめときな'99」 「悪魔がぼくを」 などは文句なしの格好良さだし、変態ノイズ大放出で迫る 「午前3時のファズギター」 の直後にメロウで牧歌的な 「ボーンズ」 を繰り出してくる落差も彼らならでは。しかしこの作品のキモはむしろ終盤でしょうね。タイトル通り夜空に溶けるような深みを見せる 「星ふたつ」 、レイドバックしたグルーヴの快楽にロックバンドとしての旨味を凝縮させた 「19か20」 、そしてゆら帝史上最も長尺 (25分!) の表題曲 「ミーのカー」 が描くシュールで無気味、荒涼とした無常感を漂わせつつ、妙に惹き込まれる得体の知れない磁場を持った圧倒的な音世界。でも全体的には彼らの作品の中でも聴きやすい方ではないかなと思います。よりポップに向かう次作への橋渡しとも捉えられる。


Rating: 8.4/10



太陽の白い粉

太陽の白い粉

5ヶ月という短いインターバルで完成したミニアルバム。


ミニアルバムと言うかシングル?曲数少ないので楽曲毎に。表題曲 「太陽の白い粉」 は前作で言えば 「ボーンズ」 のような、牧歌的で優しい側面が表れたポップ曲。サビでは可愛らしい女性コーラスを導入するといった新しい試みもあり、ポップさを無理なく引き立ててる。ここで 「白い粉」 に何か意味を感じるのは読み過ぎでしょうか。 「奴は来る」 は何処かサーフで軽快なテンポと低く抑えられた歌のテンションが新鮮な、変な曲 (笑) 。この組み合わせによる味もまたクセになりそう。 「すべるバー」 は一転してライブ映えしそうなノリノリのロックンロール。ノイジーに被さるギターの格好良さときたら。 「心は半分」 は複雑骨折したまま転げ回るようなリズムとギターリフ、奇怪な凄味でがなり立てるヴォーカルが一体となって重々しく身体に圧し掛かる、一層変態度の高いプログレッシブ・ハードロック。そしてラスト 「オンリーワン」 は再び牧歌的ムードに戻りつつサイケ要素も増し、サウンドコラージュのような印象も受ける実験的な曲。総じて 「ミーのカー」 に入り切らなかったぶんを今作で補完するといった趣。順当な作風でゆら帝ファンは余裕あればどうぞという感じですね。


Rating: 7.0/10



ゆらゆら帝国 III

ゆらゆら帝国 III

1年8ヶ月ぶりとなるフルレンス3作目。


さらにポップに、さらにダイナミックに。身体へダイレクトに響く即効性の高い楽曲が揃っており、より受け入れられやすい内容になってます。騒々しく勢いのある 「でっかいクエスチョンマーク」 でガツンと始まり、彼らの王道とも言える縦ノリロックンロールのキラー曲 「ラメのパンタロン」 「ゆらゆら帝国で考え中」 がある一方で、古き良き歌謡曲を彷彿とさせるほのぼの感の 「待ち人」 や物悲しい哀愁が漂う 「砂のお城」 、ラストの 「少年は夢の中」 のサイケ感にしても、以前からバンドが持ち合わせていた要素がよりポップに向かったメロディと結実し、オープンになった印象を受けます。人によっては毒気、アクが薄まったと捉えるかもしれませんが、あくまでもゆら帝というバンドの土台自体は揺らいでない、その上でのポップネスだと個人的には思います。特に 「待ち人」 「考え中」 はバンドとしてひとつ殻を破ったような手応えがあってグッとくる。 「何時電話しても居ないって言うけど〜」 は名センテンス。居留守使う時にみんな言い訳にするべき。 1st 、 2nd を踏まえた上での本作という感じですが、馴染みやすさで言えば彼らのカタログ中これが一番ですね。


Rating: 8.0/10



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