タコ 「タコ」 「セカンド(ライヴ)」

タコ

タコ

1983年リリース、山崎春美を中心とするユニットのデビュー作のリイシュー盤。


またパンドラの箱が開く。今作に関わるメンツは相当数が多く流動的で、曲によって作曲者、演奏者も全く違う。その中には町田町蔵遠藤ミチロウ上野耕路香山リカ坂本龍一の名前もあり。よって曲の方向性もエレポップ、パンク、フォーク、祭囃子、ノイズとてんでバラバラ。山崎春美という存在を軸とした完全フリーフォームな音の実験場という感じで、先の読めなさで言えばこれほど極端な作品もそうそうない。しかしそれらを繋ぎ止める一本の共通項があるとすれば、80年代という時代だからこそ生まれ出たであろう、アンダーグラウンドが正しくアンダーグラウンドであった黴臭く湿っぽいドロドロの瘴気。清純アイドルのような女性ヴォーカルがシュールなドラッグ禍に堕ちる 「仏の顔は今日も三度までだった」 、念仏とも呻き声ともつかない町蔵ヴォーカルの壮絶ジャンク曲 「きらら」 、何故か極右賛美となったアレへのアンサーソング 「な・い・し・ょのエンペラーマジック」 、アヴァンギャルドの悪意がピーク値に達する 「人質ファンク」 など、ひたすらに聴き手の脳を犯し続ける国産ニューウェーブの極北のひとつ。


Rating: 6.4/10



セカンド(ライヴ)

セカンド(ライヴ)

1984年リリース、法政大学でのライブを収録した2作目にしてラスト作。


1本のライブを収めたということで、メンバーが固まってるという意味ではこちらの方がバンドらしい、方向性の定まった内容だと思います。とはいっても所謂ライブ的な盛り上がりとはまるで無縁。というか客の声がまるで聴こえないんですが、おそらく呆気に取られているか寒気を感じているかでしょう。フリーキー通り越して全く不可解なギター、シンセ、パーカッション、ノイズがコラージュ的に混濁し、ひたすらに不安感を煽り続けるアヴァンギャルド一直線の演奏が続く中、山崎春美は 「草葉の陰から 一生 呪い続けてやる」 などの呪詛をひたすら連呼したり、ヤク中同然のヒステリックな悲鳴を上げたり。例えば非常階段のようなパワフルさとはまた別の質感の、陰湿で狂気じみたノイズサウンドには思わず背筋が凍りつきます。こんなもん実験性なんて小奇麗な言葉では片づけられない、ひたすらオルタナティブであろうとする衝動が思い切り道を踏み外してしまった過ちか。ジャケットだって悪意以外の何物でもないし、下手すれば Throbbing Gristle 以上の濃度で毒を撒き散らすサウンドテロリズム。素であろうが狙いであろうが社会生活不適合者であることは確定未来。


Rating: 6.0/10