Destroyer 「Kaputt」

Kaputt

Kaputt

カナダ出身、 Dan Bejar を中心とするユニットの9作目。


不勉強なもので彼の作品を聴くのはこれが初めてなんですが、インディロックの枠に囚われない予想外のサウンドに驚きました。80年代テクノポップの親しみやすいテイストがありつつ、ネオサイケデリア的シンセのミステリアスな音像が深い耽溺へと誘い、ジャズ/フュージョンのアダルトでジェントルな雰囲気も溶け合う。柔らかで耳馴染みの良い歌声と、歯切れの良いギターやシンセ、管楽器の音色が緩やかで大きなひとつの流れを生み出していく、濃厚だけど喉越し爽やかな職人的ポップサウンドです。おそらくこれが彼の音楽的素養の根本なのでしょうか、80年代への愛と憧憬を現代のインディ的センスで解釈し構築して見せた、なんとも芳醇な音。清涼感あるソウル風女性ヴォーカルも絶妙にマッチした 「Chinatown」 「Downtown」 はポップスとして実に優秀だし、ラスト 「Bay Of Pigs (Detail)」 はアンビエントな立体音響の中で音色がグラディエーションのように表情を変え、心音のような4つ打ちが少しずつ躍動感を帯びていき、トリップにも似た恍惚を与えてくれる10分超の大曲。フュージョンに苦手意識のあった俺もこれには惹き込まれました。傑作。


Rating: 8.2/10
Links: 【公式】 【MySpace】 【Wikipedia