見放題2013


アメリカ村のライブハウス14ヶ所で同時開催されるこのショウケースイベント、何気にここ数年毎回通ってます。内容的にはほとんど MINAMI WHEEL と同じなわけですが、若手バンドの青田買いには絶好の機会ということでね。以下8バンド。


alcott @ Pangea
神戸出身の4人組。素顔を見せないプロフィールだったり、オサレなバンド名のイメージからテクノ/エレクトロニカ系かなと勝手に想像してましたがテクノのテの字もありませんでした。クールさよりも熱量が勝る、普通にギターロックでしたね。何かとヒネりたがるクセはありましたが、2ビートで荒々しく疾走したりメロディに結構広がりがあったりで、悪くはなかったです。どういう路線で行きたいのか、彼らならではの個性はと訊かれると返答に困る感じではありましたが。


BLUE ENCOUNT @ FANJ twice
こちらの4人組は Jimmy Eat World なんかを彷彿とさせる直球 US エモパンクポップ。英語詞と日本語詞を流暢に使い分けながら、スカッと爽やかなサウンドでかっ飛ばす。サマソニ出演が決定しているそうですが、野外の方が間違いなく映えると思う。勢いと同時に安定感をすでに獲得していて、頼もしさすら感じるライブでした。熱い思いを語る MC も若さ故の力強さが迸ってて、ああ正しく青春的で良いなあって。


うみのて @ SUN HALL
東京の5人組。微妙に憂いを感じさせるオルタナティブサウンドの中、のび太のようなルックスのヴォーカル笹口騒音はほとんどがなり声で言葉を叫び散らす。その言葉の端々を僅かながら捉えられましたが、 「生きるってことは自由ってことさ お前らなんか不自由だ」 「ビルの屋上から 言葉が人を突き落としたよ」 。怒りや鬱屈をぶつけるその叫びは初期衝動の塊でありつつ、シリアスなセンチメンタリズムを孕み、何処かリリカルで文学的な匂いも感じられました。それはひょっとしたらある意味で NUMBER GIRL の持っていたエモーションを継承してるのかもしれないし、60〜70年代フォークのもつ親しみやすさと険しさから影響を受けてるのかも、しかしながら彼らには彼らの持つ強烈な個性がすでに備わっており、今日のライブでその片鱗を感じ取ることが出来ました。妙にふてぶてしく何処まで本気なのか食えないキャラもアクの強さを助長してる気が。これはちょっと衝撃でしたね。


ゲスの極み乙女。 @ SUN HALL
2012年結成の4人組。今日見たライブの中では最も動員数が多く、会場はパンパン。甲高い声で言葉数を詰め込むヴォーカルと、ジャジーなピアノをフィーチャーした演奏が特徴的。軽快にスウィングしながら1曲の中で自在にテンポが変わり、テクニカルな展開で惹き込む…という感じ。まーやはり小手先とヒネたユーモアが鼻につくところはありますが、バンド名の時点でそういう雰囲気出てるしある程度覚悟はしてたのでまあ良かったです。


科楽特奏隊 @ SUN HALL
こちらはオワリカラなどのメンバーがやってる別働隊とのことですが…バンド名から窺えるように円谷特撮ソングのカヴァーのみを演奏するという企画モノ。幼少期に大切なことはだいたいウルトラマンを見て学んだ自分にとってはまさに俺得。どの曲もハイテンポなロック調と化しているわけですが、かつて 「ROCK THE ULTRAMAN」 というコンピもあったように、ロックとの相性は意外に良いのですよね。特にレオのテーマは60年代 GS みたいになっててバッチリ決まってる。また 「吉村秀樹がM78星雲に帰ってしまった」 ということで、そのコンピに参加してた bloodthirsty butchersウルトラマンの歌」 カヴァーのカヴァーも。ブッチャーズよろしく一気に音が分厚くなってグッときた。さらには見放題特別編ということでゴジラレッドバロン、さらには仮面ライダーV3まで。もはや円谷じゃないという (笑) 。終盤にはウルトラマンもステージに上がってくれたし、総じていい大人の本気の遊びって感じで終わった後にはほのぼのとしたのでした。


東京真空地帯 @ HOKAGE
ステージに所狭しと詰められた多数のエフェクターとシンセ類に目を奪われましたが、登場したメンバーが真っ黄色のフルフェイスやら真っ赤のダースベイダーやらでさらに度肝を抜かれました。そんな色モノ臭全開の5人組が繰り出すのは、スペーシーな轟音で空間を塗り潰す人力トランス。ちょうど ROVO 直系と言える音楽性ですが、 ROVO が宇宙的なスケールで力強い開放感を放っていたのに対し、このバンドは地下の方へと潜っていくようなカオスを轟々と生み出してるような気がする。変な動きをたくさんしながら変な音をたくさんブッ放す30分ノンストップの1本勝負。踊る阿呆に見る阿呆。今回のイベントには珍しい突然変異タイプで非常に刺激的でした。何故か最後は瓦割りでシメ。


壊れかけのテープレコーダーズ @ HOKAGE
2007年結成の男女4人組。フォークやブルース、70年代ハードロックなどを基調にした牧歌的ロックンロール。オルガンを使ってノスタルジックな哀愁を醸し出し、激しいギターがやりきれない感情を爆発させる。垢抜けない音楽性ながら熱心なファンは多いようで、激しいナンバーではダイブも連発、ヴォーカルのマイクを口に咥えたままフロアに突っ込むなど、狭いフロアは相当な熱狂に包まれていました。メンバーの憎めない人柄が鳴らす音にも滲み出てた感じですね。


DENIMS @ HOKAGE
個人的には一番の目玉としていました。元 AWAYOKUBA の3人が新たに結成したバンド。全員お揃いの青シャツで登場し、鳴らすサウンドは前バンドの頃と地続きのものでした。ほとんど同じ人がやってるんだから当然と言えば当然ですが、若干ファンク/ラテン色が抜けて真っ当にロックバンドっぽくなったかな、という。ロックといっても今風ではなく60年代ツイスト&シャウトなフレイヴァーで、決して安易に流行には染まらない彼らの姿勢は貫かれており、新しい一面が見られたのが嬉しかった。細やかなリズムの躍動感やメロウなギターワークはやはり彼らならではの武器ですね。親しみやすくもホットな熱があって、フロア全員を巻き込んでいく鉄板のライブパフォーマンス。まだ未完成の新曲が本当に未完成だったのはご愛嬌で (笑) 。アンコールでは AWAYOKUBA 時代の曲を披露。慣れ親しんでるだけあってアンコールが一番盛り上がっていたのは少しばかり思う所もありますが、新曲にも十分ポテンシャルは感じられたし、メンバーはやる気バリバリなのでそのうち元 AWAYOKUBA の形容が不要になるくらい成長してくれることでしょう。


以上で終了。思った以上にめっけもんが多くて楽しく過ごせました。ベストアクトは悩むところだけど、初見の衝撃が強かったのでうみのてかなー。