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I'LL BE YOUR MIRROR @ 新木場STUDIO COAST

LIVE


アルケミックな一日が始まるよ!


「アーティストがキュレーターとなって、出演者を選ぶ」 というコンセプトのもと、2000年に UK でスタートしたオルタナティブ・ミュージックの祭典 「ALL TOMORROW'S PARTIES」 。その新シリーズとして始まったのが今回の 「I'LL BE YOUR MIRROR」 。俺は発表されたメンツを見て度肝を抜かれました。10年ぶりに復活の GY!BE がヘッドライナーというだけでも事件なのに、その他も国内外から若手、ベテラン問わず超個性派ばかりが集結。これを逃す手はないと即決し、今年初の東京遠征となったのでした。


夜行バスで渋谷に到着したのが朝6時。テキトーに高円寺や秋葉原を散策して時間をつぶし、ぽかぽか暖かくなってきてから新木場に到着。海が近いってことで随分と開放的な立地。これならどれだけ爆音出しても大丈夫ですねー。ちょうど恍惚と不安ふたつ我にありって感じだ。会場の STUDIO COAST はキャパ約2500のデカバコですが目出度くソールドアウト。このメンツでこれだけのハコが埋まるというのはちょっとしたエポックなのでは。この日は2ステージ制で建物外に小さなテントが設けられ、ケータリングカーも並びと野外フェス的な雰囲気。2階から外に抜けるとプールのついた DJ ブースがあって、海を眺めながら一服して少しセレブチックな気分に浸ったり。これは良いロケーションだ。少々まったりしてから一番手に備える。


BOREDOMS
いきなり重鎮ボアダムズ。見るのは2007年のフジロック以来 (その時は V∞REDOMS でしたが) 。やはりステージ上は始まる前から一種異様な雰囲気が流れていました。円を描いて設置された6台のドラムセット。暗転しメンバーが入場すると、ヨシミや Zach Hill など6人のドラマーがスタンバイし、 EYE はその円の中央に立つ。上部のスクリーンにはステージを真上から映した映像。また EYE 周辺にはどうやらセンサーが仕込まれているらしく、 EYE が右手、左手を掲げるとシンセ音やノイズ、環境音が立ち昇るといった仕組み。


さすがドラムが6人もいるとリズムの強度が圧倒的。全員が一心不乱にトライバルなビートを激しく叩き出し、シンバルが音の波を生み出し、時には時計回りにロールリレーを展開する。人間の奥底に宿る快楽中枢をダイレクトに刺激する原始的な躍動感。規則と不規則も混ぜこぜのグルーヴで、質量が収斂してビッグバンを起こすかのようにダイナミックな押しと引きを繰り返す。 EYE とヨシミは言葉にならない叫びを繰り返し、もはや音楽と言うより神々しい謝肉祭の儀式といった演奏。両手をぶんぶん振り回し、しまいにその場で両手挙げて奇声を発しながら回転する EYE は指揮者通り越して祈祷師。太陽が立ち昇り、星が瞬くようなフラッシュライトと、虹色に光るバスドラの鮮やかさも強烈なインパクト。何処までも熱が膨張して、爆発した時には会場の屋根もすっ飛ぶんじゃないかと言うくらい、確実にこのバンドにしか出せない途方もないパワーが満ち溢れていました。ラスト、 EYE がドラムセットからのジャンプをキメた瞬間は本当に目の覚めるような鮮烈さだった。


アヴァンギャルドな音楽性とパフォーマーとしての視覚面への拘り、何より表現しようとするものに対しての一点の曇りもないブレなさ。ボアダムズが現在でも唯一無二の個性として変わらず存在感を発揮する、素晴らしいアクトでした。1発目からすでに腹いっぱいだけど大丈夫なのか。


KEIJI HAINO
大丈夫だった。キャパ300〜400程度のサブステージに移動するとそこには6台積みのアンプと椅子。昼間にはまるで似合わないロック仙人灰野敬二であります。ゆらりと現れた御大は白髪のロングヘアーにサングラス、真っ黒な装いというあの出で立ち。俺は不失者の作品をちょこちょこと聴いたことがある程度でしたが、彼の異端っぷりについては理解してるつもりでした。が。それにしても。


俺も今までそれなりに色んなライブを見てきましたけども、ライブでここまで 「恐怖」 を覚えたのはこれが初めてです。ギブソン SG を構えたら一太刀、場の空気を瞬時に切り裂く爆裂ノイズ。完全に常軌を逸してるとしか思えない殺人的な爆音が場の空気をビリビリと揺らす。一切表情を変えることなく、しかし時には長い髪を振り乱してふわりと腕を上げる、その姿は時に妖艶な狂おしさが感じられ、決して手の届かない深遠を見た気分になりました。 「ノイズ」 は過剰な情報、感情の集積の末にできた音楽である、と。それを雄弁に伝える激情の奔流。


容赦のない轟音が約20分続いたあと、御大はギターを三味線に変え、まるで浪曲のようなパートに突入。浪曲といってももちろん灰野流であり、アンプを通じた三味線の音は異様な鋭さに研ぎ澄まされ、フィーリング重視で弦をバシバシ叩き、御大の地の底から響くような絶唱が入る。ノイズに限らず様々な民族楽器の可能性を探求してる彼ですが、今回のコレもその一環なのでしょう。ノイズとはまた違った側面から彼の業火のような感情を表現する、やはり苛烈な一幕。


