女王蜂 単独三ヶ所公演 「魔女逆襲」 @ 梅田AKASO


それはそれは、綺麗な華でした。


2009年、神戸にて結成された4人組、女王蜂。メンバーはまだ10代とのことですが、フジロックROOKIE A GO-GO に出演したり、雑誌/ウェブなど各メディアでも大きく取り上げられたりと急成長を見せている若手のホープであります。今回は彼らにとって初の正式音源 「魔女狩り」 リリースツアー。東名阪ワンマンの大阪編、段階すっ飛ばしていきなりの AKASO です。


個人的に彼らを見るのはこれが5回目。昨年神聖かまってちゃんとの対バンでたまたまその存在を知り、そのインパクトに一撃で撃ち抜かれてからというもの、常に彼らの活動をチェックしてきました。いくら話題になってるからといっても AKASO のキャパが埋まるかなあ…と危惧しておったのですが、実際には5〜6割くらいの客入り。絵的にはそこまで寂しくはなかったと思う。むしろ新人の初ワンマンでこれだけ埋まれば十分じゃないかなという気も。あまり関係者らしき人は見かけず、耳聡い若者ファンが多かった印象。比較的女子が多かったかな。


定刻になると SE 「夢見るシャンソン人形」 がかかり、メンバー登場。大きく胸元のあいたセクシーな出で立ちのルリちゃん、髪がショッキングピンク&ウェーブになってますます魔女度アップのやしちゃん、今日日のヴィジュアル系でも躊躇うような金髪+エナメル帽でキメたギギちゃん、そしてブルーの髪をライオンのように逆立てたアヴちゃん。顔中にラメを施し、サディスティックかつグラマラスにめかし込んだ美のテロリストが4人。特にアヴちゃんはドスの効いた地声と裏声を使い分け、引き攣ったような挙動でステージを目いっぱい使い、客を魅了する。この視覚的なインパクトは何度見ても衝撃。だって今まで5回見てるけど、同じ衣装、同じステージングだったことなんて一度たりともないからね。この生き急ぐかのような出し惜しみのなさ、サービス精神の旺盛さは今の彼らが大きな勢いに乗っている証拠とも言える。


もちろん視覚的だけではなく、演奏の面も充実。ガリガリと太く突き刺さる爆音オルタナサウンドは若手らしいラフな勢いに満ちており、複雑なキメも表情一つ変えずにこなす安定感もある。ライブ定番曲 「デスコ」 では一点突破的な破壊力で突っ切り、 「告げ口」 では鬼気迫るほどの怨念を腹の底から発する。また 「待つ女」 ではテンポを大きく減速/加速させたり、 「90年代」 「80年代」 をほぼメドレー形式で繋げたりといったライブ向けの試みもあり。あとルリちゃんがコーラスを多く執ってたのが意外だったな。彼女も可愛らしい声やシャウトを使い分け、アンサンブルの勢いにさらに加速度をつけていました。


それでですね。これだけのギミックがあれば当然色モノとして見られる危険性だってあるわけですが、彼らはそんな枠では収まらない。ただの色モノは派手な衣装が単なるこけおどしで終わるけども、彼らの場合は派手に着飾ることで、より彼らが表現しようとする感情の本質に迫ることができるから。愛憎、欲望、アイデンティティといったテーマをドラマチックに、真摯に伝えるためには、すっぴんよりもこのスタイルの方が効果的だということ。もちろん他よりも目立つからという意図もあるでしょうが、それ以上に彼らのメイクは様々な思惑が混濁し、倒錯した感情をパレット上に表現したかのようであり、美しさと同時に生々しさがある。今の彼らにとってはこの生々しい美しさが創作を続ける上で必須のファクターなのだと思います。


そして今回はお客さんの質が良かった。比較的新しめのファンはもちろん、彼らが地元の神戸で活動していた頃から追いかけていたファンも多く集っていたようで、皆がノリノリで溌剌としていたと思う。歓声や拍手もなんだか暖かい。アヴちゃんは 「ありがとう」 と感謝の言葉を繰り返し、他のメンバーも基本的に無表情ながら時折笑顔が垣間見えた。ふてぶてしい不敵さもあるけど、この日はメンバーもオーディエンスと一緒に演奏を楽しんでたんじゃないかなと素朴に思います。アンコール終了後も拍手が鳴り止まず、再度アヴちゃんがステージに現れて感謝の言葉を述べるといった一幕もあり。


動員数はともかく、彼らのライブアクトとしてのパワーはもはや AKASO でも小さいくらいだなと感じました。このままの勢いで行けるところまで行ってほしい。俺も追いかけます。


あやふやなセットリスト↓
1. バブル
2. 火の鳥
3. 待つ女
4. 砂姫様
5. 鬼百合
6. デスコ
7. 口裂け女
8. (新曲)
9. フランス人形の呪い
10. 告げ口
11. 90年代
12. 80年代
13. 燃える海
(アンコール)
14. 泡姫
15. 人魚姫
16. コスモ
17. 棘の海