Wye Oak 「Civilian」

Civilian

Civilian

バルチモア出身の男女デュオによる3作目。


境目のない世界。ここには冬枯れの渋味を感じさせるフォークポップがあり、未知なる奥地へと手招くエレクトロニカ/音響があり、羊水に身を浮かべる心地良さのシューゲイザーがあり、強く吹き荒ぶ嵐のようなオルタナティブロックがあります。パーカッシブなリズムの強度に耳を向けるとスロウコア/サッドコアになるかもしれん。2人編成とは思えないくらい多彩な音の群れが散りばめられ、上記のようなジャンルとジャンルの間を自在に横断していく。こちらの安易な予測をさらりとかわしていくけれど、ミステリアスで落ち着いたムードは常に一貫しているためか、雑多であったりとっ散らかった印象はあまりなく、全てがグラデーションのように、ナチュラルに、流麗に流れる。人々のざわめきに背を向けて逃避するかのような 「Two Small Deaths」 、殺伐とした荒々しさと優しいポップネスが大胆に混ざり合う 「Holy Holy」 、ノイジーな轟音が醸す無常感に痺れさせられる表題曲 「Civilian」 など10曲。優しさも厳しさも冷たさも暖かさも、全てが風に流されて消えていく、そんな深い悲しみ/寂寥を湛えたインディロックの荒野。


Rating: 7.6/10
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