Phew 「FIVE FINGER DISCOUNT〜万引き」

ファイヴ・フィンガー・ディスカウント(万引き)

ファイヴ・フィンガー・ディスカウント(万引き)

70年代より活動を続ける女性シンガーの、単独名義としては15年ぶりとなる新作。


内容は古き良き時代のフォーク/歌謡曲を中心としたカヴァーアルバム。まずその歌声。一切の感情移入を拒むように淡々と、無機的に、しかし子供のようなあどけなさを醸し、風に流されるように空虚さを纏って歌う。デビューの時点で確立されていたそのヴォーカルスタイルを貫きつつ、年月が経ったことによってかある種の渋味、深みのようなものが加わってるように感じました。プラスチックの透明さにノワールの濃淡が塗られたような感覚。俺は彼女の関わった作品をキッチリ追えてはいないのですが、モノリスのような個性を持つ彼女もやはり変遷を遂げてきたのかなと。そして演奏には Jim O'Rourke や石橋英子らが参加し、フォークあるいはシャンソンの枯れた哀愁と心地良い落ち着きを基調としながら、ノイズ/音響空間の挿入といった実験性もあり。呪いのような情念を感じさせる 「時には母のない子のように」 「Love Me Tender」 、柔らかなノスタルジアが馴染む 「どこかで」 「素晴らしい人生」 、パンク魂に火がついた不意打ちアッパー曲 「青年は荒野をめざす」 など、全ての曲が揺るぎない彼女の世界に引き込まれ、変貌している様はさすがの一言。万引きGメンも脱帽的な。


Rating: 7.8/10
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