砂原良徳 「liminal」
- アーティスト: 砂原良徳
- 出版社/メーカー: KRE
- 発売日: 2011/04/06
- メディア: CD
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ディストピアに鳴る音。前作 「LOVEBEAT」 はイージーリスニング的で柔らかな質感がありましたが、今作は非常に硬質でストイック、場面によってはアグレッシブと言えるかもしれません。余計な波長は全てカットされ、異様なまでに研ぎ澄まされた音の粒子。何処となく80年代風のチープな可愛らしさを残した音のチョイスにはまりんらしさが垣間見られますが、その可愛らしさも純度高く研磨された末に無表情の圧力と化す。全ての音に彼の神経が行き届いており、聴き手の感覚までも強く覚醒させるほどの明確な輪郭、強度を持っています。歪なファンクネスを宿したビートの飛礫が突き刺さる 「Physical Music」 「Boiling Point」 、現代版 Steve Reich かと思った 「Beat It」 、美しさと恐怖の境目を潜るような表題曲 「liminal」 など8曲39分。ランニングタイムのコンパクトさに驚くくらい、その密度は圧倒的に濃いです。 Autechre や Aphex Twin などとの共通項も多くありますが、もしかするもそれら先人以上の覚醒作用があるかもしれない。フロアの熱狂を目指す石野卓球とは対照的に、聴き手に強く内省を促すエレクトロ・ミュージックの深淵。