それが終わると今度は台に置かれたエフェクターを駆使して爆音ノイズに再突入。ギターのソリッドなアタック感とは違い、何処かテクノ的なコズミックな感覚があったように思うんですが誤差の範囲ですかね。どちらにせよ鼓膜を潰す勢いの轟音っぷりは変わらず、永遠とも思えるノイズの濁流は次第に穏やかなクリーントーンに変わり、緩やかに幕を閉じたのでした。


最後の去り際に、客の声援に応えて腕を高く上げる御大は少しチャーミングだった。


AUTOLUX
てっきり次のファックボタンズが始まる時間だと思ったら、まさかの1時間押し。うわーイベント初回だからなのかこの手際の悪さ。少々不安を覚えつつ、このロサンゼルスのスリーピース。


オルタナティブロックとエレクトロニクスを掛け合わせ、冷たくミステリアス、しかしその内にはポップさと熱を感じさせるサウンド。様々なエフェクトを用いたり凝った音作りをしていましたが、トータルの印象はスタイリッシュで洗練された印象。うむー、今回のラインナップの中では良くも悪くも、最もオーソドックスだと思った。淡々と進行して淡々と終わってしまい、こじんまりした出音もあってインパクトに欠けるなーと思いました。さすがにボアや灰野氏と比べるのは酷ですけども。


FUCK BUTTONS
元々ファックボタンズ見た後にサブステージの MELT-BANANA を見る算段でいたのに、メインステージの大幅な遅延のためどちらか一方を捨てることを余儀なくされる。今回のイベントの最大の痛手だよ…転換20〜30分のタイムテーブルは少々無理があったか。散々迷った末、メインに居座ることに。イギリスのテクノ新鋭2人組。2009年の 「Tarot Sport」 が大変気持ちの良い傑作であったので、この日のアクトも楽しみにしておりました。


マニピュレート類の機材を台に置き、メンバー互いが向かい合う形で左右にスタンバイ。幕開けはアルバムと同じ 「Surf Solar」 。タイトル通り、雲を突き抜けて地平を照らす太陽のような、暖かな浮遊感と分厚いノイズの力強さが混在。4つ打ちビートでさらに加速度をつけたら何処までも膨張する、ノイズミュージックの可能性をさらに拡張するピースフルなサウンドスケープ。その後も一切音は途切れることなく、時にはフロアタムを激しく打ち鳴らして躍動感を添え、アッパーなノイズ/ダンスの空中遊泳を続けていく。


しかしライブアクトとしては少々弱かった気もします。やはり映像などの視覚的な趣向が何もなく、俯き加減でツマミを弄りながら身体を揺らしてるだけというのはいささか寂しいものが。音も CD 音源を大音量で聴いてるだけと言えばそうかもだし、曲は素晴らしいんだけどライブに少々期待しすぎた感も。今回のイベント出演者に対する自分の期待値は少々上がり過ぎてるかもなあ、とか思いました。もちろん何も考えずに聴けば非常に気持ち良いのですけども。


GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR
入場規制中のメルトバナナの爆音が漏れるのを聴きながら (このバンドもまた殺人的だ!) 、さすがに疲れが溜まってきたので外で休憩してラストに備える。本日のヘッドライナー、いつの間にか活動休止していつの間にか再開していたカナダ出身ポストロック・オリジネイターのひとつ、 GY!BE 。彼らの作品は一通り聴いてきましたが、ライブは初めて。念願の対面であります。


この日はギター3人、ベース2人、ドラム2人、ヴァイオリンの8人編成。少しずつ音が立ち昇り、穏やかなアルペジオと不穏なノイズ、息の詰まるような緊張感が会場の空気を掌握していく。静寂はやがて轟音にすり替わり、全てを無に帰す嵐のような厳しさ、凄まじさを持って鳴らされる。この日は過去のカタログからバランス良く演奏されていたと思いますが、全ての曲が20分程度に渡り、再び降ろされたスクリーンに映る兵器の設計図/モノクロの日差し/歪む聖書/燃え盛る炎、それらとともに感情の波をなだらかな起伏で描く。時にはトライバルな側面を見せるリズムの躍動と、強く圧し掛かるノイズ/轟音のテクスチャー。


数あるポストロックの中でも彼らは特にミニマリズムを重視しており、レイヤーを重ねる時の慎重で繊細なタッチ、音が開放に向かうまでのストイシズムとカタルシスは特に強い。例えば MogwaiSigur Ros が近年の作品ではポップ路線に寄ったり、以前とは別の側面を模索してる向きがありますが、彼らのスタイルは常に一貫しています。厳格でへヴィ、直向きな姿勢と、そこから生れ出る祈りのような崇高さ。聴き手にも厳しく内省を迫るプロテストとしての音楽。120分の長丁場は映画を見る以上の集中力を要し、肉体的、精神的にも疲労するものでしたが、やはり発する音はさすがの求心力を放っていました。世界の果てに佇むような、荒涼とした風景、非情な険しさ。


しかしながら、最初にスクリーンに映された文字は 「HOPE」 だった。



この日は 「ノイズ」 がキーワードだったと思う。自らの表現したい感情が強くなればなるほど音の強さ、大きさは増し、そのエクストリームな形としてノイズがある。この日出演していたバンドの多くはノイズを表現手段のひとつとして取り入れ、自らのフィルターを通して吐き出していました。ドローンとして、ハードコアとして、テクノとして、そのままの形として。それは一般的に見ればもちろんキワモノのジャンルではありますが、同時にピュアな本質に一番近いものかもしれません。真の意味でオルタナティブな道を行く孤高たちの宴。日本でのシリーズ化を切に願います。