アルカラ 「むにむにの樹」

むにむにの樹

むにむにの樹

神戸出身の4人組による、1年ぶり6作目。


自称 「ロック界の奇行師」 ということで、意表を突く不協和音だったりブレイクだったりが随所に仕掛けられたサウンドに、童話から着想を得たと思われるフィクション・ストーリーの詞世界が特徴的。ただそれが 「聴き手を煙に巻く」 とか 「アヴァンギャルドな実験性」 といった印象にはさほどならず、むしろ曲の作り自体は至ってストレートなものなのですね。そこはかとなく昭和歌謡風のヨレたメロディ感覚はメタル成分の抜けた 9mm Parabellum Bullet というか、野暮ったくなった初期バロックというか…。やたらキレが良くこなれた感のあるアンサンブルは柔と剛を兼ね備えており、おそらく普通に真っ当なポップロックを演ってもクオリティの高いものが出来るはず、しかしメンバーの斜に構えたい性分がそれを許さなかった、ということでしょう。こういうギミック塗れだけど結局スタンダードから逸脱できないロキノンサウンドって若手によくありがち (彼らはさほど若くもないけど) で、個人的には苦手とするタイプなんですけど、この作品は基礎体力の強さとツボを押さえたキャッチーさのおかげで飽きずに聴き通せました。何だかんだでストレートな部分が一番良いという。

Rating: 7.0/10