坂本慎太郎 「幻とのつきあい方」

幻とのつきあい方(初回限定盤)

幻とのつきあい方(初回限定盤)

ゆらゆら帝国のヴォーカリストによる初のソロ作。


空洞から芳醇へ。ゆら帝 「空洞です」 で見せたサウンドアプローチ、それは所謂ロックバンド的なダイナミズムを極力排除し、クラウトロックの恍惚あるいは AOR /ソフトロックのアンニュイな甘美さを取り入れるといったものでしたが、今回はそういった路線をさらに推し進めた腰砕けスウィートナンバーが勢揃い。小気味良いファンキーなリズム、品のある華やかさを添える管楽器隊と女性コーラス、全体に仄かに漂うサイケデリックな微睡み、そして肩の力を抜きつつ朗々と歌う坂本氏のセクシーな歌声。バンド時代はいかにその異形の個性を発揮するかという革新性に重きが置かれていたと思うのですが、ここでの坂本氏は単純に今の自分の趣味を反映した、彼なりのポップスとしての普遍性を目指してるような印象を受けます。もちろん彼がやってるからには全くクセのないものには成り得ないんですが、アーバンで洒脱、なおかつ艶めかしさを感じさせる楽曲群はまるで水のように身体に浸透し、肩肘張らずにゆっくりドップリ浸れ、それと同時に何処か背筋を這うような快感がある。あっさりしてるのに喉越しゴッテリなこの奇妙な味はさすがの中毒性。


Rating: 8.0/10
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